CompTIA マーケティング/チャネル ディレクター
2020.08.03
前回のコラムでは「認定資格って必要?」という点について、お話をしました。
認定資格は、人材育成を実施する上での一つの選択肢ですが、「スキルの証明」「スキルの平準化」「経験値の早期獲得」といったメリットをご紹介しました。
これをご覧いただき「お! IT資格いいじゃないか。よし! 部署のみんな取ろう!」と思っていただいた方がいらっしゃったら…うれしい限りではありますが、その前に、今回のコラムでは、「企業で」IT認定資格を推奨、導入いただく上でのポイントについてご案内いたします。
さて、企業で、または部門で、どの認定資格を取ろうか…と検討をされる際に、どのように認定資格をピックアップされていますか。
なんとなく聞いたことがある資格だから? 他の会社で取得したという話を聞いたから?他より受験料が安かったから?
いろいろな理由があり、どれも間違えではないかもしれません。でももしかしたら、このような理由で資格を取ってしまうと「せっかく資格取ったけど役に立たなかったね…」と思ってしまうかもしれません。
企業で資格を推奨、導入される際に、まずご検討をいただきたいのが「企業での事業のゴール」です。3年後、5年後にどのようなビジネス展開をしていくのか、その上で、どのような人材、人物像が必要かを検討していくことが第一ステップです。
その上で、この人物像に近い人材を育成する、もしくは採用するという方法を検討していきます。これが第二ステップです。この第二ステップでの選択肢の一つが認定資格の取得となります。
当たり前じゃないか…と思われる方も多くいらっしゃると思いますが、意外に、第一ステップを十分に検討せず、事業のゴールと取得するIT認定資格がリンクしていないケースが多く見られます。そして、資格を取ったけど役に立たなかったね…と思われるばかりでなく、資格を取得された方が正当な評価を受けられないというケースも見られます。
そのため、まずはこの第一ステップを丁寧に、時間をかけて実施していただきたいと思います。
その上で、第二ステップに移ります。認定資格は、第二ステップでの選択肢の一つと書きましたが、他にはどんな方法があるでしょうか。トレーニング? 社内認定資格? OJT? 自然とスキルが身につくのを待つ…?
もちろん、どれもよいところがあるかもしれませんが、正直あまりお勧めできません。
トレーニングだけというのは、本当に必要なスキルを身につけられたか確認をする方法がありません。実際に、CompTIAが実施した調査でも、85%のITプロフェッショナルが、トレーニング後に試験を実施することは重要であると回答をしています。※ トレーニングを受講することが重要なのではなく、これによりどのくらいのスキルを身につけることができたか、確認することが重要だと考えられていることがわかります。
<トレーニング後に試験を実施することに対するITプロの意見:日本>
社内認定資格は…結構、労力とコストがかかります。
CompTIA認定資格を例にとると、1つの認定資格試験を開発するにあたり、スキルセットの調査や問題作成などすべてのプロセスを通して、1年近くの年月と多くの人材が必要となります。CompTIAでは、認定資格試験ごとに2年前後で試験の改訂をするため、1つの試験がリリースされてからは、すぐに次の試験の調査プロセスがスタートするようなイメージになります。なぜなら、IT分野は常に変化しているため、必要なスキルセットや問われている問題の内容を常に新しい状態で保つことが必要とされるためです。
社内認定資格では、専門でない部門がこれらのプロセスを一貫して行うことになり、また、自社で必要とされるスキルのみを問うような問題が作成される可能性が高いため汎用性に欠ける試験問題が開発されることが多く見られます。そして、試験の更新頻度を維持するためには相当な労力が必要とされるため、内容が陳腐化してしまうことがあります。
OJTや自然にスキルが身につくのを待つというのは、有効かもしれませんが、時間といろいろな業務を体験できる環境が必要となります。
そのため、第一ステップが終了した段階で、求めているスキルセットを評価できる認定資格はないか…前回のコラムでご案内した認定資格ごとの「出題範囲」を確認することをお勧めします。認定資格を「名前から」ではなく「内容から」逆引きすることにより、自社で求められているスキルセットを評価できる認定資格を活用することができます。
そして、その認定資格を取得するためのトレーニングを受講する。トレーニングと認定資格がセットになったとき、第二ステップがスムーズに実施できるはずです。
その上で、第三ステップは、そのスキルを発揮できる環境を提供することです。
認定資格の取得は、ゴールではなく一つのマイルストーンです。トレーニングを受講し、認定資格を取得したら、元々描いていた「企業での事業のゴール」を達成するために、そのスキルを発揮できる環境/場に人材を当てはめていくことが重要です。
企業における人材育成のキーは、あくまでも企業にとって必要とされる人材を育成できるかです。そのために、必要とされる人材のスキルセットを明確にし、その上で認定資格を逆引きし、効率的に人材育成を実施されることをお勧めします。
※ Evaluating IT Workforce Needs ITワークフォースのニーズを評価する(CompTIA米国本部実施調査 2017年9月)
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