CompTIA マーケティング/チャネル ディレクター
2020.12.07
さて、ここまで5回のコラムで、企業で人材育成、特にIT人材を育成する上での考え方やROIなどのお話をしてきました。
今回のコラムでは、IT人材を育成する上で変わらないものについてお話をしたいと思います。
今までのコラムの中でも、IT分野は変化が早いといったことを何度かお話してきました。
これは、みなさんが生活の中で、お仕事の中で感じられていることかと思います。そして、この変化に伴い、IT業務は変化への対応力と柔軟性が求められています。
……と聞くと、なんとなく、そうか! 新しいものだけを追い求め、変化している部分のスキルを身につければ対応できるな……と思いがちです。実際に、新しいテクノロジーに対応できるエンジニアは、市場価値も高いかもしれません。
ただ……想像に難くないと思いますが、ずっと新しいものだけを求めることは結構大変です。なぜなら……何度も言いますが、変化が早いからです。そして、常にトップランナーが変化するITの世界では、1つを追い求めている間に、他の手法や製品がトップになってしまっていることはよくあることです。
では、どのように人材育成を考えるのか。CompTIAがオススメしているのは、「変わるもの」と「変わらないもの」を分けて考える。そして、「変わらないもの」のスキルを確固たるものにするということです。
そして、現在、多くの企業が取り組んでいるのが、「変わらないもの=必須とされる基本」と考え、もう一度、これらのスキル固めをするということです。
かの有名な画家パブロ・ピカソの言葉に「基本を制する者が世界を制する」というものがあります。不思議な絵画ばかりに目が行ってしまいがちなピカソの絵画ですが、初期の作品は、圧倒的と言われるようなデッサン力があるそうです。
ITスキルも同様で、まず基本を固め、その上に応用力を重ねることで、より一層よいパフォーマンスが生まれます。
CompTIAが提供している認定資格は、正に基本を固めた認定資格です。
これは、開発方法に起因しています。CompTIAでは、〇年目の〇〇エンジニアに求められる「必須スキル」は何かという観点で認定資格が開発されます。
例えば、CompTIA Network+という認定資格では、キャリア1年程度のネットワークエンジニアの「必須スキル」は何かということが、IT業界のエキスパート、ワールドワイドでのウェブ調査などを通して策定されます。その上で、認定資格試験が開発されるため、この取得のために学習を進めることで、ネットワーク業務での必須とされるスキルを身につけることができます。
CompTIAを活用されている多くの企業では、このように開発されたCompTIA認定資格を通して基本スキルを習得し、ベンダー固有のトレーニングや資格を活用しているケースが多く見られます。
基本を固めるメリットがもう一つあります。基本を固めることで、いち早く変化に対応することを可能とします。トップランナーが変わっても、基本的なことは変わりません。
例えば、ネットワーク機器が新しくなったとしても、どのように通信が行われているか、ネットワーク機器に接続する方法などは変わらないことが多いと思います。通信の方法やネットワーク機器で使われるケーブル、プロトコルといったような内容を理解しておくことで、容易に新しい機器を使いこなせるようになるかと思います。
新しいものが出てきたから、新しいトレンドが出てきたからと言って、すべてゼロスタートにするのではなく、基本を固めておくことで、「5」くらいからスタートすることができるのです。
そして、企業での人材育成を検討する上で、CompTIAが定義している「4つの柱」があります。これは、将来的にどのようなITトレンドに移行しても、押さえておくべきスキルの基本的な柱です。※
その4つの柱は、「インフラストラクチャ」「開発」「セキュリティ」「データ」です。
Infrastructure (インフラストラクチャ) |
ITの基盤を構成するハードウェアとソフトウェアが分類されます。 |
Development (開発) |
ソフトウェアのエンジニアリング活動であり、企業がパッケージソフトウェアからカスタムアプリケーションに移行していることから、ますます重要となっています。 |
Security (セキュリティ) |
当初はインフラストラクチャの一部でしたが、デジタルビジネスへの移行と現場の複雑化により、今では独立した分野と考えられています。 |
Data (データ) |
様々な情報源から収集される企業データの管理、分析、可視化に重点が置かれています。 |
例えば、小規模の企業の場合、インフラを管理している人材がセキュリティやデータ保護も管理しているかもしれません。その場合は、下記のようなスキルの組み合わせになるかもしれません。
もしくは、少し規模の大きな企業では、ITの専門性が高まり、インフラとセキュリティは同じチーム、人材が管理をし、それ以外は別の人材が管理するというようなこともあるでしょう。
現在のコロナ禍で評価されている職種として、クラウドバックアップエンジニア、セキュリティアナリスト、リモートワークをサポートするためのサポートエンジニアなどが挙げられます。
これらの職種も、上記の4つの柱のいくつかの円を組み合わせ成り立つスキルが必要となります。
これらのスキルを意識して育成することで、どのような状況になっても、必要不可欠な基本となるスキルを育成することが可能となります。
さて、今回のコラムで連載としてのコラムは終了となります。
CompTIAは、今後も、CompTIAトレーニングパートナーであるTACと一緒に、みなさまのIT人材育成をご支援して行ければと思っています。
また、新しい情報やお伝えしたいことがある際には、コラムという形で、みなさまにお目にかかれればと思います。
※A Functional IT Framework(2016年 CompTIA発行調査レポート)
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