Interview
[人事・教育担当者にうかがう、人材育成への取り組み]
より高度な経営目線を持った
経理財務人財の育成へ
両備ホールディングス株式会社
大舘 孝久 氏 / 小林 里美 氏 / 時惣 麻衣 氏
Interview
1910年、11.5㎞の地方鉄道から始まった両備グループ。100年を越える歴史の中で事業展開を進め、現在は企業数約50社、従業員数約10,000人を擁する企業グループとなっている。地元岡山・瀬戸内の発展に貢献しながら、日本全国から東南アジアへと事業を拡大するなど、企業としてさらなる飛躍をとげているところだ。
そんな両備グループの中枢機能を担う両備ホールディングス株式会社(以下「両備」)の財務本部では、企業の成長と時代の変化に対応すべく、これまでの経理中心の財務本部ではなく、より高度な経営目線を持った経理財務人財の育成を目指して、教育改革に取り組んでいる。そこには、どのような背景や目指すべき姿があったのか。
取締役常務執行役員 財務本部本部長 経営戦略本部グループ 経営企画部部長の大舘孝久(おおだてたかひさ)氏、財務本部 BPO推進部シニアリーダーの小林里美(こばやしさとみ)氏、財務本部 BPO推進部シニアリーダーの時惣麻衣(ときそうまい)氏を訪ね、お話を伺った。
―はじめに、貴社の事業内容についてお聞かせください。
大舘氏(以下敬称略):両備グループは、祖業でもある「トランスポーテーション&トラベル部門」、新たな技術で時代を創る「ICT部門」、暮らしを支え、都市生活を豊かにする「くらしづくり部門」、都市再生と次世代のまちづくりに挑む「まちづくり部門」、地域の新たな価値を創造し活性化させる「社会貢献部門」の5部門があります。経営理念である「忠恕=真心からの思いやり」を大切に、グループシナジーを活かしながら、常に先を見据えた様々な事業に挑戦しています。
―ICT分野やSDGsなど、幅広いお取組みが印象的です。
大舘氏:(株)両備システムズ内の新組織がFinTechやAI関連の技術を研究・開発しています。両備システムズのAI技術と金融のプロフェッショナルの叡智を融合させた為替市場を解析するシステムを構築し、為替をAIで運用させるプロジェクトです。また、「安全・安心・エコで健康」をグループの経営テーマに据え、EV化や再生可能エネルギーへの投資など、SDGsにも積極的に取り組んでいます。経済成長率や人口増加率の高い東南アジアを中心とした海外にも物流事業を展開しています。約10年前、先陣を切って、当時ベトナムにはなかったコールドチェーン(冷蔵冷凍倉庫による低温物流プロセス)を確立したところ、日系企業様中心に活用いただき、新倉庫を作る計画も動いています。
非上場企業という強みを活かして、長期的目線で成長可能な事業に投資を行い、未来を見据えて、両備グループという箱は変えずに、中身を変える取り組みを進めています。
―両備グループや時代が変化する中で、財務本部としての課題をお聞かせください。
大舘氏:課題の一つが、グループ会社含めた約60の事業体の約7割の経理業務を、本社の財務本部約60名で担う一方、残り約3割は個社ごとの経理担当者を抱えているダブルスタンダードな形態であることです。AIの台頭によって、単純な事務作業は自動化され減少していく中で、中長期的には、経理機能を集約し、BPO化に取り組んでいきます。また、現社長が両備に就任してから、利益規模が約5倍になり、企業として立つステージが変わる中で、求める人財の資質も変わりました。かつての財務本部では、事務作業ができる人間を重宝してきましたが、経営者と同じ目線で動くための専門性が欠落していました。私が財務本部の責任者となった5年前に、社長から「このままの財務本部では機能として困る。変わって欲しい」というメッセージを受け、これまでの事務方中心の財務本部からシフトして、より高度な経営目線を持った部隊へと変革するため、経理財務人財の育成・レベルアップに取り組んでいます。
―大きな変化を促す中では、反発もあったのではないでしょうか。
大舘氏:ギャップは当然生じたと思います。システムとマインドセットの入れ替えを同時に行いましたので、ついていけないと辞める人もいました。歴史のある企業にはよくある話かもしれませんが、変化を嫌う風潮が強く、それを取り除くのも大変でした。
社長から社員に向けて「両備はステージがどんどん変わっている。時代も変わっている。」というメッセージを常に発信していただき、会社の変化に伴い人財が資質を変えなければいけないことを社員に意識づけしていきました。トップがメッセージをしっかり発信してくれることで、私も同じ目線で社員に想いを伝えやすくなりました。非上場企業の強みを活かして利益を社員に還元するなど処遇改善を行い、社員のケアも同時進行で行いました。まだ変革の途上ではありますが、社長も副社長も、財務本部のメンバーの前では「数年前の財務本部と比べて劇的に変わっている」と認めてくれ、ありがたいです。
時惣氏:社員にとって、従来と求められるものが変わることにギャップはあったと思いますが、時代が変わる中で「今までと変わらず事務方だけをやっていていいのか。自分も変化しなくてはいけない。」と、トップの想いに共鳴して納得した方も多いと思います。
―経理財務人財のレベルアップに取り組むための教育にTACを選んだ理由を教えてください。
大舘氏:財務に強い会社に変えるためには、社員の自己研鑽だけに頼るのではなく、会社としても専門性の高い教育を整えるべきだと考えました。TACに相談したのは、私が前職でTACの研修を受けた経験があり、「会計と言えばTAC」という認識もあったからです。依頼をした段階では、弊社の要望にどのくらい対応いただけるのかわかりませんでしたが、TACの営業や企画の方と相談をしながら研修プログラムを作る中で、思い描く形になりました。
―研修を実施してみて、いかがでしたか。
大舘氏:当初は、より経営目線に近く、専門性の高い内容と多数のメニューを相談していましたが、今年度はまずは入り口として「財務諸表入門」「財務諸表論」「法人税入門」の三つを導入しました。
小林氏:現在(2024年3月14日時点)、「財務諸表入門」研修が最後の確認テストまで完了したところです。「財務諸表論」「法人税入門」については、来週まとめ講義と確認テストが控えています。
今回の研修は、経理の人間だけではなく、現場の事務方や数字を扱う責任者なども受講しました。普段から経理業務を行っている私としては、テキストを拝見した際、難しくないと感じましたが、経理畑ではない人には難しかったようです。「経理事務に慣れていないので基本からしっかりと学ぶことができて良かった」という声もあり、そういった方たちにとっては、ステップアップにつながったのではないかと、研修を実施した意義を感じています。確認テストには再テストも導入しており、点数に達するまで取り組むことでさらに習熟度が高まることを期待しています。作っていただいたテスト問題も、普段見ないような内容でとても良い問題だなと思いました。
時惣氏:営業の橋本氏にも、気さくに相談に乗っていただきました。
―財務本部としての今後の展望をお聞かせください。
大舘氏:今回導入した三つの研修をベースとして来年度以降は次のステップの研修を実施し、最終的には当初導入を予定していた管理会計分野のプログラムなど、さらに専門性の高い教育メニューを増やして提供したいと考えています。レベルを上げすぎて社員がついてこられないのでは意味がないですから、業務にフィットするようなベストな形の教育体系を構築したいと思っています。教育は先行投資であり、一朝一夕で効果は出ませんが、ロングスパンでは必ず効いてくるもの。継続は力なりと信じて続けます。
小林氏:今までグループ全体の教育機関として、ビジネスマナーや管理職研修など、ベーシックな研修を受講できる教育センターはありましたが、財務にフォーカスした教育は初めての取り組みでした。実際に運営をしてみて、今後も続けていくことに意味があると感じました。TACさんに相談しながら、少しずついいものに変えていきたいです。
時惣氏:財務本部に異動した際、「財務は知識があれば対抗できる」と言われたのが、教育を考えるきっかけになりました。若手社員が財務の知識を業務に活かせるように、より良い教育を提供していきたいです。
―最後に、会社としての今後の展望をお聞かせください。
大舘氏: 従来の知識では補いきれないことが、今後も時代の変化と共により一層増えていくでしょう。そういった時代の潮流に対応するためには、企業としてさらなるレベルアップが欠かせません。最終的な企業の源泉は人の力ですので、時代の変化に対応できる人財の育成が企業の成長に繋がるのではないでしょうか。5年後や10年後、今の課長職(小林氏、時惣氏など)が上席者になった時に、教育を受けて変革を遂げた人財が片腕、両腕となって支えてくれる時代がくれば、両備もさらに違うステージにいけるかもしれません。
Profile
両備ホールディングス株式会社
岡山県を中心にトランスポーテーション&トラベル部門、ICT部門、くらしづくり部門、まちづくり部門の4つの事業セグメントと社会貢献部門を合わせた5部門、約50社から成る両備グループの中核企業。9の社内カンパニーを有し、バス事業、物流事業、整備事業、ショッピングセンター事業、都市開発事業など、その業務範囲は多岐にわたる。両備経営サポートカンパニーは両備ホールディングス各事業のサポートのみならず、グループ全体を俯瞰する横断組織として各社が機能するシステムや制度の構築もミッションとし、「想像もつかない世界へ」をタグラインとする両備グループを次代へけん引する役割を担っている。
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