Interview

お取引先様インタビュー

[人事・教育担当者にうかがう、人材育成への取り組み]

お取引先様インタビュー

中央競馬の発展を支える
技術者集団!
競馬業界に貢献する
IT人材を育成するための取り組み

JRAシステムサービス株式会社
森 秀樹氏

Interview

JRAシステムサービス株式会社  森 秀樹氏

日本中央競馬会(以下、JRA)で使われているシステムの開発や運用を一手に引き受けている、「JRAシステムサービス株式会社(以下、JRASS)」。
年間売上約3兆円、お客様総数1億6000万人超という、日本を代表するレジャーといえる中央競馬の熱狂を支え続けるのが、JRASSが開発した国内トップクラスの大規模高信頼性ネットワーク・システムだ。半世紀以上の長きにわたり培ってきた技術力によって、競馬業界の発展に貢献している。
中期経営ビジョン2025として「アイデアと技術で『支え』『挑み』『変える』競馬の未来」を掲げ、「アイデア創造力」と「技術力」で、中央競馬のさらなる発展を支えるデジタル先端企業を目指している。
創造性豊かで将来を担う活力ある人材の育成を実現するために、どのような取り組みを行っているのか、総務部人事室の森氏にお話を伺った。

―JRASSでは、理系出身者だけでなく文系出身者も採用しているそうですね。情報系以外の出身者を、どうやって育成していますか?
基本的な技術力を習得するために、入社前からeラーニングや通信教育でITの基礎を学んでいただきます。
また、入社後には資格取得支援制度も使えます。これらの研修や制度をとおして、全社員が入社3年以内に基本情報技術者試験に合格することを目指しています。

―現場に配属された新人を、担当するシステムに精通したITのスペシャリストへと育てるための施策を教えてください。
人事室が企画している階層別教育や特定教育(自己啓発研修、海外研修、eラーニング研修)だけでなく、現場で求められる専門性を養うための部門別教育を行っています。
新人育成の中心となるのは、OJTです。
弊社では、パッケージ化されたソフトウェアをカスタマイズしているのではありません。大規模高信頼性ネットワーク・システムを開発しており、それは市場に類を見ない世界で唯一のアプリケーションです。
そのため、システムのオペレーションなどは現場で一から教えていくことになります。各部門で作ったチェックシートや、開発部門が作った設計書やマニュアルを使って、新人を育てています。
一方で、自社開発しているアプリケーションの土台であるハードウェアやミドルウェアの理解を深めるなどベンダーにお願いできることは、OFF-JTを活用しています。

―競馬を円滑に施行するためには、システムの安定稼働が不可欠かと思います。コロナ禍でもシステムを止めることはなかったそうですね。
コロナ禍において、コンサートや演劇など多くのライブエンターテイメントが中止を余儀なくされましたが、競馬は開催を断念することはありませんでした。
それを支える裏方の仕事を弊社が担っていたという自負があります。
競馬の開催を継続できるように、2つの班に分けてシステムを運用していました。1つの班のメンバーがコロナに罹っても、もう1つの班で対応できるという仕組みです。
そのため、この2班のメンバーは、自分が所属する班以外のメンバーとは決して接触することのないように徹底して運用していました。

―コロナ禍の影響は、今も続いているのでしょうか。
コロナ禍に対応するために2つの班に分けたことで、限られたメンバーとしかコミュニケーションが取れませんでした。
日常的な業務も自部門に閉じられた中で行われていることが多いです。そのため、自分が関わっているシステムのことしか知らない社員も出てきてしまいました。

―問題解決研修を集合研修にしたのは、多くのメンバーと交流してほしかったから、とお聞きしました。
問題解決研修を実施したのは、2つの理由があります。
1つは、集合研修を行うことで他部門のメンバーと話す機会を作るためです。
会社では、多種多様なシステムが動いています。他部門のメンバーと話すことで、自分が所属している部門以外の仕事も知り、全社のシステムを見渡せる広い視野を持ってほしいと思っています。
また、集合研修に問題解決研修を選んだことで、システム面だけでなく思考力も広がるという想定していなかった効果も得られました。受講者から、次のような声が寄せられたのが印象的でした。
「グループで問題について話合うのは、他のメンバーの様々な思考アプローチを知れて、興味深かったです。他のメンバーの考え方も参考にしたいと感じました」

―集合研修に問題解決研修を選んだのは、なぜでしょうか。
問題解決研修を実施した2つめの理由は、顧客要求の高度化やDXの進展など弊社を取り巻く大きな環境の変化に対応できる人材を育てるためです。
DXというとテクニカルな部分が注目されがちですが、部門に捕らわれないジェネラルなビジネススキルを身につけることも欠かせません。問題解決研修により、どの部門にも必要とされるスキルや知識を得られることを目指しました。
さらに、実際の業務を演習のテーマで扱うようにカスタマイズしていただいたことで、目の前にある問題にも対応できる力を養うことができました。
さっそく研修で学んだことを実践しているという受講者もいます。 「先日業務手順を見直す機会があったため、問題解決策の立案手順を参考にさせていただきました」「現在部署内で発生している問題について、ステータスが「未対応」から「解決策を実施中」に変わりました」と、受講者から嬉しい声が届いています。

―これから新しく実施したい教育研修はありますか。
本年は問題解決研修を実施しましたが、今後もジェネラルなビジネススキルを磨いていく研修を拡充していきたいと考えています。たとえば、ファシリテーションやプレゼンテーション、人に伝える力等も重視している観点です。
問題解決研修を担当いただいた山本講師は、想定以上に素晴らしい内容で研修を実施してくださいました。山本講師は、ファシリテーションやプレゼンテーションなど、幅広いテーマで研修を行っているとお聞きしています。そういった多様なビジネススキルを弊社社員も身につけてほしいと考えています。
また、以前は定期的に海外研修を行っていました。コロナ禍が明けましたので、海外研修の再開を検討しています。
海外の競馬場に入らせてもらったり、システム会社を案内してもらったり、日本にはない仕組みに触れる貴重な経験となっていました。海外の勝馬投票券(馬券)の売り場を見て、実際に買ってみる。そうした実地体験でしか得られないものもあるのです。

―最後に、今後のお取り組みについてお聞かせください。
教育研修は、人事室だけでなく全社の施策の中で組んでいくものだと思っています。
経営層の思いを受け止めて、教育研修という1つ1つの講座、カリキュラムに落とし込んでいく。
テクニカルな部分だけでなく、ビジネススキルもバランスよく習得し、社会人、組織人として活躍できるような人材育成の後押しができる研修を今後も展開していく予定です。
貴社にもご協力いただけましたら、ありがたい限りです。

―ありがとうございました。

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森 秀樹(もり ひでき))

Profile

森 秀樹(もり ひでき)氏
1998年JRAシステムサービス株式会社に入社。難波場外分室やトータリゼータ運用部、システム開発部などを経て、2022年より総務部人事室で活躍中。