Interview

お取引先様インタビュー

[人事・教育担当者にうかがう、人材育成への取り組み]

お取引先様インタビュー

新しいキャリアデザインを描く
新規事業を生み出せる人材の育成を目指して

岸和田製鋼株式会社
片山 正基 氏

Interview

岸和田製鋼株式会社 片山 正基 氏

高層ビルなどの建物に不可欠な鉄筋コンクリート用棒鋼(コンクリートを補強する材料)を核として、社会のインフラ整備に貢献しているのが、岸和田製鋼株式会社だ。地震大国である日本において、建造物の耐震性能を向上させる鉄筋コンクリート用棒鋼は、重要性を増している。1956年の創立以来60年以上にわたって高品質な製品を社会に提供し続けており、岸和田製鋼ブランド「KISI-CON」は関西No.1の生産量を誇る。 今後、さらなる成長を目指してダイバ-シティー化、研究開発、AI、IoT化に取り組んでいる。変化の途上にある会社において重要となる人材の育成を担う人事総務部能力開発課の片山正基氏にお話を伺った。

―事業を行う上で大切にしていることは何ですか。
社員の安全を第一に考えています。弊社の経営理念に「安全は全ての作業に優先する」という言葉があるのですが、「安全」というのは物理的な安全だけでなく、心の安全、つまり心理的安全性も大切にしています。

―御社では社員教育にも力を入れていると伺っています。
教育を行うことで育てたい社員像は、2つあります。
1つは、これまでの得意分野でもある協調性やチームワークを大切にしていることです。製造現場、特に工場勤務の人は、やはりチームワークが問われる側面がございます。協調性をどのように担保していくのか、そういったことに長けているコミュニカティブな人材をこれからも大事にしたいと思います。
2つめは、自分でアイデアをだして、それを具現化していく構想力や企画力、それを基盤とした突破力がある人材ということです。これは、今後の人材要件として強化していきたいところです。

―協調性やチームワーク、コミュニケーション能力を高めるために、どういった取り組みをされているのでしょうか。
工場現場にいる管理監督者には、コーチング研修を導入しております。聞く力、傾聴力を強化するためです。一方で事務所の社員については、ロジカルシンキング研修を行っています。協調性自体をテーマにするのではなく、「なぜ協調性を確保しなければいけないのか」ということをロジカルに考えてもらうためです。振り返ってみると協調性は弊社の強みである、ということを腹落ちしていただくためでもあります。
コーチングやロジカルシンキング研修を実施する前と後で比べると、協調性の担保に意識が向いただけでなく、自分がこれから何をしたいかということを自分自身の言葉で語ることのできる社員が増えたと感じています。

―協調性の担保だけでなく、その先を見据えて行動できる社員を増やす方向に会社が変化してきている、という受け止め方でよいでしょうか。
まさに今、変化の途上にあると感じております。それは、世代が変わろうとしているということです。年齢を重ねると役割が変わります。
若手社員には、これから更にチャンスが増えてきます。いろいろな将来像を提示したい、 と思っております。一方でキャリアが豊富なシニアの方には、無形資産である技術を次世代に伝えていくという欠かせない役割があります。

―会社が変わっていくなかで、社員にも新しいキャリアパスを提示するということでしょうか。
キャリアパスやキャリアデザインというのは、まさに弊社の課題になっています。
以前は、社員が労務を提供することで会社から対価をもらう、ということだけでよかったのかもしれません。しかし、今はキャリアパスやキャリアデザインについて社員と一緒に考えていくというところを経営側がしっかりと打ち出していくことが大事だと感じているところです。

―経営層とは人材戦略についてどのような話をしているのでしょうか。
AI、IoTという分野には、中長期的に取り組まなければならないという話をしています。
弊社にとっては未知の領域なので、どのように知見を得ることができるのかを考える必要があります。さらに、AIやIoTは、物作りの会社である弊社にとって親和性のあるテーマであります。ただ単に新しいことに挑戦するのではなく、AIやIoTと、物作りとの掛け算ができる人材をどのように作っていくか、ということを経営層と一緒に考えているところです。
AIやIoTについては、すでに実施している職場もあります。備品の寿命などについて日々の操業データを集積して、最も適切なタイミングで新しい備品に替えるというようなことを進めています。こうした取り組みを考えることができる人材を増やしていくための施策を検討しています。

―弊社がお手伝いしている企業様には、アイデアを生み出して具現化していく社員を育てるために社内副業を実施しているところもあります。
すぐに実現するのは難しいと思うので、まずは新しいアイデアをどのように実務に落とし込むかを考えるための研修やワークショップの導入を検討しています。次の段階として、社員が考えたアイデアを育てていくための環境を会社が提供することだと思っています。そうやって、トップダウンでなく、ミドルアップダウンで新規事業を創出できることが、持続可能性を見出すための1つの施策になりうるのではないでしょうか。

―TACの研修を導入いただいた理由を教えてください。
ビジネス法務研修については、「法律といえば、資格試験に強いTAC」というイメージがありました。沢山のノウハウを持っているであろうと思ったわけです。実際に、研修を受講した社員からは「資格の学校TACだから安心して受けることができた」という声がありました。
また、TACでは研修をカスタマイズしていただけるというお話があったのが、決め手となりました。弊社のニッチな取引や商習慣、さらに商品の機能や実務について事前にヒアリングしてくださり、オリジナルのワークを作っていただけたことで研修の効果を高めることができました。

―最後に、今後の取り組みについてお聞かせください。
取り組みたいことは、海外で戦える人材、研究開発ができる人材を育てるプログラムを考えたいと思っています。 海外で戦えるというのは、語学力は当然のこととして、海外で自分の強みを発揮できること、さらにダイバーシティということになるかと思います。自分と異なる価値観の人を受け止めて、その考えを仕事に還元する、そういう人材を作っていきたいです。
また、研究開発については、先ほどお話しした新規事業の話につながります。0からアイデアを出して実現していくことができる環境を作りたいと思っています。そして、そのための人づくりができるプログラムがあれば導入したいと考えています。実は、それを意識しながら「ビジネスパーソンのための統計リテラシー入門研修」をオブザーブしていました。記述統計的なミクロな視点で考えることは、できています。一方で、推測統計的な、研究開発をする上で欠かせないマクロな視野を持てる社員を育てることが、今後の課題です。

―片山さん、どうもありがとうございました!

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片山 正基(かたやま まさき)

Profile

片山 正基(かたやま まさき)氏
2020年より、岸和田製鋼グループ内の人材育成業務に参画する。
新卒新入社員から部長職までの研修企画・運営を担う。