Interview

お取引先様インタビュー

[人事・教育担当者にうかがう、人材育成への取り組み]

お取引先様インタビュー

お客様の課題に寄り添い、
三重県の活性化に寄与する
「プロフェッショナル人材の育成」
にかける想いとは。

株式会社百五銀行
若林 夏樹氏/中村 高也氏

Interview

株式会社百五銀行 若林 夏樹氏/中村 高也氏
左:若林夏樹氏 右:中村高也氏 百五銀行研修所α前にて

三重県津市に本店を構える、1878年(明治11年)に創立された銀行である「百五銀行」。
「堅実経営」と、最先端の銀行業務を切り拓く「フロンティアバンキング」の実践を伝統として受け継ぎ、三重県の発展と共に前進し続けている。金融機関をめぐる状況が厳しい中でも順調な業績を続け、住宅ローンの増加額は4年連続(2019~2022年度)で全国地銀の中で1位(ニッキンレポート調べ)となった。
経営戦略の柱として、長期ビジョン「グリーン&コンサルバンクグループをめざして」を掲げ、コンサル人材の強化・デジタル化への対応・SDGsの浸透などへ取り組んでいる。中でも、お客様の課題を一緒に解決していく「プロフェッショナル人材の育成」に力を入れており、FP1級など難易度の高い資格を保有する行員を450名に増やすことを目標に社員教育を進め、資格取得者に実践経験を積ませるトレーニー制度なども導入して、行員のコンサルティング能力の向上を図っている。
FPの取得に力を入れた成果などについて、人事部人材開発課長(現中村支店長)の若林夏樹さんと、課長代理の中村高也さん(ともに取材時点)にお話を伺った。

―FP1級などの資格取得を目指す社員研修に力を入れている理由をお聞かせください。
弊行は現在の中期経営計画で、「グリーン&コンサルバンクグループ」を目指すことを掲げています。グリーンはカーボンニュートラルの推進、コンサルバンクは、「お客さまの悩みを解決しましょう。頼りにされる銀行になりましょう。」ということです。
頼りにされる存在になるために、まずFP1級など難易度の高い資格を持つ人材を増やそうとしています。取得を目標としているのは、FP1級を含め、中小企業診断士、税理士、社会保険労務士、証券アナリストなど7資格ですが、FP1級はその中でも特に注力しています。

―特にFP1級を重視されている理由は何でしょうか?
FPは、金融に携わる中で、お客さまが望むものを網羅しています。お客さまを総合的に支援するために行員に求められるリテラシーとしてFPがまず必要と考えています。
弊行は従来の営業店に加え、パーソナルプラザとコンサルプラザという部署を立ち上げました。パーソナルプラザは住宅ローンの専門プラザです。弊行の住宅ローン増加額は4年連続で全国トップとなりました。
コンサルプラザは個人の資産運用やライフプランのアドバイスを中心に行っています。お客さまが一世一代の家を買おうというときに利用されるパーソナルプラザ、お客さまの金融ライフプランに適切な支援をするコンサルプラザ、これに営業店を含めた、3つの拠点に必要な基本となるスキルがファイナンシャルプランニングと考え、FP1級の学習には力を入れています。目標は450人。行員の4、5人に1人がFP1級などの資格を持っていれば、拠点1か所に必ず1人か2人の有資格者がいることになりますので、お客さまも安心されるのではないかと思います。
幸い住宅ローン増加額で全国トップを4年間維持できたのも、商品性に加えて、FPとしての行員の知識が底支えをしてきたと考えています。
また、三重県の地域課題のひとつとして「南北問題」があります。四日市市・津市をはじめとする北部には工業地帯が多い一方、志摩半島から東紀州にかけての南部地域は、一次産業を主体としており、過疎化・高齢化が進んでいます。このような地域をどう持続可能にしていくか、北部と南部をどのように融合させていくかなど課題は山積しています。
事業承継も課題の一つです。三重県の方が事業を引き継ぎたいと思ったときに、お子さんたちは都市部に出ているケースが多い。そうすると、三重県の資金が域外に流出し、三重県が衰退していく要因の一つになります。
帝国データバンクの「後継者不在率」動向調査によると、三重県は全国で事業承継の問題が一番解決できている県になっています。これを維持していくことが持続可能な地域づくりにもつながりますので、相続、事業承継、不動産といったFPの知識が必要になります。

―TACのFP1級講座を導入した経緯についてお聞かせください。
弊行は以前から行員のFP3級・2級の取得には力を入れていました。しかし1級を目指そうとしたときにハードルが高く、年間数人しか合格しませんでした。
そこでTACの講座導入を決めましたが、決め手は他行でのFP1級の合格率48%という、圧倒的な実績でした。また、提案内容が魅力的でしたし、教材も見やすいと思いました。
講師陣の説明もわかりやすく、それまで年間数人だったFP1級の合格者が翌年度から50人前後に増えました。効果てきめんという感じでしたね。
FP1級は独学で取り組むとなると600時間くらい勉強時間が必要ですが、業務が多忙ななかで行員が毎日一時間半の勉強時間を捻出するのは大変です。TACの講座は要点を押さえた大事なポイントを解説していただけるので、効率的に勉強ができます。また、百五銀行用のオリジナルのまとめ講義を作っていただき、まとめ講義の受講を目標として各分野の基本講義を勉強していく、というスケジュールの立てやすさも良かったです。Web上で受講できるので、行員が資格スクールに直接通うという時間を省けるのも効率的でした。

―資格を取得した後は、実践経験を積むトレーニー制度などを用意されていると聞きましたが・・・・。
社員教育は、知識の向上だけではなく、それを活かすために実践の場を提供することを重視しています。知識と実践は、どちらも大切な車の両輪のようなものですので、実践の経験値を増やすために、知識をアウトプットできる環境を積極的に作りました。アウトプットが行える研修プログラムを用意している他、トレーニー制度を導入しています。
新たなトレーニー制度として、例えば、FP1級を取得した行員が、営業店に在籍しながら3~4カ月間、本部のコンサルティングの部署の仕事を兼任し、学んだ知識を実際のお客さまに向けてアウトプットする、というような複業型で行う中期トレーニーを導入しました。これまで、数日間他部署を体験させたり、異動をかけて半年くらい他部署で研修をするということは行っていましたが、そのような短期と長期のトレーニー制度では行き届かなかった部分があり、複業型という中期の枠を設けました。

―デジタル化やSDGsへの対応も戦略の柱とされていますが、どのように取り組まれているのでしょうか?
行内のデジタルリテラシーの向上にも注力しています。デジタル化対応については、知識のインプットはできますが、銀行内でアウトプットできる場はまだ少ないので、その場も研修の一環として提供しています。例えば、営業を担当する行員に月に3~4日程度、行内複業として本部に来てもらい、データを活用して融資や預かり資産などの候補先リストを作成し、実際に営業の実務で試して成約率の効果を検証する、といったデータ利活用のPDCAを体験する試みを行っています。
アプリ化支援人材、システム開発人材を育成する研修なども実施しています。
例えば、eラーニングでプログラミング言語やAIの知識を学んだあと、実際にプログラミングを体験し制作側のイメージを理解してもらう研修や、プログラム言語を使用しないノーコードで仮想の営業報告アプリの開発を体感するといった研修です。実際の業務の中でのアウトプットの場を提供していくのはこれからになりますが、行員にそういったデジタルツールに触れてもらい、リテラシーの底上げをするのが狙いです。興味を持ってくれた人の中から、専門的な人材が育ってくれるのを期待しています。
また、SDGsに関しては、特に地域のお客さまのグリーン成長(脱炭素化)を推進できる人材を育てたいと考えています。三重大学が行っているサイレッツという環境系の講座への参加をすすめているほか、環境系の資格取得も後押ししています。

―今後の人材育成の展望についてお聞かせください。
コンサルティングとデジタルとグリーンの3つの相乗効果を各人がしっかりお客さまに提供できるようにしなければならないと思っています。コンサルティングに関してはもちろん深い知識を持ってお客さまに対応できた上で、例えば、スマートデバイスに対応できない不安を持っているお客さまへの対応や、太陽光発電あるいは蓄電池を我が家に導入するにはどうしたら良いか悩まれているお客さまなど、デジタルの話や脱炭素化の話で相談を受けても、一通りの対応ができる。こうした人材を育成していくことがお客さまのニーズに応えることにつながるのかな、と思っています。
「百五銀行の行員がいてありがたいな」と感じてもらえるようになりたいですね。地域を活性化するために、FPの知識を活用してお客さまに還元できる人材を作らなければならないと考えています。

―ありがとうございました。

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若林 夏樹(わかばやし なつき)

Profile

若林 夏樹(わかばやし なつき)氏
人事部人材開発課 課長(現在は中村支店長)。2000年百五銀行津新町支店に入行。四日市西支店、鈴鹿支店、従業員組合、伊勢支店、人事部人事課を経て、2021年に人材開発課長(研修所所長)に就任。TACでは社会保険労務士講座・FP1級技能士講座を受講しともに取得。

中村 高也(なかむら たかや)

Profile

中村 高也(なかむら たかや)氏
人事部人材開発課 課長代理。2008年百五銀行名張支店に入行。佐那具支店、矢田支店、津駅前支店、大石支店を経て、2020年に人材開発課に着任。TACではFP1級技能士講座を受講し取得。