【人事担当者を元気にするコラム Vol.41】もし、大谷翔平が時速160kmのストレートしか投げられなかったら

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2023.03.24

メジャーリーグにおいて、二刀流で活躍中の大谷翔平選手はまさに伝説をつくり続けています。打者としてはホームラン王争いにも加わるほどのスラッガー、投手としても時速160kmを超えるストレート、剛速球のスライダー、スプリット等を投げて、まさにエースとして異次元の活躍を繰りひろげています。メジャーのトップクラスの打者を力で抑えている素晴らしい活躍です。

でも、もし、大谷選手が「俺はストレートだけで勝負するんだ。これからは変化球は一切投げない。自分の最も得意なストレートだけで勝負するんだ」
そう決意して、対応していったとしたら、メジャーリーグの強打者を抑えることはできるでしょうか?
さすがの大谷選手といえども、ストレートのみでは無理なことだと思います。

イメージ:メジャーリーグの球場

私たちは、メジャーリーガーではありませんが、この一つの例から学ぶことがあるように感じています。日ごろの人間関係において、どのように行動しているかを一緒に考えてみましょう。

仕事上のトラブルの80%は人間関係、コミュニケーションによるものだといわれています。逆にいえば、人間関係やコミュニケーションが良好になっていけば、トラブルのほとんどはなくなっていく、ということにもなります。
時折「コミュニケーションは難しい」という言葉を耳にすると思います。ただこれは、「言葉は力やエネルギーをもっている」ということをしっかりとらえると、決して使ってはいけない言葉であることがおわかりになるでしょう。
私は、極力、「コミュニケーションは難しい」という言葉は使わないようにしています。なぜなら、難しいという言葉そのものの力に引っ張られ、本当にコミュニケーションは難しいと脳が決めつけてしまうからです。

こんな時は、こう言ってみませんか?
「コミュニケーションって奥が深いねえ」
これであれば、ネガティブに引っ張られることはありません。

日ごろの会話でも「あの仕事、難しいね」とか「この新規業務は難しいね」とはいわずに「この○○業務は、奥が深いねえ」という感じに、ライト感覚でぜひ使ってみてはいかがでしょうか?

私自身、課長となり、営業のグループリーダーとなった当初は、ずいぶん肩に力が入っていたように思います。
そのころとても大切にしていた価値観に「自分らしくあること」というものがありました。
「自分らしくふるまい、自分らしく話し、自分らしく発信していくこと」
この「自分らしさ」以上に大切なことはないと感じながら、日々過ごしていました。メンバーへ話しかけるとき、相談を受けるとき、すべてにおいて「自分らしくあること」「自分らしさがあること」が全面にでていたことと思います。

40歳をこえて、42~43歳になったころ、ふと思ったことがあります。
「俺は何のために、今、メンバーに語っているのか?」
「俺はメンバーにどうなってもらいたいと思って伝えているのか?」
自分自身に疑問がわいてきました。自分らしく話すことはその中で、どんな意味があるのだろうか? そして、そもそもメッセージを届けているねらいは、話しているメンバーに行動変容を起こしてもらうためなのではないか、と気づき始めました。
(やばい! 結構遅い気づき……)

「人生を歩んでいくうえで、自分らしい生き方はとても大切だけど、メッセージを伝えるねらいが、相手の行動変容を促すことだとしたら、自分自身の話し方や、接し方へのこだわりなど、どうでもいいんじゃないか? 相手が行動変容を起こせるように、相手に一番あったタイミングで、相手に一番あった方法で、一番伝わるように伝えていけばいいのではないか」と、気づいたのです。

ちょうどそのころ、私はコーチングに出会い、コーチ・エィ(当時はコーチ・トゥエンティワン)の門をたたき、帰宅後、ほぼ毎晩の、電話によるコーチングレッスンを始めました。とても刺激的な日々が続き、気づきの連続でした。終了時には、コーチングの資格(認定コーチ)を取得することができました(そして現在の所有資格は、もう一段上の認定プロフェッショナルコーチになっています)。

コーチングはとても有効なコミュニケーションツールであり、多くの方が経験していくと、世の中のコミュニケーションは、数段よくなっていくと確信しています。私は今でもコーチングを学び続けており、「まさにコーチングは奥が深いなあ」と日々、痛感しています。

コーチングをいろいろ学ぶ中で、衝撃をうけたのが、行動特性によるタイプ分けです。世の中には、4タイプ、9タイプ、16タイプなど様々な分け方がありますが、最も有効なのが4タイプのように感じています。それはなぜか? 9タイプや16タイプは詳細に分かれていてよいのですが、残念ながら、タイプ分けをしても忘れてしまい、結果として活用できないことにつながるからです。
そのため、代表的なタイプ分けに関しては、4つのタイプ分けが最も優れており、かつ活用できるものだと感じています。
その一部をここでご紹介しましょう。4つのタイプは、「社交・促進型」「支配・主導型」「支援・援助型」「分析・戦略型」となります。それぞれのタイプ上での特徴は、次の通りです。

 

 ①社交・促進型:
 ・楽しいことが好きでエネルギッシュ
 ・細かいことはあまり気にとめない
 ・未来を自由に描くことを好む
 ・時にうぬぼれや、お調子者といわれる
 ・よく話す反面、あまり聞かない
 ・社交的でオープン
 ・人のモチベーションをあげる
 ・人との関りでは感情表現ゆたか

 ②支配・主導型:
 ・行動的、野心的、エネルギッシュ
 ・リスクを恐れず、目標達成にまい進する
 ・人間関係より仕事優先
 ・人の話を聞かず、結論を急ぐ
 ・人を寄せつけない印象を与える
 ・人をコントロールしたがる。コントロールしようとする人には反発する
 ・自分以外の人間は弱い存在だと思っている

 ③支援・援助型:
 ・人を援助することを好む
 ・協調性が高く、意欲もある
 ・人の心を読むのが得意
 ・ビジネスよりも人優先
 ・人の期待に応えるような行動をとる
 ・気配りがある
 ・対立を避ける
 ・人とのつながりを大切にする

 ④分析・戦略型:
 ・物事に取り組むとき、データを集め、分析する
 ・プランニングや計画をすることが好き
 ・失敗や間違いが嫌い
 ・粘り強く、最後までやり遂げる
 ・変化や混乱には弱い
 ・対人関係も慎重
 ・孤立してもあまり苦にはならない
 ・感情表現はあまり得意ではない

 

皆様はどのタイプに近いですか?

タイプ分けは、あくまで行動の傾向を示しているだけで、人をタイプ分けで決めつけてはいけない、というのが前提です。ただ、異なるタイプを知らないとどうなるかというと、自分と同様の反応をしない人を、「間違っている」とか「使えない」と感じるようになってしまい、最終的には、人の判断を好きか嫌いでしてしまう危険性があるといわれています。

孫子の兵法でも「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」と書かれています。
つまり、コミュニケーションにおいて、相手のタイプと自分のタイプを知って対応していけば、連戦連勝につながっていくということです。
逆に、相手を知らず、自分を知らない、というコミュニケーションはとても危険で、まさにトラブルへ一直線ということもあるでしょう。
自分がどのタイプであるかを知り、相手のタイプを知ったうえで、コミュニケーションをしていくと、とてもスムーズな関係性を築くことが可能となります。

イメージ:相手を知る

タイプ分けは、コミュニケーションの様々な場面で活用することができ、なかでも、「ほめ方」「仕事などの依頼の仕方」などに効果を発揮します。

たとえば、ほめ方について。相手が社交・促進型であれば、「すごいね」「さすがだね」「できる!」「背中がすごい」など、どんなことでもほめればやる気が出るのがこのタイプ。豚もおだてりゃ木に登るタイプです。
(実は私はこのタイプ!)
一方、分析・戦略型の方には、「すごい」「さすが」などといっても、あまり心に届きません。できるだけ具体的にほめることが鍵となります。
たとえば、「前回のプレゼンの資料、15ページの色の使い方、グラフの展開がとてもわかりやすかったよ」といったように、より具体的に伝えることで心に届きます。
また、支援・援助型の場合、「あなたのフォローで、みんなが助かったよ」といった言葉なども、とても有効なほめ方となります。

タイプ別にほめ方を工夫すると、ほめるという行動がより効果的になります。
英語のケミストリー(Chemistry)という言葉には、化学や化学変化のほかに、人との相性や人間関係という意味がありますが、まさにほめ方一つで化学変化が起きてくるということです。この変化を味方にするか否かは、よりよいコミュニケーションのためにも、とても大切だと感じます。

また仕事の依頼の仕方なども、タイプ別に考慮すると効果も変わってきます。
仕事を頼むとき、社交・促進型の方には、「そこのところは、まずざっくり進めて」といって、方向性さえ示めしていれば、OK。
分析・戦略型の方は、「そこは適当に」とか、「まずはざっくり進めて」などと指示すると、思いっきりざわつきます。ご自身を分析・戦略型だと感じている方、いかがでしょうか?
営業時代、タイプ分けのことを知らなかったために、みんな自分と同じタイプのように「すごい!」「やったね!」などの言葉を繰り返していたように思います。
早めにタイプ分けを知っていたら、もっといい形で指導できたかなあと感じるときはあります。ただ、思いっきりほめていたので、それはOKかなと今でも思います。

これからビジネスを進めていくうえで、コミュニケーションにおいて、自分らしさにこだわりますか? それともいろいろな球種をマスターし、いろいろなタイプに対応できる道を選びますか?

「コミュニケーションは奥が深い」
私は、コミュニケーションをかなり研究した方なので、機会があれば、みなさまへのサポートを含めて、いろいろとお手伝いもできるかと感じています。
いろいろなタイプを想定し、伝える方の行動変容を目標として、メジャーの強打者を抑えるように、コミュニケーションを極めていきませんか?
コミュニケーションの達人の道はあなたの手に握られています。
目指せ、メジャー級の活躍を!!

WBC日本代表 侍Japan世界一おめでとう!感動をありがとう!
大谷選手の「今日一日は憧れるのをやめましょう!トップに立つためには……」という言葉は、成功へ向かう魔法の言葉に感じます。

 

  【お知らせ】
山本実之氏による「人事担当者を元気にするコラム」の連載3周年を記念して、山本実之氏からコメントをいただきましたので、ご紹介いたします。
山本実之氏による「元気が出るコラム」連載3周年記念特設ページ
 

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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。
資格としては、GCDF-Japanキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

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