【人事担当者を元気にするコラム Vol.29】Back to School ~会社はビジネススクールだ~

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2022.03.25

最近、リカレント教育とか学びなおしとか、話題になっていると思います。
みなさんは、今、何を学んでいますか? 何に興味をお持ちでしょうか?

この頃、学ぶことって、とても楽しいことだなと感じています。
高校生の頃の勉強、特に受験勉強のなんとつまらなかったことか。自分自身の学ぶ姿勢にも問題があったのかもしれませんが、学びの気持ちは目覚めませんでしたね。
授業を面白くなさそうに、つまらなさそうに、ただ行うだけの先生も多かったように感じますが、こちらも聴く態度がなっていなかったのですから、これは先生のせいではなく、すべては自己責任ですね。

一転して、社会人になってからの学びはとても楽しく、「学問」とは実は「楽問」なのではないかと思うほど、ワクワク学んでいたように感じます。これは仕事に即、直結するからでしょうか。
営業時代、特にマーケティングの学びはとても楽しく、理論を即実践してみると、すぐに結果までついてきたので、とてもエキサイティングだったと感じます。

社会人は、今こそ、学び直しのとてもいいチャンスに恵まれているのだと思います。資格のための学びもよし、アカデミックにあこがれての学びもよし、本を読んで世界をひろげることもよし、すべてが学びであり、どれも、とても楽しいことだと思います。
こんなことをいっている私を、高校生の頃の私が見たら、とてもびっくりすることでしょうね。しかし、気づいたその時こそが最高なので、学び直しにも遅すぎるということは全くないと考えています。

学べば学ぶほど、世の中には知らないことが多いなと感じます。ある面、知らないことだらけといってもいいですね。それらを知ることにより、新しい世界の扉が開き、脳細胞も喜んでいるように感じています。

どこかの学校で学ぶこともいいのですが、その前に少し工夫をしてみませんか? 身近な学校がありますよね、あるというよりも学校という意識に変換するといった方が適当かもしれません。それは「会社」です。つまり、「会社はビジネススクールだ」という考え方です。会社ってある面、すごいところだと思いませんか?
いろいろなことを学びながら、お金までもらえるのですから。これはすごいことと考えたことはありませんか? 視点を変えると、大きく世界が変わる一例だと思います。
また、学べば学ぶほど、謙虚になっていくと思います。特に20代、30代は学ぶことだらけだと感じています。
自分さえその気になれば、会社は学びの宝庫です。それぞれの分野における専門家がいるのですから、これを活用しない手はありませんね。
たとえば、法律のことを学びたければ法務部へ、人財マネジメントについて聞きたければ人事部へ、マーケティングに興味があれば、マーケティング部にいけば、製品ごとの考え方なども聴くことができます。
各々の専門家を訪ねていけばいいのです。これぞビジネススクールではないでしょうか? 考え方ひとつで世界は、大きく変わります。

イメージ:他の部署を訪ねる
もちろん、皆さん忙しく仕事をしていますので、自分なりの問いをもって訪ねていく必要はあります。「これなんですか?」といった問いではなく、「私はこの点について~と感じているのですが、○○部の立場からみるとどのように考えられますか?」というような、自分なりの見解をもって、問いをしていくことが大切でしょう。

活用の仕方次第です。自分の学ぶ姿勢さえあれば、会社はただ単にお金を得る場所から、学び舎へ早変わり。興味のネタはいたるところにありますね。
今日のあなたは何学科へ入学していきますか?
仕事しながら学べる環境をエンジョイしていきましょう。

特にこのビジネススクール化が効果を発揮するのは、少々自分の望んでいる部署でないところに配属されたとき、あるいは、成果を出しにくい環境になった時、こういう時には特にお薦めです。
会社生活の中では、成果の出しにくい時がありますよね。そういった時は、春夏秋冬の冬の時代のようなものと割り切るのも、一つの方法です。冬なのですから、冬らしくすべきです。
焦るとどうなるか? 真冬なのに、海パンだけで、海に飛び込むようなものです。
「俺は本当はすごいんだ」といいながら、真冬の海に飛び込めば、風邪だってひくし、へたをすれば、肺炎などの病気にかかってしまうかもしれません。
冬なのだからコートを着て、暖かくして、今は学ぶ時にしようと考えるのもいいはずです。ここは素直に学びの時間にする、会社をビジネススクール化してみませんか?

学ぶ時は、10年後の素敵な自分をイメージしながら、社内にいる各分野の先生をおおいに活用しましょう。将来的には、自分自身が教えている場面もぜひイメージしてみてください。
自分が社内でいろいろと教えてもらった経験がある人は、後輩へも優しく指導できるものだと信じています。ある時は生徒、ある時は先生、なんと素敵なビジネススクールでしょう。

私は、新人の頃、商社部門に所属しており、大手商社の方々と接する機会も多くありました。当時、商品相場(砂糖、ココア等)を活用しながら、ビジネス展開をしており、どうしても深く学びたいと感じておりました。
ご縁があり、大手町にある大手商社の方から直接教えを乞うことになりました。
今では、とうてい無理だと思いますが、当時、ノート片手にその商社マンのオフィスを訪ね、その方の席の横に補助席を設け、商品先物の考え方や相場の見方、様々な知識を教えていただきました。古きよき時代ですね。
周囲の方々からも「今日も来ているね!」といったように、とても温かくみていただき、大いに学びを深めたことを思い出します。
その商社マンの方には、駐在先のソウルから私の結婚式にご参列いただき、スピーチをいただく関係にもなりました。人とのつながり、学びは大切にしていきたいものですね。

30代のころ、海外事業部に所属していた時には、他事業部の海外部門のメンバーと、アジア勉強会を創設したことがあります。よりビジネススクールに近い形だったと思います。内容はとてもシンプル。お互いの海外出張での報告会を行っていきます。メンバーは10名程度、実施は終業後。1000円程度の会費を出し合い、幹事がビールとサンドイッチを用意して、リラックスした雰囲気で楽しく実施していました。
他事業部の海外出張報告なので、同じ出張先であっても当然パートナーや得意先が異なります。接し方や視点も異なるので、とても気づきが大きく、刺激になったことを覚えています。また仕事を離れての勉強会でもあり、とてもフランクな雰囲気で、心は世界に飛んでいた楽しいひとときでした。
お互いが何気なく発言したことに驚かされたり、世界のひろがりに気づいたりと、出張して感じたことを共有するだけで、すごい学びになるものなのだなと感じました。
ともに学ぶことが仕事の幅を広げ、人生の見方を拡大していくこと、素晴らしい経験になったと感じています。

時代は変われども、会社内で小さな学びの会を作り、報告しあうことも、とてもいい気づきになり、有意義なことだと思います。会社をビジネススクールにしたとすると、サブゼミみたいな感覚でしょうか? 肩肘張らずに、おもしろ、おかしく実施していくことがポイントのように思います。

何かを始めるときに、「もし失敗したら……」と考える方もいますが、私はもともと何もなかったんだから、失敗なんかないよね、といつも思っています。
うまくいかなければ、やめてもとにもどるだけ。マイナスなんてなにもない。
もともとゼロだったのですから、得られることだけにフォーカスして、まず取り組んでみればいいと感じています。すべては学びにつながります。

研修部長時代には、他社の研修部長とともに、お互いの研修内容などを共有するような学びなどもしていました。お互いの研修所を訪問し、新人研修でどんなこと実施したとか、どんな気づきがあったとか、研修会社の特徴やよさなどを、ディスカッションすることもありました。
営業では他社との交流でも微妙に話せないこともありましたが、人財育成となると、秘密にすることはほとんどなく、オープンでの情報交換ができ、とても有意義であったと感じています。

他社との勉強会などは、まさに自らビジネススクール化していったものだといえるでしょう。会社での立場を有効に活用しながら、学びの場を広げていくことも自分の学びになり、結果としては、会社に貢献していくことになりますので、まさにWINWINの成果になっていたと思います。
その頃に一緒に学びあった方々には、今も私のこのコラムをお読みいただき、感想などをお伝えいただいています。このご縁も大切にしていきたいといつも考えています。

また、会社で学びの会などがあれば、ぜひ億劫がらずに参加されるといいと思います。新たな環境に身を置くことにより、なにか心に化学変化が起きて、新しい自分に出会うこともあると感じます。

学び直しの先駆者としては、独自の「口グセ理論」を確立した文筆家の、佐藤富雄さんの考えがとても参考になると感じています。佐藤さんは、58歳から大学で再び学びを始め、MBAホルダーになり、60歳代後半で医学、理学、農学の博士課程を修了されました。
佐藤さんは、「脳はいくつになっても衰えることはない。仮に50歳代で「再学習しよう」と決意した人は、そこでスイッチがはいり、次々と新しい知識を吸収し、その先の黄金期へ向けて進化する脳が形成される」と言っています。
若さあふれる生き方は、これからの学びに大いに参考になると思います。一生青春のような生き方をされていた方だと感じています。


人生100年時代。平均寿命が延びた現代からすると、年齢については過去と比べて「7掛け人生」といわれています。そうすると、私はまだ42歳ということになりますが、この年齢の方がより実感がわきます。

これからは、「ワクワク」がキーワードのように感じています。現代社会においては、もっとワクワクすることを実践することが必要ではないでしょうか。
少年の大冒険のような気持ちで生きていくことも大切なことでしょう!
さあ、会社をビジネススクールに変えていきませんか?


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。
資格としては、GCDF-Japanキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

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