PRプランナー資格取得の先に広がるもの

エバラ食品工業株式会社 執行役員コミュニケーション本部長
(公社)日本パブリックリレーションズ協会副理事長上岡 典彦

2022.04.11

言うまでもなく資格とはライセンスであり、何かを許可された証だと言えます。
広報・PRの世界においての代表的な資格が、公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会が認定する「PRプランナー」です。

私は常々、パブリックリレーションズ、広報の仕事とは「森を行くようなもの」であると考えています。森は深く険しい。怖い。抜けるのにどれほどの時間を要するか、どんな獰猛な生き物が潜んでいるか計り知れません。

それゆえ、森に入る者には周到な準備と武器が必要です。PRプランナー資格とは即ち、森への正しい畏怖の念を持ち、森に入るための備え(資格)を得たものに与えられる武器だと考えます。
「木を見て森を見ず」という諺があります。仕事においては全体観が必要です。全社視点、社会的視点とも言われるものです。さまざまな事象を近視眼的、社内の論理だけで見るのではなく、社会の立場から俯瞰してみる、所謂「鳥の目」が必要です。然しながらモノゴトは常に複雑で不可思議なので、時には「虫の目」で、寄って寄り添いクローズアップして見ることも必要となります。
PRパーソンとは「鳥の目」と「虫の目」、その両方を兼ね備え両方の視点からモノゴトを見て判断することができる人材と言えます。

「木は森に隠せ」という諺があります。企業・団体が何らかの不祥事を起こしてしまった場合、多くは週末の午後にその発表を行います。翌日は休日。ビジネスパーソンも平日ほど熱心に新聞を読まず、TVではニュースに代わり娯楽番組が流されます。そのうえ多くの発表が重なった場合は報道されないことさえあるかも知れません。残念ながら起こってしまった不祥事=木を、人の目につきにくい森に隠すことも可能です。一方、PRパーソンにとっては「木は森に隠せ」はネガティブだけではなくポジティブな「指針」でもあります。広報の仕事にとって肝要なことは、「自社」を主語として発信情報を組み立てないということです。主語はあくまでも「時代」であり「社会」です。自社の新製品・サービスを発信する際には、それを主語に置くのではなく、今の流行、世の中の関心ゴトという「森」のなかに、自社の「木」を忍ばせ、森への注目を活用して、結果的に自社の商品・サービスを訴求することが重要です。
PRパーソンとは時代・社会の流れを読む、云わば「魚の目」も併せ持ち、自社の活動を社会の文脈で語ることができる人材でもあります。

「森羅万象」という諺があります。PRパーソンは、企業・団体のありとあらゆるモノゴトや現象を取り扱います。社会に発信するにあたっては、鳥の目・虫の目を駆使し、社内野党の立場から検証します。そして魚の目で発信情報が時代・社会性に合致しているかを確認します。自社都合に偏っている場合には、社内を説得し内容や表現の修正を行います。PRパーソンの仕事とは、社内で合意形成を得て発信した情報をもって、社会との合意形成を得る仕事とも言えます。言うまでもなく、合意形成はすべての職種、あらゆる仕事の場面において必要となるものです。PRパーソンが合意形成のプロフェッショナルであるならば、その人材は広報に限らず、幅広い領域での活躍が期待できます。言い換えれば、すべての仕事にとって大切な、合意形成のプロフェッショナルを求めるのならば、PRパーソンこそがその期待に応えることができます。

「PRプランナー資格認定制度」は2007年よりスタートした、広報・PRの基本的な知識から実践的なスキルまでを検定し、資格を認定する制度です。現在までに約3,000名のPRプランナーが誕生し、企業・団体内、そして企業・団体と社会との「合意形成」のために活躍しています。
資格取得には、1次から3次までの試験に受かる必要がありますが、その過程においては広報・PRに関する体系的な学びはもちろん、IR、ブランドマーケティング、コーポレートガバナンスやCSRに関することまで、ビジネスパーソンにとって必要な知識・見識を身につけることができます(1次合格でPRプランナー補、2次合格で準PRプランナー、3次合格でPRプランナーの資格が得られます)。


日本パブリックリレーションズ協会:PRプランナー資格認定制度/検定試験

ESG経営の重要性が言われる今日、時代・社会的な観点からモノゴトを捉え、社内外においての合意形成を推進できる人材が一層求められていると思います。
ある企業では、そのような人材の育成の場として広報部門が機能し、広報部門で経験を積み鍛えられた人材に対する他部署からの異動オファーが増加していると聞きました。
私は昨年7月にエバラ食品に転職しましたが、前職で広報部長を務めた2015年以降、広報部門に限らず、社内においてPRプランナー資格取得を広く推奨してきました。エバラ食品においても早速2名の部下が1次試験にチャレンジしました。

人事部門における今後の人材育成戦略のひとつとして、パブリックリレーションズ人材の活用、そしてその育成に向けたPRプランナー資格取得を促進してはいかがでしょうか。

Profile
上岡 典彦
エバラ食品工業株式会社 執行役員コミュニケーション本部長
(公社)日本パブリックリレーションズ協会副理事長

[日本パブリックリレーションズ協会]
公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会(略称:PRSJ)は、時代に即したパブリックリレーションズのあり方を求め、日本におけるパブリックリレーションズの啓発・普及を図る活動を行う公益法人。
企業・団体の広報担当者とPR業が会員として共存しているという特徴を活かし、互いのPRに関する知識やノウハウを共有し、実際の広報PR活動に役立てるとともに、次代を担う広報・PRパーソンの人材育成にも積極的に取り組んでいる。

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