アフターコロナの今こそ心理的安全性の高い組織づくりを

TAC株式会社 法人営業2部荒川 真澄

2023.05.30

日本政府は2023年5月8日に、新型コロナの感染症法上の位置付けを、これまでの2類相当から、季節性インフルエンザと同じ5類へと移行しました。これにより、外出自粛の要請といった行動制限がなくなり、感染防止対策も個人の判断に委ねられるようになりました。これはコロナ禍からの社会経済活動の正常化に向けた、大きな一歩となることでしょう。
とはいえ、長きにわたったコロナ禍により人々が疲弊するなか、昨年勃発したロシア軍の侵攻によるウクライナ情勢も、世界に大きな影を落としています。コロナ以前と比べると、全世界で社会や経済の状況が大きく変化したといえます。

そんな中だからこそ、ビジネスの現場における組織作りにおいて、いま改めて「心理的安全性」という概念に注目が集まっています。
ご存じの方も多いと思いますが、簡単にご説明すると、この心理的安全性(サイコロジカル・セーフティ:psychological safety)とは、1999年にハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・C・エドモンドソン教授によって提唱された概念です。
これは、あるチームにおいて、そのメンバー一人ひとりが「自分がどんな行動をとっても、他のメンバーから否定や非難されることはない」と感じ、実際に遠慮などすることなく発言や行動できるような状況(これを「心理的安全な状態」とする)を作り出すことにより、チームにおいて各メンバーが自身の力をいかんなく発揮できるようになる、というものです。
この心理的安全性が一躍脚光を浴びたのは、2015年11月にGoogleが「チームの生産性を高めるための唯一の方法」としてとりあげたことがきっかけだといえるでしょう。
このときGoogleは、自社の情報サイト『re:Workにおいて、アメリカの大手通信社AP通信との共同研究の結果を発表しましたが、そのなかで「チームを成功へと導く鍵」としてあげたのが ① 心理的安全性、② 信頼性、③ 構造と明瞭さ、④ 仕事の意味、⑤ 仕事のインパクト の5つの項目であり、なかでも心理的安全性については、「チームの成功に最も重要な要素である」としたのです。
誰もが知る巨大IT企業Googleの発表は大きなインパクトを与え、多くの企業がこの心理的安全性に着目しました。

その後も、さまざまな場面で話題となった心理的安全性ではありますが、前述の通り、改めて、いま多くの企業で「チーム環境をつくる土台」として取り入れられつつあります。
実際に私共TACでも、コロナ禍以降この心理的安全性に関する研修等についてのお尋ねがさらに増加しており、その後のご提案により、研修導入を決める企業様が増えています。

注目度を増す一方で、残念ながらいまだに「サイコロジカル・セーフティ」の日本語訳である「心理的安全」という言葉の響きからか、どこか「ぬるま湯につかるような関係」や「お友達組織のような、ただ仲が良いだけの関係」のことだと誤解される方も少なくはありません。もちろん、それは間違った解釈です。
いま、心理的安全性が再注目されるのも、コロナ禍において痛んだ従業員を癒すといったことや、チームメンバーにとって「優しい組織」を構築するといった思考によるものではありません。
前述の通り、「心理的安全な状態」というものは、「チームのメンバー一人ひとりが、自分がどんな行動をとっても、他のメンバーから否定や非難されることはないと感じ、実際に遠慮することなく発言や行動できるような状況」だということです。これにより所属するメンバーは、チームのなかで遠慮をすることなく、しっかりと言いあうことができ、行動することができます。たとえ何かに失敗したとしても、不当に責められるようなことはなく、お互いにフォローしあえると感じている(事実、そのような関係感が成立している)わけです。


信頼しあえる関係にあるからこそ、各メンバーは全能力を発揮し、高いハードルにもチャレンジすることができます。「仮にリスクをとってでも、チャレンジすることができる」がゆえに、そこには「チャレンジすることを恐れないチーム」が存在しているはずです。

ポストコロナにおいてチャレンジできる組織の強み、その魅力は誰しもが理解できることでしょう。
心理的安全性が確保された職場で、従業員が自由にアイデアを出し合い、ミスや失敗を恐れずに挑戦していくことで、イノベーションが促進されます。異なる視点や意見が尊重され、チームの協力と信頼が育まれ、創造性は高まり、次々と新しいアイデアや解決策が生まれていくはずです。
アフターコロナにおいて企業に必要とされるのは、そんな組織作りの土台ではないでしょうか?

TACでは、ヒューマンスキル系研修の一つとして、「チーム力を高める「心理的安全性/サイコロジカル・セーフティ」の作り方」をご提供しております。
管理職の方やチームリーダーを対象としたこの研修により、チーム内で風通しの良い、円滑なコミュニケーションがとれるようになり、一体感が生まれるようになります。また、業務のイノベーションや革新的な改善に繋がります。
チームの変化は、やがて企業全体へと広まっていくはずです。そのときに生まれるのは、次々とイノベーションを生み出す企業像であるはずです。

<参考>研修のご案内
 チーム力を高める「心理的安全性/サイコロジカル・セーフティ」の作り方

コロナ禍からの立ち直り、本当の意味でのアフターコロナを進めていくなかで、この間に入社した人材の戦力化に遅れを感じているという企業様もあることでしょう。そんな中、さらに4月から新卒者を迎え入れられ、課題が大きくなっているということもあるかもしれません。
実際に、お客様と新入社員研修についてお話しを伺うと、「新入社員の多くが、大学生活の大半をコロナ禍のなかで過ごし、授業などもオンラインが多かったせいか、対面での研修を行った際に、疑問点があったとしても、講師に直接聞きにいくことが非常に少ない」といった声を耳にします。おそらくこういったことは、OJTの現場でも同じように起こっていることでしょう。
もちろんそういった新入社員たちも、疑問点を持ち、それを解決したいという意欲はしっかりもっているため、日報などで疑問点をあげてくるとのことでしたが、よりスムーズな成長を求めるのならば、疑問点などは可能な限りその場で解決していくほうが良いはずです。

このとき、迎え入れる側の社内各部署が、心理的安全性を高めておくことができれば、新入社員もその雰囲気を察し、周囲からの働きかけから、いち早くチームへと溶け込むことができるでしょう。それは、新入社員の一早い戦力化にも寄与するはずです。
心理的安全性を高めることは、若手も含めた各員の成長機会を多数つくることにもつながります。それは会社の成長機会を増やすことにほかなりません。そして、その機会が増やすことで、活躍する人材を増やしていくことができれば、従業員エンゲージメントは高まり、離職率を引き下げることができるはずです。
そうして成り立つ会社こそ、社員から愛される会社といえるのではないでしょうか。

ぜひその第一歩として、TACに心理的安全性の確保と強化のお手伝いをさせていただければ幸甚です。

※ Google LLC『re:Work』サイト
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/identify-dynamics-of-effective-teams/

Profile
荒川 真澄
TAC株式会社 法人営業2部
第3グループ

TAC株式会社の法人営業担当として、数々の企業研修の実施や社員向け自己啓発コンテンツの提供に携わる。IT関連ならびに電気関連の資格や実務研修を中心とし、ヒューマンスキル系の研修の導入についても知識と経験を持つ。
TACが実施しているヒューマンスキル系研修については、こちらをご覧ください。
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