パワハラ防止法全面施行(2022年4月)を原点に考える企業の成長戦略

TAC株式会社 営業推進部稲葉 琢磨

2022.04.27

2020年6月に施行された、いわゆる「パワハラ防止法」(改正労働施策総合推進法)により、事業主はパワハラに対して、雇用管理上の措置義務が課せられるようになりました。
施行時は、中小企業主については努力義務とされましたが、今月(2022年4月)から、中小企業主についても義務化されましたので、現状すべての企業について、必要なパワーハラスメント対策が行われているということになります。
このコラムをお読みの人事担当者の方も、この法律の趣旨を十分に理解したうえで、社内において各種対策措置を講じておられることでしょう。

十分ご承知のことかと思いますが、厚生労働省では、パワーハラスメントを以下のように定義しています。

 

パワーハラスメントは職場において行われる ① 優越的な関係を背景とした言動 であって、② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの により、③ 労働者の就業環境が害されるもの であり、これら(①から③まで)の要素を全て満たすものをいう

厚生労働省「あかるい職場応援団」Websiteより

パワハラの概念については、以前と比べると、働く人の多くに浸透しているといえるでしょう。これは様々なメディアの力はもちろんのこと、SNSなどにより個人の発信力があがったことで、(残念ながらそのほとんどが、悪いケースのものですが)多くの事例を目にしている結果なのかもしれません。

そういったなかで、SNSなどで時折起こる、いわゆる炎上・祭り状態といったものは、人事担当者の方にとってはもちろんのこと、マネジメントの立場にいる立場の方にとって、身につまされる思い(場合によっては他人事に思えない気持ち)を感じていることでしょう。

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実はこうしたことから、過度にパワハラを意識するようになってしまい、上司として適正な業務指示や指導ができなくなったという方もいるという話を耳にします。
前述の定義の通り、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントに該当しない」とされているわけですが、こういった線引きについて、貴社のなかではきちんと理解は広まっているでしょうか?
またパワハラの定義にある「優越的な関係」とは、必ずしも「上司 → 部下」への一方通行を指すものではなく、たとえば同僚や部下であっても、業務上必要な知識や豊富な経験を有している者がそうでないものに対するような場合、また同僚や部下が集団となることで、抵抗または拒絶することが困難になっている場合などでは、パワハラに該当する場合があります。
こういった点については、人事担当者の皆様はしっかりと理解されているとは思いますが、社内での理解はどうでしょうか?

いうまでもないことですが、きちんとしたハラスメント対策が行われている企業では、労働者がのびのびと働くことができる環境が構築されて、その結果として生産性が向上するといえるでしょう。
しかし、本質的な部分を理解しないまま「パワハラ」という言葉尻だけを捉えて、各自がそれぞれの知識で対策しているということでは、本当の意味での「のびのびと働くことができる環境」とはいえません。むしろ、せっかくの「パワハラ防止法」が、かえって企業の成長の足かせになる可能性だってあるはずです。

だからこそ、この「パワハラ防止法」が完全施行となった2022年4月を原点に、あらためてパワハラとパワハラ防止法の意味をしっかり理解する人を、企業内に増やしていくことが重要になってくるといえます。

前述の厚生労働省「あかるい職場応援団」Websiteでは、職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)、いじめ・嫌がらせ問題の予防・解決に向けた情報提供のためのポータルサイトとして、さまざまな情報を発信するとともに、数々の役立つ資料を提供してくれています。

厚生労働省「あかるい職場応援団」Website厚生労働省「あかるい職場応援団」▶ https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/

こういったものを活用し、改めて企業内においてパワハラとパワハラ防止法の意義を浸透させていくと良いでしょう。

とはいえ、人事担当以外の方にとっては、資料を読むだけではなかなか汲み取れないということが、少なくありません。読みやすく工夫されていても、法律をもとにした文章を読むことは、やはり難しいものです。
また理解を深めるための事例紹介も、自社の業務に基づいたものであったり、イメージが近いものでなければ内容がつかめず、かえって混乱してしまうことだってあるでしょう。
なにより、目の前の業務を優先するあまり、(残念ながら)せっかくの資料を脇に置いてそのままにしてしまう、ということだってあるはずです。そうなれば、理解はいっこうに進まず、また誤った理解(誤解)が生じてしまう可能性もあります。
やはり、しっかりとした解説を目で見て、耳で聴いて、自分たちで考えることで、知識をつけることが最良だといえます。

もし、そういった点での理解が必要ということであれば、ぜひTACの研修にお任せください。
TACではパワハラを含むハラスメント防止の重要性、ハラスメントが起こった場合の企業へのリスク、影響について学び、ハラスメント防止への意識を高める各種研修をご提供しております。
とくにポイントとなるのが、経験豊富な講師が、様々な事例を含めたハラスメントの最新事情の解説を行うことです。これにより、現場で起こりうるケースを想定し、ご自身であればどのように考え行動するか、体感することが可能です。

<おすすめ研修のご案内>
 ハラスメントの最新動向から学ぶ管理職のためのハラスメント防止対策研修
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ご承知の通り、パワハラ防止法には企業に対する罰金や営業停止措置といった法律上の罰則はありませんが、もし十分な対策を怠った場合には、損害賠償責任を問われる可能性もあります。
なにより、厚生労働省から勧告を受け、社名とともにパワハラの事実や内容を公表されるようなことにでもなれば、企業価値が著しく損なわれることにもなりかねません。
そして、本質的なパワハラの理解が進まなければ、企業の成長が損なわれることだってありうるのです。

この2022年4月というタイミングをきっかけに、人事担当者の皆様がお持ちの知識と、意識を企業内に広めていってください。その考え方を企業文化にまで落とし込むことで、従業員が安心して働ける場を築き、企業の成長をはかっていっていただきたいと思います。

そしてそのお手伝いを、ぜひTACにお任せいただきたい、そう考えています。

【参考コラム】パワハラ防止法施行に向けて考えるべきこと
 公認心理師・臨床心理士・シニア産業カウンセラー 尾﨑 健一 氏
 https://www.tac.biz/column/powerharassment2006/

Profile
稲葉 琢磨
TAC株式会社 営業推進部

TAC株式会社の行う法人研修のうち、ヒューマンスキル系研修の企画・運営ほか全般を担当。
TACが実施しているヒューマンスキル系研修については、こちらをご覧ください。⇒TACのヒューマンスキル系研修

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