ITスキルとは?ITSSやスキルマップの活用法を解説

2030年に最大79万人の不足が懸念されている「IT人材」。
多くの企業が頭を悩ませているIT人材不足に対応するためには、ITに関する正確な知識や技術を持つ人材を社内に創出していく必要があります。
この記事ではIT人材に求められるスキルとともに、ITスキルを可視化するITSS(ITスキル標準)やスキルマップの活用法についてわかりやすく解説します。
ITスキルとはIT(Information Technology/情報技術)に関する知識や技能のことです。
IT人材に必要なスキルには、プログラミングやネットワーク、セキュリティなどに関するハードスキルだけでなく、論理的思考力やコミュニケーション能力、コンサルティング能力などのソフトスキルもあります。
単に技術的なスキルだけでなく、仕事をするうえでのベースとなる非技術的なスキルの高さも重要となります。
IT人材に求められるハードスキルには以下のようなものがあります。
IT人材には、LAN(ローカルエリアネットワーク)やWAN(ワイドエリアネットワーク)、インターネットなどの接続・設定をおこなうスキルも求められます。インターネットを介したビジネスが当たり前となり、そこで新たなビジネスや市場をつくる動きも活発化するなか、ネットワークを整備できる知識・スキルの需要が高まっています。
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自社が保有する情報資産をサイバー攻撃から守るためには、セキュリティに関する知識・スキルが不可欠です。セキュリティ対策の導入や管理、サイバー攻撃への対処をおこなうにあたっては、ネットワークやサーバー、クラウドなど多岐にわたる高度な知識・スキルが求められます。
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IT人材に求められるソフトスキルには以下のようなものがあります。
論理的思考力(ロジカルシンキング)とは、複雑な問題を体系化し、矛盾のない筋道を立てる思考法です。
現状を把握して適切な解決策を導くために必須となるスキルで、IT領域においてはプログラミングやシステム設計、プロジェクトマネジメント、障害発生時などさまざまな場面で活用できます。
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チームでの協力や顧客との調整など、円滑に業務を遂行するためにはコミュニケーション能力が必要です。相手の要望を的確にくみ取り、自分の意見や提案をわかりやすく伝えることで、相手との信頼関係を構築できます。
IT人材に限らず、すべてのビジネスパーソンが身につけるべきスキルといえます。
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IT人材に必要なコンサルティング能力とは、ヒアリングを通じて顧客の課題を理解し、課題解決に貢献する最適なソリューションを提案できる力です。
コンサルティング能力が高いIT人材は、論理的思考力やコミュニケーション能力にも優れており、自社の技術やサービスから最適な提案をおこなうことができます。
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マネジメント能力は、プロジェクト統括やチーム運営をおこなう際に必須のスキルとなります。
具体的には、プロジェクトの進捗やリソースの把握、予算の管理、メンバーへの業務分担、フォローなどをおこないます。
メンバーに対して適切な「報告・連絡・相談」を促し、メンバーやチームの状態を正しく把握することが重要です。
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IT人材に必要なスキルとして、AI(人工知能)などの最新技術に関する豊富な知見も挙げられます。
進化し続けるIT動向を注視し、継続的な学習のなかで最新技術の理解を深め、効果的に活用する方法を学んでいきます。
常にアンテナを張って知識をアップデートし、学んだ内容を実務に活かすことで、業務効率化や生産性の向上、コストの削減などにつなげることができます。
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IT人材を育成・活用するうえで必要となるのが「スキルの可視化」です。
従業員のITスキルを正確に把握することで、一人ひとりのスキルレベルに合った適切な教育プログラムを提供できるようになり、教育施策の効果・価値が向上します。
また、従業員本人が自らの強みや弱みを認識できるため、自身のスキルアップ・キャリアアップに向けた自発的な努力を促すことにもつながります。
ITSS(ITスキル標準)とは、経済産業省が策定したIT人材に必要なスキルを体系化した指標のことです。
スキルに基づき7段階のレベルと11の職種に分け、IT関連サービスの提供に必要とされる知識と技術を明確にしています。
ITSS(ITスキル標準)では、ITのプロとして高い価値を創出するために必要なITスキルを7段階のレベルで設定し、エントリレベルからハイレベルにいたるキャリアパスを明示しています。
ここでいう「スキル」とは業務課題を解決できる「実務能力」を指し、ハードスキル・ソフトスキルの両方が重要となります。
ITSS(ITスキル標準)では、IT関連の職種を11種類に分類し、さらに35の専門分野に細分化しています。
それぞれの専門分野に対して7段階のレベルを規定しており、IT領域におけるキャリアパスを設計しやすくしています。
ITSS(ITスキル標準)では、ITパスポートや基本情報技術者、応用情報技術者などの認定資格を設けています。
これらの資格を取得することで、IT人材として必要なスキルレベルがあることを証明できます。
ITパスポートは、ITと経営全般に関する基礎的な知識を証明する資格です。
試験ではストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系の3分野から出題され、IT以外にも幅広い分野の総合的知識が問われます。
情報処理技術者試験のなかでは「レベル1」に位置し、IT業界への入門資格として広く認知されており、ビジネスパーソンとして必要な基礎的能力が身についていることを証明できます。
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基本情報技術者は、IT人材としての基礎的な知識・技術を証明する資格です。
情報処理技術者試験のなかでは「レベル2」に位置し、ITエンジニアの登竜門として知られています。
2023年4月から通年試験化され、受験者が都合のよい日時を指定して受験できるようになりました。
関連プログラム:基本情報技術者 試験対策
応用情報技術者は、高度IT人材としての応用的な知識・技術を証明する資格です。
情報処理技術者試験のなかでは「レベル3」に位置し、IT人材としてさらなるレベルアップを図りたい方に向いています。
幅広い知識と応用力を問われる難易度の高い資格であり、資格手当や報奨金の対象としている企業もあります。
関連プログラム:応用情報技術者 試験対策
ITスキルの可視化にはスキルマップを活用する方法もあります。
スキルマップとは、従業員の業務内容に関するスキルを可視化するツールです。
評価結果をもとに不足する能力や技能を把握し、従業員の教育計画やキャリア開発に役立てることができます。業務内容や人員配置などの変化に合わせて定期的な更新をおこない、従業員の成長を記録し続けることが大切です。
まずは業務を遂行するうえで必要なスキルをリストアップし、各スキルの評価基準(どのくらい習得できているか)を決めておきます。
次に、設定した基準に従って従業員のスキルを評価し、それをマップに反映させて可視化できる状態にします。
スキルマップの作成には、厚生労働省の「職業能力評価シート」を活用できます。
IT分野で活躍できる人材を育成するには、ITSS(ITスキル標準)のレベル評価を参考に今後のキャリアパスを明示しつつ、作成したスキルマップをもとに適切な育成体制を構築します。
企業内研修や外部セミナーを取り入れ、実務で活用できる実践的なスキルを身につけさせることが重要です。
CompTIA(コンプティア)認定資格は、IT業界で世界的に認知されているグローバル基準の資格です。
この資格は、特定のITベンダーに依存せず、基礎的なITスキルから高度な専門知識まで幅広く網羅している点が特徴です。
基本的な「CompTIA A+」をはじめ、ネットワークに関する「CompTIA Network+」、サイバーセキュリティに特化した「CompTIA Security+」、サーバの構築・管理・運用に必要なスキルを評価する「CompTIA Server+」など、さまざまな資格が用意されています。
ベンダーフリーの特性により、幅広い業界や職種で活用でき、ITキャリアの基盤として役立ちます。
資格取得によってキャリアアップや転職がしやすくなるため、ITスキルを向上させるための有用な資格といえるでしょう。
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IT人材に必要なスキルは多岐にわたり、プログラミングやネットワーク整備といったハードスキルのほか、コミュニケーション能力やマネジメント能力などのソフトスキルも求められます。
人材育成においては、ITSS(ITスキル標準)やスキルマップを活用して従業員のスキルを体系的に整理し、一人ひとりに合った教育計画を立てることが大切です。
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