【人事担当者を元気にするコラム Vol.7】「鏡は先に笑いません」メンター金平敬之助さんからのメッセージ

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2020.05.22

人生において3人のメンターにめぐりあえたら、その人生は幸せであるといわれます。今日は私のメンターのお一人、金平敬之助さんのお話しをしたいと思います。
金平敬之助さんは住友生命保険相互会社の常務取締役まで勤められ、その後、関連会社であるスミセイ・リース株式会社の社長職、そして会長職を務められた方です。

とても穏やかで、優しく、あの厳しい生命保険業界にいて、なぜこれほどまでに暖かい方がいたのだろうと感じるほど、素敵なお人柄の方です。
おだやかな笑顔と、そのお人柄、一緒にいるだけで、心が軽やかになるような空気感をお持ちの方でした。

金平さんの奥様は、小学校からの同級生であった、みどりさん。奥様を誰よりも愛している金平さんだけに、基本的に夜の席は一切なし。いつもランチで謦咳(けいがい)に触れさせていただいていました。

金平さんからは夜の食事だと「みどりはなにを食べているんだろう? どうしているんだろう?」といつも考えてしまい、楽しく過ごせないのだと聞いたことがあります。
当時はまだ携帯電話などないころでしたので、街中で緑の公衆電話を見つけると、すぐ奥様を思い出し、電話してしまうという、とても微笑ましい愛妻家で、ご主人の見本のような方だったように思います。

金平さんがスミセイ・リース会長だったころ、営業で新宿近くまでいった折にオフィスにおじゃまして、そのまま、近くのお寿司屋さんでごちそうになり、様々なことを教えていただきました。とてもいい時間を過ごしていました。
素敵な方と過ごす時間はまさに宝物ですよね。

金平さんから、こんなことを言われたことがあります。
「山本さんは、すてきなお人柄ですね。どのようなご両親から、どのような育て方をされたら、あなたのような素敵な方になるのでしょうか?」と。

「実は、私の父はとても厳しかったんです」と答えると、意外な表情をされていたことを思い出します。父からは男としていかに生きていくかという厳しさを教わったと感じています。ベースには深い愛情と優しさがありましたが、小さい頃は厳しさのみが全面にでていたような気がします。

みなさん、『巨人の星』というスポコン漫画の登場人物、星一徹をご存知でしょうか?

主人公の星飛雄馬のお父さんですが、まさにそのイメージです。一徹が飛雄馬を怒るときのシーンなどは、すごく重なりましたね(ちゃぶ台はひっくり返しませんでしたが)。巨人の星をみながら、飛雄馬が父親から鍛えられる姿に共感していたことを思い出します。もちろん説教は野球のことではなく、生き方や人生についてのものでしたが、とても厳しい父親でした。
今ではとても感謝していますが、当時はよく、涙で枕をぬらしたものです。

そんな父がよく言っていた言葉を、今も時々思い出します。

「一寸先は、あかりだよ」(決して闇ではないんですね)
「まてしばし、而して、希望せよ」(いつも希望を持てと)
「これでいいのか、この私」(もう一人の私が常に私をみていろという教え)
「鶏頭となるも牛後となるなかれ」
「人間、ひがんだらおしまいだよ。素直が一番」(何回も言われましたね)
「葬儀はなんのためにあるか? 故人を偲び、死を見つめることで生の大切さに改めて気づく機会だ。死をみつめた者ほど生が強くなるのだ」(これは古代ローマの政治家にして思想家、セネカの死生観からですね)

こんな会話が食事中ポンポンとでていました。
様々な言葉が伝えられ、言霊となり、今の私を形成していることはまちがいありません。

メンターの金平さんからは、本が出版されるたびに、自宅へ手紙とともにサイン入りの著書が送られてきました。その手紙は受け取った人に負担をかけない見事なものでした。
私も将来、自分の書いた本をプレゼントする際に、気をつけていきたいと考えています。しっかりイメージをしています。

金平さんのすてきな本は『言葉のごちそう』(東洋経済新報社)からはじまりましたが、初めてその『言葉のごちそう』を帰宅途中の車内で読んだとき、自然と涙があふれでて、「本を読みながら涙する」不思議な男性になっていたと思います。

第3回目のコラムでご紹介させていただいた新将命さんと金平敬之助さんとの定期ランチ会がありました。私からご縁をつながせていただきましたが、お互いにとても気が合っていたことを思い出します。内容はまるで、本を何冊か読んでいるかのように充実したもので、そのランチタイムはまさに至福の時。食事しながらメモをしまくっていたことを思い出します。

そんな金平さんの6冊目の本が、『鏡は先に笑いません』(東洋経済新報社)というタイトルなのです。

さて、鏡に映ったご自身の姿はいかがでしょうか?
元気にしていますか? さわやかな表情ですか?
鏡に映った自分と自分自身とどちらが先に笑いますか?
鏡の中の自分から先に笑っていたらこわいですよね。

まず、自分自身が笑って、それが鏡に映し出されて、瞬時に自分自身が認識するという順番ですよね。まさに当たり前のことです。

でも、鏡が他人だとしたら、どうですか?
鏡という他人が笑ってきてから笑いますか? それとも自ら微笑んでいますか?

笑顔とあいさつは先手必勝といわれています。自分の年齢、ポジションとかは関係なく、自ら行うことが大切ですね。
時々「(あいさつは)上職者からするものではない」という謎のポリシーのもと、下の方から言われるのを待っている人がいますが、鏡から笑いかけるのを待っているようなものです。まず自分から笑いかけましょう。

笑顔は世界共通言語だと、いつも感じています。

スペイン語、英語、フランス語、様々な言語はありますが、笑顔の輝きはまさに世界共通。私も食料海外事業部時代、いろいろな国を訪ねるなかで、笑顔は共通して素晴らしいものだと感じていました。笑顔の嫌いな人ってまずいないですよね。「素敵な笑顔教」というものがあってもいいと思いませんか?

これからの時代、笑顔はさらに重要になると思います。

同じ言葉、メッセージを発していくのにも、笑顔で伝えるのと、ムスっとして伝えるのとでは、そもそも伝わり方が違います。
言葉には力や生きる息吹がのっていくように感じるのは、私だけでしょうか?

全員とはいいませんが、欧米人の方が笑顔や表情の豊かな人が多いように感じます。私の知人の米国人は、机の中にいつも鏡をいれて、笑顔をつくる練習をしていました。笑顔の効用を知っているのでしょう。

また英国との合弁会社にいた頃の部下のジム。彼は米国人ですが、パスポートをみせてもらうとその写真、なんと笑顔で、さらに歯がでている。日本のパスポートはたしかダメだと思いますが、ジムのパスポートの写真はブロマイドみたいで、「いいでしょう? これっ」といったジムのキラキラした笑顔は忘れられません。
ジムは、マーケティングの最高峰、ノースウェスタン大学の卒業生で、ケロッグ(ノースウェスタン大学の愛称)の帽子をよくかぶっていて、陽気でしたね。
米国人もいろいろですが、この明るさ、オープンマインドは少し学んでもいいかもしれませんね。

ところで「男性45歳不機嫌説」という言葉をご存知ですか?
明治大学教授の斎藤孝先生からお聞きした、最新の理論です。

男性は45歳を超えると、ふつうにしていても、不機嫌に見えるという説です。
いえてると思いませんか?
どうですか? あなたの会社の窓側にすわっている方々、やや不機嫌そうにみえることはありませんか? 実は普通なんですよ。
45歳を超えている男性陣、気をつけましょう。不機嫌にみられていますよ。
つまり、笑って普通の表情なのですから。笑顔にみられるためには、もっと笑って、口角を挙げて、にこっとしなければならないのです。笑顔にみえないんですよ。

逆に女性は、45歳を超えた男性が不機嫌そうでも臆することはありませんよ。
それはただ、普通の状態なのですから……。

上司の方で、メンバーが自分のところへ話に来ない。相談にもこない! そんなあなた! 実は、顔がこわいのかもしれませんね。笑顔づくり、練習しましょう!
これからコミュニケーションをよくしていこうとするのなら、話しやすい雰囲気づくりはとても大切であり、義務ともいえるでしょう。そのための笑顔づくりはリーダーに必須だと思います

「デュシェンヌ・スマイル」という言葉があります。
これは本物の笑顔といわれている表情のことで、フランスの精神内科医デュシェンヌが発見したといわれています。
幸せが純粋に顔全体に表われる表情のレベルであり、この笑顔度数が高い方ほど、心理的にも安定し、幸福感も満足感も高くなっていて、寿命にも影響がでているそうです。まさに「笑う門には福来る」をデータで示したものなんです。

「笑顔で接する」というのは当たり前のようで、実は結構ハードルが高い。たとえば家を出る前に、奥様と軽くいいあいをしてしまい、その波動のまま、会社にいくと、まさにムスっとした表情そのものになりがちです。リーダーの皆さん、部や課の雰囲気はその上司にひっぱられてしまうものです。困るのはメンバーですぞ。気をつけましょう。メンバーにはまったくご家庭の出来事は関係ありませんからね。

笑顔を自分でつくっていくことこそ、自分にできること。
自分の機嫌を自分で決めることです。自分の心の天気は自分で決めていきましょう!!「今日も快晴だ!」

楽しいから笑うのではない、笑うから楽しいんだ。
悲しいから泣くのではない、泣くから悲しいんだ。 といわれます。

まず、決めましょう!! 今日一日、笑顔で過ごすことを……
鏡は先に笑いませんから。


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。
資格としては、GCDF-Japanキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

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