【人事担当者を元気にするコラム Vol.6】「ローカル電車」と「新幹線」、今のあなたはどちらですか?

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2020.04.24

「ローカル電車」と「新幹線」、今のあなたはどちらですか?

新幹線、いいですよね。かっこよくて速くて。東京-新大阪間は最短で、なんと2時間22分で着いてしまうそうです。すごい速さですね。
スピードという点では最高! いうことなしです。

新幹線

とはいえ新幹線の窓は開きません。鳥のさえずりは聞こえない。川のせせらぎや、自然の息吹などを感じることはできないですよね。
それに途中下車したいと思っても、次の駅はもう名古屋だったりする。気づいてもどうしようもない。でもそれが新幹線です。

「当たり前じゃん」という声が聞こえそうですね。
でもその当たり前の中には、なにかを得るために、なにかを失っていることに思いをよせる心はありませんね。

見方を変えると、新幹線はスピードという面を得るために、鳥のさえずりや、川のせせらぎ、自然の息吹には目をつぶる。これはある面で、様々なことを失っているといえるかもしれません。

では、ローカル電車の方はどうでしょう?

ローカル電車

窓をあければさわやかな風。気に入ったところで途中下車もできる。降りた駅で見つけた川のほとりに腰をかけて、花をみながら、鳥のさえずりを聞きながら、お弁当を食べることもできますね。
いいですねえ。心ものびやかですね。ただし時間はたっぷりかかってしまう。
ある面で、時間を犠牲にしているともいえるでしょう。

人生を考えていく中で、もっとも大切なことは、自分の人生の中で、今、新幹線とローカル電車のどちらに乗っている状態なのかをしっかり見分けることだといえるでしょう。
それぞれの状況をうらやましがってはいけない。ひがんではいけない。比較してはいけない。自分をしっかりとみつめて、今はどちらなのか、どちらに乗っているのかということに気づくことが大切なのではないでしょうか? あるいはそのことに思いをよせるという感覚が大切なのかもしれません。

自分自身が人生という枠の中で、新幹線に乗るかのように、走っていいかなければならないときもあるでしょう。時間を最優先にして、たとえ犠牲をだしたとしても…。ただし、その時に必要なことは、今、新幹線に乗っているんだということを認識すること、今の自分の立ち位置をしっかり認識しながら行動すること、つまり、自分自身を決して見失わないことだと思います。

私たちは人生の中で、様々な場面に遭遇することになります。
以前、このコラムでお話したことがありましたが、私は英国との合弁会社に勤務していました。そのときの私は、完全にローカル電車に乗っていた状態だったと思います。本社のメンバーからは、「ああ、山本ちゃん、中心事業から離れたなあ」と思われていたことでしょう。その状態は、まさに川のほとりに腰をおろし、花の香りをかぎながら、お弁当を食べていた時期だったのだと、あとになって感じています。虫の音や鳥のさえずりを聞きながら、空を見上げていた時でもあったと思います。

もしかすると、人生の中で大切なのは、ローカル電車に乗っているような感覚の時なのかもしれませんね。そして、そのつらい時期にこそ、実は、人間的に最も成長するような気がします。ですから、その時に、決してがっかりする必要はないし、ましてや新幹線をうらやましがる必要など全くないと思います。大切なことは、そのローカル電車に乗っているときに、できることにフォーカスし、その状態を楽しむことです。他人の価値観や見方に影響される必要は全くない。その時を楽しむ、楽しむ、楽しむ。

大切なのは「今ここ」、つまり今ここでなにができるのか? なにが自分にとって大切なのかをしっかりみていくことです。うらやましがることはないのです。
英語で現在のことをPresentといいますよね。「今」つまり「現在」は神様からの贈り物かもしれません。そして最も避けなければいけないことは、そのプレゼントをいただいているときに、他と比較してしまうこと。比較の中に幸せはありません。
ある方が言っていました。決してこの米国人のようになってはいけませんよと。
その方こそ、ジョージ・クラベル氏(常時・比べる)です(笑)。
これは避けましょう。

現代は「人生100年時代」と言われています。そんな長い人生の中で、いろいろな出来事に出会うと思います。その中にあって、キャリア的な考え方がとても重要になってきていると感じています。

ご存じでしたか? キャリアの語源は、馬車などが通ったあとにできる車輪の跡である「轍(わだち)」からきています。

木々の間に残る轍

今の自分はどこからきて、どこへ行くのか、その軌跡としての轍をいかにクリエイトしていくか、これがキャリアを考えていくことにつながります。
以前はキャリアというと、なにやら転職のための動きとか、ツールのようにとらえられていた時期もあったように記憶しています。
今、会社によっては、キャリアサポート室やキャリアカウンセラー室といったものを設置して、単なる会社のワクを超えて、人生という意味から、社員のキャリア形成をサポートしている会社も増えているようです。今後は、キャリア思考の役割が大きくなっていくことでしょう。

キャリアを考えていく中で、最近の一つのトレンドは、「あなたは誰ですか?」という問いかけだと思っています。
もし、みなさんが「あなたは誰ですか?」と聞かれたらなんと答えますか?

この問いはある面、ミッションへの問いかけともいえるでしょう。
「あなたのミッションはなんですか?」言葉をかえれば、「何のためにこの世に生を受けたのですか?」ということになります。

ミッション(使命)という言葉は、日本人にはやや弱い考え方、思想と感じられるかもしれませんね。宗教上の理由もあるかもしれませんが、私が過去にビジネスで出会った米国人などは、自分のミッションをスラスラ語る場面が多々あったように思います。
「ミッション」これからの人生の中、とても大切な言語と感じています。

私はこのミッションを感じさせる映画に出会ったことがあります。それはディズニー映画、「ライオン・キング」です。みなさんはご覧になりましたか?
これは決して、子どもだけのためのアニメではありませんよ。お薦めです!

ある出来事で、動物たちの王国(プライドランド)を追われたシンバという名の子ライオン。実はムファサ(ジャングルの王)の子なのです。将来は、ジャングルの王として君臨するはずだったが、ある事件によりプライドランドを追われることに。その後はイノシシなどとたわむれ、自分自身を見失った日々がつづく。将来のジャングルの王の面影もなく、歌ったり、遊んだり、その日、その日を楽しく過ごしていればいいという日々を過ごしていました。気づけば自分が何者かということもすっかり忘れて…。
そんなある日、湖で水を飲もうとして、湖面に映った自分の姿をみます。気づけばたてがみもしっかりとし、すっかり大人に成長していた自分は、父ムファサと同じ姿に。その時に天からの声が聞こえる。「自分自身を思い出せ。シンバ」お父様のムファサからの声。その声で、自分自身を取り戻し、過去の想いを取り除き、勇気をもって過去に打ち勝つと、プライドランドに戻り、ジャングルの王者として、過去の王、父・ムファサのように君臨していくという物語です。

湖に映った自分の姿をみて、自分自身に気づく場面に私はアイデンティティの大切さを感じます。
「あなたは誰ですか?」湖面に浮かぶ姿をみたとき、その答えをシンバが自ら見つけた瞬間を思い出します。

ニューヨークへ出張した時、ブロードウエイのミュージカルでもこのライオン・キングを観ましたが、その瞬間に鳥肌が立つ思いがしたことを思い出します。自分自身を知るということが、どれだけ大切なことか…。
キャリアを考えていく中でも、自分の状況をしっかり把握して、自分らしく生きていくことが、とても大切なことになってきます。

もしあなたが、今、ローカル電車に乗っている環境であれば、その時に感じられるもの、学べるものをしっかり身につければいいと決めましょう。自然への優しさやおだやかに生きる心、他の方々への思いやりなどもきっと学べるでしょう。焦らない、焦らない。だって、100歳まで生きてしまうのだから…。
そして、もしもまた新幹線に乗る環境になったら、迷わず思いっきり走ればいいのです。やるべきことにフォーカスして、しっかり走っていけばいい。
自分の状況をしっかり把握して、自分らしく生きることが一番大切なことだと感じます。

詩人のホイットマンは言っています。
「寒さに震えた者ほど、太陽の暖かさを感じる。人生の悩みをくぐった者ほど生命の尊さを知る」と(代表作である『草の葉』より)。

どんなときでも、その場の、そしてその時の自分がフォーカスできるものにシフトしていくことが大切です。同時に忘れていけないことは、私たちは70億人の中のたった一人だということです。世界中どこにいっても自分という存在は一人しかいないということ、しっかり心にとめることです。「私が私であること」なんて価値があり、素晴らしいことでしょう。

さあ、みなさんは今、どちらに乗っているのでしょうか? 新幹線、それともローカル線? いずれにしてもエンジョイしていきましょう!!

最後に学生時代、第二外国語で学んだドイツ語で唯一覚えている言葉をお伝えします。
Das Leben ist doch schön! (人生はそれでもなお、美しい)


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。 40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。 資格としては、GCDFキャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

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