【人事担当者を元気にするコラム Vol.3】ネットワークはフットワークから ~メンターとの出会いを求めて~

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2020.01.24

これからのビジネスパーソンにとって、外部でのネットワークというものがとても貴重になるでしょう。お昼は社員食堂、夜は同僚や先輩と飲み会、土日は会社のメンバーでゴルフ。決して悪いというわけではありませんが、これでは新しい感性が生まれにくい環境といえるかもしれませんね。
社内の関係はもちろん大切ですが、それと同じか、むしろそれ以上に大切なのが、会社を離れての関係性をどこまでもっているかということであり、それがこれからのあなた自身の成長にとって、大きなポイントになると思います。

たとえば、銀行員の方が金融の世界だけで過ごすというのは、一見、最短距離を進んでいるように見えますが、人間の幅という観点からは、実はかけ離れていることも多いと思います。
哲学者・思想家であり、政財界に多くの信奉者がいたとされる安岡正篤は「できるだけ生活内容を異にした友達に交際をもつ。一見、自分たちの生活や仕事に関係のないようなことでも興味をもち、注意をしてこれに接する。つまり、なるべく広く味のある、変化に富んだ良い交友を豊かにもつという心がけが大切」と言っています(講演の口述記録がまとめられた書籍『活眼 活学(PHP研究所)』より)。

英語のケミストリー(chemistry)は、「化学変化」や「化学現象」という意味ですが、そのほかにも「相性」という意味を持っています。つまり人間関係は、化学変化を起こしていくものだということでしょう。
では自分自身でどのような化学変化を起こしていくのか、異なる業界のセミナーや勉強会などで、新しい出会いを求めることもその一つです。また、いつもの帰り道で、違う道を通ってみたり、いつも降りる駅の一つ手前の駅でおりて、歩いてみたりするといったことなど、「いつも」を少しでも変えることで、新たな発見もあることと思います。

自ら求めていかないと、コンフォートゾーンにどっぶりつかってしまいます。
コンフォートゾーンとは快適なゾーン、つまり現状のままのゾーンということになります。このコンフォートゾーンを広げていくことが、自分の世界を大きく広げていくことになるのです。

では、どのようにコンフォートゾーンを広げていけば良いのでしょうか?
ちょっと背伸びをしてみる、自分よりもポジションや年齢のやや上の会合などに積極的に参加していく。はじめのうちはきっと、やや窮屈な感じがするでしょう。違和感バリバリって感覚かもしれませんが、継続していくことで、慣れと自分自身の成長があいまって、いつしか心地よく感じる日がきます。
この時こそ、コンフォートゾーンの広がった瞬間、自分の世界観が大きく変化したときなのです。継続は力なり、何人かの仲間とチャレンジしていけば自分の枠を超えていくことができます。
そして、その時もまずフットワークが大切なのです。
億劫がらない、めんどうくさがらない。あと一歩、あと一人とお会いしていく。
とにかく行動、やってみる。そして考える。その軽いフットワークがネットワーク拡大に役立ちます。

ネットワークの広がりは、自分の世界をひろげ、新しい世界へといざなってくれます。結果として、自分自身が新しい世界に入ることができるのです。別の言い方をすれば、まだ見ぬ新しい自分に出会うことも可能になります。新しい自分との出会いのためのフットワーク、そしてその果実としてのネットワークが未来を拓いていきます。

「人脈」という言い方もいいのですが、やや相手を利用しているようなイメージが残るのは、私だけでしょうか?
「人脈」のことを「自分自身のネットワーク」とすると、心が軽くなったような感じがします。「人脈をひろげよう」よりも「ネットワークを拡大しよう」という言葉の方が響きもよく、のびやかさを感じませんか?

さあ、どの世界に広げていきますか?
まずは自分が広げていきたいと感じることから始まります。

ヘレン・ケラーはこう言っています。
「この世で一番あわれなのは、目がみえていても未来のビジョン、夢が見えていない人だ」と。

ネットワークをつくるにあたっても、まずは自分の目指すビジョンが必要だということです。なぜネットワークをもちたいのか? 自分なりの答えをもつことが必要になってきます。
そのうえでGIVE & TAKEではなく、GIVE & GIVEN、与えて、与えられるって感覚がとても大切に思います。まず与えていきましょう。
果実の収穫はそのあとです。利用しようと思うのではなく、お互いに励まし、活用しようと考えましょう。
きっとあなたに手を差し伸べてくれる方が現れます。

人脈やコネに対して、マイナスイメージを持つ方がいますが、それは違うかもしれません。私の尊敬する慶應義塾大学の名誉教授ならぬ名物教授だった村田昭治先生はこう言っていました。
「コネは悪いものではない。コネは情の蓄積である。コネがないと言っている人
 は他の人への情がなく生きてきた人だ」と

また人と会うときには、ただ会うのではなく、「にじりよれ」とも言っていました。若い時は出世したいと思うことだろう、だが人と会うときは肩書がない方が身軽で、最も会いやすいんだ。どんどん会いに行け。弁当もっていろんな人に会いにいけ」と。

ある経営者の方からこう聞いたことがあります。
「若いみなさんは、人生の成功者からいろいろ聞きたいと思っていることでしょう。実は、その思い以上に、成功した経営者の方々は、若者たちが純粋になにを考えているかを知りたがっている」と。

私自身もそれを聞き、「お会いいただくことは、自分にとってプラスになるだけでなく、お会いする経営者の方にも有益なんだ」と理解したときから、多くの経営者に会う際に臆することがなくなったように感じています。
ただ、そのためには本を読んだり、学んだりすることが大切です。初めてお会いするときは、ある面で、剣の達人に指南をうけるようなものですから、ある程度「おぬし、できるな」と感じられることも必要になってくることでしょう。それは、学び続けることでクリアできる資質だと感じています。

またネットワークという範疇を超えたものにはなりますが、人生を最も彩るのは、メンターとの出会い、めぐり逢いだと思います。
「みなさん、メンターとめぐりあっていますか?」「メンターとの出会いを求めていますか?」

私は28歳のときに、メンターである新 将命さんとの出会いがありました。
今もおつきあいいただき、人生のご指導を受けており、最も尊敬している方です。ジョンソン・エンド・ジョンソン社、フィリップス社などエクセレントカンパニーで社長職を務められ、伝説の外資トップといわれ、多くの方から慕われています。

新さんとの出会いは『「できる人材」になるための50の法則 : 自己実現をはかる人生戦略とは(PHP研究所)』という一冊の本でした。私はこれを毎日持ち歩き、ぼろぼろになるまで読みぬきました。そうしていくうちに、この方はどんな表情で、どんな話し方で、どんな方なんだろう、どうしても会いたい!! という思いが強くなり、手紙を書いたのです。ある面、ラブレターのようだった記憶があります。勇気をもって投函すると、すぐに返事をいただくことができました。電話番号が記載されていたので、緊張しながらすぐに電話をすると、ホテルオークラで講演会があるので、その前なら時間があるとうかがいました。
ホテルオークラのラウンジにいくと、新さんがいらっしゃいました。
憧れの方と会うので本当にどきどきし、1時間ほどお話をうかがいました。それはとても刺激的で、人生が大きく変化すると感じた一日になりました。
それからも様々な勉強会でお目にかかったり、個人的にご指導をいただいたりしています。新さんのようなメンターにお会いすることができ、そしてご指導していただけることは、人生で最高の幸せだと感じています。

30年を超えておつきあいさせていただいていますが、宝物のような時間です。
勇気をもって行動することにより、自分自身の人生を大きく好転させた瞬間でした。

山本氏の宝物
▲  ぼろぼろになるまで読みぬいた新 将命さんのご著書と
   いただいたハガキ、そしてメモ

人生で3人のメンターにめぐりあえたら人生は、とても幸せだといわれます。
このメンターは自ら求めるものです。
求めない限り、お会いしても気づかずに、目の前を通過してしまうものだと思います。まさに「運命の女神には、前髪しかないのです」

私たちが成長していくためにも、メンターとの出会いをぜひ求めていただきたいと考えています。そしてメンターとの出会いを実現するためにも、フットワークよくすることが大切です。
「この日はどうかな?」と言われたら、もうノーチョイス!「行きます!」
メンターとなっていただけるような方は、基本的にとても忙しいのですから。優先順位を一気にあげてお会いしないと、そんな機会は2度とないかもしれません。
その場でしっかりチャンスをつかむこと、この感覚は嗅覚に近いようなものがありますが、ネットワークを拡大するためにもとても大切なものに思えます。
「ネットワークはフットワークから」ぜひおすすめの行動パターンです

また、私はいろいろな作家や経営者とお会いし、いろいろな学びを得たことがあります。そうそう、作家とお会いするコツもあります。そのコツは……またお会いした時に……。

実はこの終わり方は、今、最もチケットの取りにくい講談師、神田松之丞さんから学んだ終わり方なんです。
「これから、いよいよクライマックス~~! いいところですが、なっなんと!なんと! お時間がいっぱい、いっぱい。この続きはまた次回で~」って感じでしょうか?
ネットワークはフットワークからのメッセージは皆様にとどきましたか?
フットワークよく活動し、自分自身のネットワークをひろげてみませんか?


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。
資格としては、GCDF-Japanキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

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