コラム
スターチス税理士法人
公認会計士
2026.11.05
11月に入ると、人事・労務関係の業務を担当されている皆さんは年末調整の準備で忙しくなる時期です。申請案内を実施した際、社員からこのような質問が寄せられることはありませんか?
「そもそも年末調整って何のためにやるの?」
「去年はお金が戻ってきたのに、今年はなぜ戻ってこないの?」
年末調整の仕組みを一言で説明するのは意外と難しいものです。今回は、社員に聞かれた際、スムーズに答えられるよう、年末調整の基本を整理してみましょう。
一言で言ってしまえば、年末調整は「1年間の給与の整理整頓」です。
会社は毎月の給与や賞与から所得税を差し引いて、社員の代わりに国へ納めています。これを「源泉徴収」といいます。
ただし、毎月差し引いている税額は、あくまで「この給与が1年間続いたら、だいたいこのくらいの金額になる」という見込みで計算した概算額です。本来の所得税は、1月から12月までの1年間の収入が確定して、はじめて正しい金額が決まります。
そこで年末に、1年間の給与総額と各種の控除をもとに正しい税額を計算し直し、すでに納めた税額との差額を精算します。これが年末調整です。納めすぎていればお金が返金され(還付)、足りなければ追加で差し引かれます(徴収)。
【社員への説明ポイント】
「毎月の税金は仮払いで、年末調整は最後の整理整頓」と伝えると、イメージしてもらいやすいでしょう。
概算額と正しい税額に差異が生じる主な理由は、次のようなものがあげられます。
| 主な理由 | 具体例 |
|---|---|
| 毎月の計算に入っていない控除 | 生命保険料控除や地震保険料控除などは、年末調整の際にはじめて反映されます。 |
| 年の途中で家族の状況が変化 | 結婚や出産、扶養に含めていた家族の就職などで、控除の対象が変わることがあります。 |
| 給与や賞与の額が変動 | 昇給や賞与の増減によって、1年間の収入が当初の見込みと変わります。 |
「去年はお金が戻ってきたのに、今年はなぜ戻ってこないの?」という質問の多くは、こうした事情の違いで説明できます。還付額は「会社からのボーナス」ではなく、あくまで「納めすぎていた税金が戻ってきたもの」だという点も、あわせて伝えておくと良いでしょう。
【社員への説明ポイント】
還付金は会社からの臨時ボーナスではなく、毎月の給与から納めていた所得税の過不足を精算した結果です。年によって還付額が異なったり、追加徴収になったりすることもあります。
年末調整は便利な仕組みですが、すべての税金手続きがこれで終わるわけではありません。例えば次のような場合は、社員自身が確定申告をする必要があります。
| 対象となるケース | 内容・注意点 |
|---|---|
| 給与の年収が2,000万円を超える人 | そもそも年末調整の対象外となります。 |
| 医療費控除を受けたい人 | 医療費控除を受けるには、原則として確定申告が必要です。 |
| 住宅ローン控除を初めて受ける人 | 初年度は確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で対応可能です。 |
| 副業などで一定以上の所得がある人 | 副業などによる所得の状況によって、確定申告が必要になる場合があります。 |
【人事の対応ポイント】
人事としては、「会社でできるのはここまで。この場合はご自身で確定申告をお願いします」と線引きして案内できると、社員の安心感につながります。
年末調整の書類は種類が多く、社員にとっては「何のために書くのか分からない」ものとなりがちです。案内の際は、書類ごとに目的をひと言添えるだけでも理解度が変わってくるでしょう。
例えば、次のように説明できます。
| 書類の種類 | 社員への説明例 |
|---|---|
| 扶養控除等申告書 | 「家族の状況を会社に伝えるもの」 |
| 保険料控除申告書 | 「支払った保険料を税金の計算に反映させるもの」 |
書類を「税金を正しく計算するための材料」と位置づけると、記入漏れや提出遅れも減っていくはずです。
なお、年末調整に関わる税制は近年改正が続いています。毎年の案内の前に、国税庁の最新情報を確認しておくと安心です。