東京ビジネス外語カレッジ(TBL)様
Interview
[人事・教育担当者にうかがう、人材育成への取り組み]
東京ビジネス外語カレッジ(TBL)に訊く——AI時代に求められる「自ら学ぶ力」と、摩擦から生まれる真のグローバルリーダー育成
Interview
写真左から:副校長 佐藤 貴志 氏/林 孟緯 氏/アボンクケチュ ガエレ 氏 AIやグローバル化など、変化の激しい時代に求められる「自ら学び続ける力(ラーニングスキル)」を育むTBL。主体的に学ぶ力を育む教育と、グローバルな学習環境、企業・自治体との実践的な取り組みを通じて、これからの時代に求められる学びを追求しています。本記事では、副校長の佐藤氏へのインタビューを通じて、教育DXやAI時代の資格教育、従来の暗記型学習からの転換について紹介いたします。さらに、簿記資格に挑戦した留学生2名へのインタビューから、学習の工夫やTAC教材の活用法、資格取得を通じて得た自信、将来の就職への思いを聞きました。
―貴校の教育方針や、授業において大切にされているポイントについて教えてください。
佐藤:
当校の最終的な目標は「グローバルリーダーの育成」です。そのための重要な柱の一つとして、「ラーニングスキル(自ら学ぶ力)」の習得を掲げています。
これからさらにグローバル化が進み、AIをはじめとするテクノロジーも進化していく中で、数年後にどのようなスキルが必要とされているかは誰にも分かりません。だからこそ、その時々に必要なことを自ら判断し、主体的に学んでいける力を身につけることが重要だと考えています。
例えば当校では、会計の基礎として「簿記」の授業を設けていますが、資格取得そのものを目的にはしていません。資格取得はあくまで任意であり、主体的に挑戦する姿勢を奨励しています。
授業だけで資格取得までを目指すのではなく、基礎知識は授業でしっかり身につけ、資格を目指す学生には夏休みなどに特別講座を開講しています。TACさんの過去問題集などを活用しながら、さらに学びを深められる環境を用意しています。
―今回、TACの教材を採用された背景について教えてください。
佐藤:
TACさんを採用した一番の決め手は「デジタル教材の充実度」です。当校では「UX(ユーザーエクスペリエンス)」を重視した組織づくりを進めており、教育現場のDX化にも力を入れています。
2年前から全教室に電子ホワイトボードを導入し、従来の黒板やホワイトボードに板書するスタイルをなくしました。電子ホワイトボードは単なるモニターではなく、Windowsを搭載したパソコンそのものです。授業中に気になったことをその場で検索して投影したり、デジタル教材に直接書き込んだりすることができます。
紙のテキストをスキャンしてPDF化する手間がなくなったことに加え、板書にかかる時間も大幅に減りました。例えば簿記の授業で「精算表」を黒板に一から書くのは非常に時間がかかります。しかしデジタル教材なら、フォーマットがすでに画面上にあり、そこに直接アンダーラインを引いたり、仕訳を書き込んだりできます。
教材準備や板書の負担が減ることで、教員は「教えること」や「学生とのコミュニケーション」に、より多くの時間を使えるようになりました。
また、当校ではESGの観点からもペーパーレス化を推進しています。Microsoft Office 365を活用して教材はクラウド上で提供しています。
TACさんのデジタル教材は、そのような当校の教育環境や理念と非常に相性が良いと感じています。
―留学生における日商簿記のニーズや、資格に対する貴校の考え方を教えてください。
佐藤:
当校では、資格そのものを最終目的にはしていません。「何かを暗記していなければ仕事ができない」という時代は、少しずつ変わりつつあるからです。
AIが普及する中、AIに「HOW(どうやるか)」を任せ、人間は「WHY(なぜやるのか)」を考え、それをどのように価値として提供するかが重要になっています。
数年後には「簿記の資格」そのものの価値が変化している可能性もあります。しかし、ビジネスの基盤となる「会計の考え方」は、これからも重要です。
一方、留学生にとって日商簿記は、知識の証明だけではなく、非常に強力なPRツールにもなります。
例えば、アフリカやアジアから来た留学生が日商簿記3級や2級を取得していれば、企業から見ても「これだけ専門的な日本語を理解できるのか」という驚きにつながります。日本語力や学習能力を示す一つの材料にもなるのです。
また、就職時には、学校で学んだ内容と就職先での業務内容との関連性が重視されます。経理や事務職を目指す留学生にとって、「簿記を学び、資格も取得している」という事実は、自身の専門性を説明する上で大きな意味を持ちます。
―今回日商簿記3級に合格した留学生のエピソードがあれば教えてください。
佐藤:
ガエレさんはオープンキャンパスなどでも活躍してくれているのですが、昨年、国連のWFP(世界食糧計画)が主催するフードロスのエッセイコンテストで特別賞を受賞しました。
彼の母国では、その日の食べ物にも困るような、生きることに必死な過酷な環境が日常としてありました。日本に来て、食べ物が当たり前にある環境に驚くと同時に、「食の大切さを伝えたい」という強い思いをエッセイに込めたのです。
こうした多様な背景と強い意志を持った学生たちがTBLには集まっています。

―貴校ならではの教育プログラムについて教えてください。
佐藤:
当校では「実学」を重視し、企業と連携したハンズオン型の授業を多数実施しています。
例えば、大手IT企業と連携してAIリテラシーを学ぶ授業では、単に知識を学ぶだけでなく、AIや欧米で主流のビジネスSNSなどを活用し、企業が抱える実際の課題に対する改善提案まで行います。
また、ホスピタリティ・ビジネスコースでは、旅行会社や自治体と連携し、実際の観光地を舞台にフィールドワークを行いました。
そこでは「訪問客は多いものの、1日の客単価が約5,000円にとどまっている」というリアルな課題に対し、留学生ならではの「外国人の視点」を生かして改善策を考えました。
現地で外国人観光客をシャドーイングするなどして調査した結果、「多言語での情報提供が不十分」「外国人観光客が使いやすい公式アプリが必要」「宿泊施設が少なく夜間の集客が難しい」といった、日本人だけでは気づきにくい視点が数多く出てきました。
―多国籍な学生によるグループワークには、苦労もありそうですね。
佐藤:
もちろん、あります(笑)。当校では、1つのクラスに30〜40カ国もの学生が混在する環境を意図的につくっています。文化や価値観が異なる学生同士でグループワークをすれば、摩擦やトラブルは必ず起こります。
しかし、人の成長には、この「摩擦」が必要なのだと思います。
母国語ではない日本語を使いながら、異なる国の学生と意見を交わし、時にはぶつかり合いながら一つのプレゼンテーションをつくり上げる。この経験こそ、社会に出たときに生きる「実学」だと考えています。
―最後に、今後の展望についてお聞かせください。
佐藤:
すべての中心にあるのは「グローバルリーダーの育成」です。そのために今、AI時代を見据えた「新しい評価制度」の構築を考えています。
極端な話ですが、「期末試験をなくしてもいいのではないか」とさえ考えています。社会に出れば、分からないことはAIやスマートフォンを使って調べるのが当たり前です。それなのに、学校のテストだけ「何も見ずに暗記して解きなさい」というのは、実社会のあり方とずれているのではないでしょうか。
例えば、入学時から高い知識を持ち、授業中は寝ていてもテストで100点を取る学生と、日本語も分からず知識もゼロに近い状態から必死に学び、70点を取った留学生がいたとします。
これからの時代に評価したいのは、後者の「どうやって70点までたどり着いたのか」という成長のプロセスです。
学生一人ひとりが成長した部分をしっかりと評価し、その延長線上に簿記などの資格取得や、自分自身の価値向上がある。
自ら考え、伝え、学び続ける。そんな力を育てられる学校であり続けたいと考えています。

―まず、自己紹介と日本に留学したきっかけを教えてください。
ガエレ:
カメルーン出身の22歳です。19歳で日本に来て、まず日本語学校で1年間勉強し、その後、現在の専門学校に入学しました。もともと海外留学をしたいと考えていて、日本に長く住んでいる知人から話を聞いたことがきっかけです。いろいろな国の学生が集まるグローバルな環境にも魅力を感じました。
林:
台湾の台北出身、29歳の林です。27歳のときに来日し、系列の日本語学校で半年間勉強した後、専門学校に入学しました。台湾の大学を卒業しているので大学院への進学も考えましたが、将来は日本で就職したいと考え、就職に向けた学びができる専門学校を選びました。
―簿記を学び始めたきっかけと、勉強してよかったことを教えてください。
ガエレ:
将来の仕事の選択肢を広げたいと思い、簿記を勉強しました。合格できたことで、「挑戦すれば乗り越えられる」という自信と勇気が生まれたことが一番嬉しかったです。
林:
入学前はやりたい仕事が決まっていませんでしたが、授業を受けて情報整理や計算の仕事に興味を持ち、簿記3級に挑戦しました。3級合格後は独学で4カ月勉強し、2級にも合格しました。簿記の知識は株式投資にも活かせます。財務諸表から企業の経営状況を読み解けるようになり、学ぶ楽しさにつながりました。
―学習する中で苦労したことはありますか?
ガエレ:
母国でも簿記を勉強した経験がありますが、国によってルールが違うため苦労しました。日本では借方・貸方に分けて仕訳をするなど、考え方そのものが異なります。また、試験問題の日本語を理解することも難しかったです。問題文の意図を正確に読み取るために、過去問を繰り返し解いて対策しました。
林:
台湾の大学で会計の基礎を学んでいましたが、日本の簿記では仕訳を本格的に勉強しました。小さな計算ミスが全体の計算書に影響するため、プレッシャーもありました。
―TACの教材はどのように活用しましたか?
ガエレ:
テキストの図解を見ながら、イメージで理解することを意識しました。また、授業で習った内容を一度母国語に置き換えて整理してから学ぶようにしました。
林:
「インプットしたらすぐにアウトプットする」というサイクルを意識しました。テキストで概念を理解したら問題を解き、本当に理解できているか確認します。簿記3級はTACのテキストと問題集を中心に学習して合格できました。台湾人にとっては、日本語の漢字は分かっても発音が分からないことがあるので、ふりがながあるとより嬉しいですね。
―最後に、これから簿記を学ぶ学生へメッセージをお願いします。
ガエレ:
自分の力を試すつもりで、途中で諦めず、最後まで挑戦してみてほしいです。
林:
将来、経理の仕事をしたい方には簿記2級がおすすめです。2級は3級の発展なので、まずは3級の基礎をしっかり身につけることが大切だと思います。
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