アンコンシャス・バイアスの本当の意味を考える

TAC株式会社 営業推進部稲葉 琢磨

2021.09.10

このところ、アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)という言葉を耳にする機会が増えています。
もともと、さまざまな場面で注目を集めているトピックではありますが、最近は特に、アメリカのメジャーリーグ、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手の活躍とあわせて、アナウンサーやテレビの解説者が差別的な発言を行ったといったニュースが報じられ、そのなかでアンコンシャス・バイアスというキーワードが何度も出てきていました。
差別発言をした解説者は無期限の出演停止となり、バイアストレーニングを受けるといった発表などの続報もありましたので、聞き覚えがある方が多いのではないかと思います。

多くの方は、アンコンシャス・バイアスと聞くと、さきほどのニュースの観点からか「人種による差別」という点ばかりに目を向けてしまいがちで、ほかにはジェンダー(性別)や年齢、学歴による偏見をイメージする程度であり、「自分はそういったことには気をつけているから大丈夫」とか「私にはアンコンシャス・バイアスなんてありません」と思われていることでしょう。
しかし、残念ながらそれは大きな間違いです。実はアンコンシャス・バイアスは私たち、誰もが持ち得るものなのです。

アンコンシャス・バイアスは、日本語に訳すと「無意識(unconscious)の思い込み/偏ったモノの見方、偏見(bias)」という意味になります。
もちろん人種による偏見も含まれますし、ジェンダー(性別)や年齢、学歴といったものによる偏見も含まれるわけですが、単純にそれだけを指すものではありません。

アンコンシャス・バイアスには、いくつかの種類があるとされます。

 

 □ ステレオタイプ脅威    → 自分は○○(主にマイナス面)だからという思い込み
 □ 正常性バイアス      → 自分は大丈夫という思い込み
 □ 集団同調性バイアス         → 他もやっているから(問題ない)という思い込み
 □ アインシュテルング効果  → 今までのやり方が正しいという思い込み

 

多くの場合、人は目の前の事象や物事を判断するとき、これまでの自分の経験や見聞から「こうだろう」とか、「こうではないだろう」といったような、自分なりの解釈しているはずです。それそのものはごく自然なことですが、問題は気づかぬうちに、自分なりの解釈だけで物事を決めつけてしまったり、さらにはその考えを別の人に押しつけたりしてしまうことなのです。

たとえば大きな仕事やプレッシャーのかかる役割を前にしたとき、すぐに「どうせ無理だ」とか、「できるわけがない」と思ってしまったりしていませんか? そしてそういった考えを自分に向けるだけでなく、他の人にも向けたりしていませんか?
職場の同僚や部下などから、自分が思っていたやり方や考え方とは違うことをいわれたときに、「そんなわけがない」とか、「私は聞いたことがない」、「それでは失敗する」といったように、決めつけてかかっていませんか? 経験の浅いスタッフからの提言に対して、つい「前例がない」とか「これまでのやり方で問題ない」といった反応をしていませんか?

それぞれのシチュエーションにおいて、みなさんは、これまでの自分の経験や見聞に当てはめて、どうすべきかを考えているはずです。そうすることで自分の中に、対応策や解答が浮かび上がってくるわけですが、その答えは必ずしも100%正しいとは限りません。
ましてや自分ではなく、その答えを相手に向けて押しつけてとしまうというのはどうでしょうか? 自分とは別の人物なのですから、相手には相手なりの対応策や解答があるはずです。それを否定してしまってよいのでしょうか?
もちろん、本人はよかれと思ってやっていることかもしれません。ただそのとき、相手はどう思っているのでしょうか? 否定されたような気分になり、傷ついたりしていないでしょうか?

そう、何事においても、自分のなかで無意識のうちに答えを決めつけてしまうこと、そしてそれを相手に押し付けてしまうこと、それがアンコンシャス・バイアスであり、大きな問題だということなのです。

さきほど「自分はそういったことには気をつけているから大丈夫」と思った方、どうでしょうか? それこそがアンコンシャス・バイアスに陥っている状況だと思いませんか?

では、アンコンシャス・バイアスが生じると、職場ではどのようなことが起こるのでしょうか?

やはりメンバー間の風通しのいい雰囲気は削がれ、建設的な対話は行われなくなるでしょう。当然、人間関係が悪くなります。そんな状況ではメンバーのモチベーションは上がりませんね。やがて組織風土もどんどん悪くなっていきます。きっとハラスメントや差別的な言動が横行することでしょう。
そうなってくると、個人や組織のパフォーマンスはどんどん低下していきます。新しいやり方や考え方が否定されるなかでは、新しいビジネスモデルやイノベーションは生まれなくなります。なんと悲惨な状況でしょうか。

そんなことにならないよう、アンコンシャス・バイアスを取り払うトレーニングが必要ですよね。アンコンシャス・バイアスにより、意図せず自分のパフォーマンスを低くしたり、相手を傷つけたりして、苦しめるようなことがないようにするべきです。
TACのアンコンシャス・バイアスの研修では、組織の課題解決にあたって「無意識バイアスを知ること」と「自己認知による心の姿勢を変える」ことが効果的であることを学びます。
そのうえで、無意識バイアスが生まれる理由や、無意識バイアスに気がつきにくい理由を学びます。
最終的に、組織が発展するためのダイバーシティとインクルージョン(多様な人々が互いに個性を認め、一体感を持って働いている状態)の重要性や、そのために必要なリーダーの影響力について学んでいきます。

TACのアンコンシャス・バイアストレーニング研修では、対象者やご希望の期間、実施方法に応じてプログラムを作成しますが、おおまかなイメージを例として以下に挙げます。

<研修プログラムの一例>

さきほども書きました通り、アンコンシャス・バイアスは組織の健全な動きを阻害します。
機運が高まっているこの機会だからこそ、またなにより、悲惨な状況になる前だからこそ、自社の状況を把握して、必要であれば速やかに、このアンコンシャス・バイアストレーニング研修を導入することをお勧めします。

<参考>研修のご案内
 アンコンシャス・バイアストレーニング研修

Profile
稲葉 琢磨
TAC株式会社 営業推進部

TAC株式会社の行う法人研修のうち、ヒューマンスキル系研修の企画・運営ほか全般を担当。
TACが実施しているヒューマンスキル系研修については、こちらをご覧ください。⇒TACのヒューマンスキル系研修

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