人事担当者必見! 2023年度版

【人事労務関連で確認しておきたい法改正事項 Vol.9】社会保険の適用拡大について

社会保険労務士後藤 朱(ごとう・あけみ)

2024.04.01

こんにちは。社労士の後藤です。

このコラムでは、人事・労務担当者が押さえておくべき改正点と、企業側で必要な対応のポイントを9回に渡ってご紹介します(当初7回の連載としていましたが、法改正の追加があり、9回となりました)。今回のVol.9をもって、2023年度版は最終回。このコラムの内容が、少しでも皆さまの日々の業務のお役に立てば嬉しいです。


社会保険の適用拡大について
【対 象】被保険者数51人以上100人以下の事業所 【施行日】2024年10月1日

 


1.社会保険の適用拡大とは?

現在の制度では、パート・アルバイトで働く短時間労働者について会社の社会保険の適用対象となるかどうかは、企業規模によって異なります。

通常の正社員よりも労働時間が短い短時間労働者で社会保険の加入対象となる方は、原則として、週の労働時間が正社員の4分の3以上ですが、

被保険者数が101人以上の企業では、週の労働時間が4分の3未満の方でも、週所定労働時間が20時間以上の方で他の要件を満たす場合は、社会保険の加入対象となります

1週間の正社員の所定労働時間が40時間の場合で具体的に見てみましょう。

40時間の4分の3は30時間ですから、30時間以上で働く場合は企業規模によらず社会保険の加入対象となりますが、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方は、被保険者数101人以上の企業では強制適用となりますので、週20時間以上で働く場合は他の要件を満たせば社会保険に加入しなければなりません。

一方、被保険者数が100人以下の企業では、短時間労働者については労使合意に基づく任意適用とされているので、週20時間以上30時間未満の短時間で働く方は、会社の社会保険の加入対象にはなりません。

現在、短時間労働者への社会保険の適用拡大については順次進んでいるところで、2022年10月1日から適用範囲が従来の「501人以上」から「101人以上」に拡大されたところです。

2024年10月1日以降はさらに適用範囲が拡大され、被保険者数51人以上規模の企業が適用対象となります。この改正により対応が必要となるのは被保険者数が51人以上100人以下規模の企業です。今から準備を進めておきましょう。


2.短時間労働者で社会保険加入対象となる要件

適用拡大により短時間労働者も強制適用となる事業所について、被保険者となる要件は、次の①~④の要件をすべて満たす方となります。

  • ①週の所定労働時間が20時間以上であること
  • ②月の賃金が8.8万円以上であること
  • 2か月を超える雇用の見込みがあること
  • 学生ではないこと

3.企業側で必要な対応は?

適用拡大の対象企業で上記2の要件に該当する方がいる場合は、2024年10月1日から社会保険の適用対象となります。まず、対象者の洗い出しを行うとともに、労働者への制度周知を行いましょう。対象者への説明会などを実施してもよいでしょう。

そして新たに被保険者となる方については、2024年10月1日で資格取得届を提出します。

対象者にとっては、社会保険加入により給与の手取り額が減ってしまう…という不安を抱く方もいらっしゃるでしょう。そういったときは、社会保険加入により受けることができる給付の選択肢が増えるというメリットがあることを丁寧に伝えていきましょう。

病気で働けなくなってしまった場合には健康保険から傷病手当金を受け取ることができます。出産した場合に出産手当金を受け取ることができます。また、厚生年金保険に加入することにより、老後には老齢厚生年金を受け取ることができます。

人事担当者は制度をよく理解したうえで対応にあたりましょう。

Profile
後藤 朱(ごとう・あけみ)
早稲田大学社会科学部卒業。 2015年に社労士試験合格、2017年3月に社会保険労務士事務所を開業。 新卒で入社した会社では約12年間にわたり、資格参考書の編集職に従事。社会保険労務士をはじめとして、衛生管理者、日商簿記、ITパスポートなど、数多くの人気資格書の編集を担当してきた。自ら企画した新刊は20冊を超える。現在はフリーランスとなり、社労士業(企業各社の人事業務支援、雇用関連助成金のコンサルティング、各種年金の申請等)を行うほか、社労士関連の原稿執筆を行っている。

一覧に戻る