人事担当者必見! 2023年度版

【人事労務関連で確認しておきたい法改正事項 Vol.6】障害者雇用促進法の改正②

社会保険労務士後藤 朱(ごとう・あけみ)

2023.09.26

こんにちは。社労士の後藤です。

2023年度も、人事・労務担当者にとって重要な法改正が行われています。このコラムでは、人事・労務担当者が押さえておくべき改正点と、企業側で必要な対応のポイントを7回に渡ってご紹介します。ぜひ日々の業務にお役立てください。


障害者雇用促進法の改正
【対 象】全企業 【施行日】2024年4月1日施行

前回に引き続き、障害者雇用に関する改正点を取り上げていきます。今回取り上げるのは、20244月1日以降に実施される改正点となります。


1.障害者の法定雇用率引上げ(2024年4月1日以降)

民間企業における障害者の法定雇用率は、現在2.3%(従業員数43.5人以上で1人以上)となっています。この法定雇用率が2024年4月以降、2.5%(従業員数40人以上で1人以上雇用)に引き上げられます。

法定雇用率は、2024年4月に引上げが行われ、今後さらに引き上げられることが予定されています。

法定雇用率が引き上げられることにより、障害者雇用のための事業主支援策も強化されていくことが予定されていて、具体的には障害者雇用で企業が活用できる助成金の新設、現在もある助成金の内容の拡充が検討されています。

障害者を雇用する際に活用できる助成金については、ハローワークで申請できる特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)などがあります。

障害者を雇い入れた場合などの助成 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

また、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が申請窓口となっている助成金もあります。施設等の設備や適切な雇用管理を図るための特別な措置を行うため、障害者の方の新規採用や雇用の継続を行うためなどに申請できる助成金として、障害者作業施設設置等助成金、障害者介助等助成金、職場適応援助者助成金などさまざまなものがあります。これらの助成金の申請窓口は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)で、各都道府県に相談窓口が設置されています。

助成金|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 (jeed.go.jp)


2.週20時間未満で働く短時間労働者の算定(2024年4月1日以降)

現行制度では、週の所定労働時間が20時間未満の短時間で働く障害者については、法定雇用率を算定する際、雇用人数に含めることができません。

しかし、障害特性により長時間働くことが難しい方も、短い時間であれば働くことができる場合もあります。そういった方たちの雇用機会の拡大を図るため、週の所定労働時間10時間以上20時間未満で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者の方を雇用した場合、特例的な取扱いとして、2024年4月1日以降法定雇用率を計算する際、1人をもって0.5と算定することができるようになります。

この改正により、週10時間以上20時間未満で働く障害者を雇用する事業主に対して支給されていた特例給付金は、2024年4月1日をもって廃止となります。

※2024年3月31日までに雇入れられた週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度以外の身体障害者及び知的障害者については、1年間の経過措置があります。


3.障害者雇用調整金、報奨金の支給調整についての改正(2024年4月1日以降)

障害者雇用調整金は、常時雇用労働者数が100人超える事業主に対し、法定雇用率を上回って障害者を雇用している場合に支給されるものです。

2023年4月1日以降の期間については、法定雇用率を超えて雇用している障害者数に応じて、1人につき月額29,000円が支給されることになっています。

2024年4月1日以降の障害者雇用調整金は、支給対象人数が10人超える場合には、その超過人数分への支給額が23,000円となります。本来額は29,000円ですから、6,000円調整されることになります。

※2024年度の雇用実績に基づき2025年度以降支給されるものから反映されます。

また、常時雇用労働者数が100人以下の事業主に対して、各月の雇用障害者数の年度間合計数が一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数または72人のいずれか多い数)を超えて障害者を雇用している場合、その一定数を超えて雇用している障害者の人数に21,000円を乗じて得た数の報奨金が支給されています。

この報奨金についても2024年4月1日以降は、支給対象人数が35人を超える場合には、当該超過人数分への支給額が16,000円となります。本来額は21,000円ですから、5,000円調整されることになります。

※2024年度の雇用実績に基づき2025年度以降支給されるものから反映されます。

今回の改正は、限られた財源を事業主への支援に充てるために行われた見直しの1つです。一般的に、障害者雇用に要する事業主側の費用は、雇用する人数が増えるほど逓減傾向にあることをふまえ、一定数を超える人数分についてその支給単価を引き下げたものとされています。


4.会社が行うべきことは?

まず法定雇用率未達の事業所は、今から採用の準備を行いましょう。採用については、会社の管轄のハローワークに相談してみるとよいでしょう。

求人を出すことはもちろん、雇入れる際に雇用管理上どのような配慮が必要になるか等のアドバイスを具体的にもらうことができます。

また、採用にあたり、社内の設備の見直しが必要になることもあるでしょう。助成金も上手に活用しながら障害者の方が働きやすい環境づくりを行いましょう。

Profile
後藤 朱(ごとう・あけみ)
早稲田大学社会科学部卒業。 2015年に社労士試験合格、2017年3月に社会保険労務士事務所を開業。 新卒で入社した会社では約12年間にわたり、資格参考書の編集職に従事。社会保険労務士をはじめとして、衛生管理者、日商簿記、ITパスポートなど、数多くの人気資格書の編集を担当してきた。自ら企画した新刊は20冊を超える。現在はフリーランスとなり、社労士業(企業各社の人事業務支援、雇用関連助成金のコンサルティング、各種年金の申請等)を行うほか、社労士関連の原稿執筆を行っている。

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