【人事担当者を元気にするコラム Vol.47】ペップトークの魔法 ~私はできる~

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2023.09.29

日頃、プレゼンテーションをするときにはどんな準備をしていますか?
パワーポイント等資料の確認、話す内容の準備など、いろいろな対応をしていることと思います。
そのうえで、なかなか気づいていないことがあります。それは「ペップトーク」です。

ペップトークって聞いたことがありますか? これはもともと、スポーツなどにおいて、試合前や重要な意味をもつ練習の前などに、指導者が選手を励ますために伝える、短い激励のメッセージのことです。
私はセミナー等を実施する前には、必ずペップトークを実践しています。
ペップトークは、自分自身を自分で励ます魔法の言葉です。実はセミナーやプレゼンテーションの直前に実施すると、とても役立つ有効な方法なのです。

自信をもってプレゼンテーションしたいという人、いますでしょうか? 自信たっぷりに堂々と話している人をうらやましく思うことはありませんか? 自信をもって話すコツ、それは、あたかも自信があるようにふるまうことです。そのふるまいそのものが、他の人には自信満々の姿に映るのです。

では、どうすれば自信があるようにふるまうことができるのでしょうか?
そのために必要なものが言葉です。言葉によって自信をつくっていくことができます。その言葉の魔法がペップトークです。

イメージ:プレゼンテーション

ペップトークは自分を励まし、勇気づける言葉です。
往年の名ボクサー、モハメド・アリをご存じですか? 「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と表現されたように、最重量級であるヘビー級でありながら、華麗なステップを踏み、かっこいいボクシングをしていた偉大なボクサーです。
そんなモハメド・アリがいつも叫んでいた言葉、それは「俺は偉大だ」というものです。試合前などもよく叫んでいました。全世界に発信して、自分自身の力を引き出す、まさに最強のペップトークともいえるでしょう。

私自身がセミナー前によく発するペップトークは「できる、できる、私はできる」とか「私は世界一のスピーカー」、「みんな大好き、一体感」、「新さんや村田先生が素晴らしいと称賛してくれた私、最高のセミナーになるぞ」といったもので、自分自身にしっかり言葉がけをしていくのです。
なんども、なんども言っているうちに、心の中が自信で充満されていき、自信にあふれた状況でセミナーを実施できることになります。
試してみるときには、強くイメージをもつようにしましょう。そうすれば、結果もイメージ通りになることが多くあります。これは「引き寄せの法則」ですね。

このことに、私は名前をつけました。それは「あたかも理論」です。「あたかも○○のようにふるまう」ことで、その方のように実現していくのです。
ビートたけしさんは、まさにタレント(才能)いっぱいのタレントで、様々なフィールドで活躍していますが、たけしさんも、このペップトークを上手に活用していたことをご存知でしょうか?
大人気の漫才師として最も忙しくしていた時でさえ、舞台に上がる前には「たけし、おもしろい、たけし、おもしろい」といいながら、舞台の後ろでくるくるまわって、気持ちをあげていくことを必ず行っていたそうです。
ある時、その儀式を忘れて舞台にあがってしまったときには、いったん舞台裏に下がって、「たけし、おもしろい、たけし、おもしろい」とくるくるまわって、改めて舞台に戻ったと聞きます。ペップトークのすごさを知っての行動であり、ある面、徹底したルーティンといえると思います。

さあ、自分で自分ためのペップトークをつくってみませんか?

ペップトークのいいところは、自分で自分の言葉を決めていくことができることです。さあ、どんなペップトークがいいでしょうか?

最近では、プロ野球で2021年・2022年のセントラル・リーグで優勝した(2021年は日本一となった)、東京ヤクルトスワローズの高津臣吾監督の「絶対、大丈夫!」という言葉も印象的ですね。これもペップトークに位置づけられる言葉だと思います。
「さあいこう」や「がんばってこい」でもいいけれど、いわれ慣れすぎているかもしれませんものね。とてもいい言葉だと思います。
これは高津監督が影響を受けた、野村克也監督の言葉から生まれたそうです。日本シリーズ、埼玉西武ライオンズとの試合前のこと、データ野球を追求していた野村監督が発したのが「われわれは最善の準備はしたけれども、最後は相手もあることだし、勝負は時の運だから」という言葉で、その言葉をベースに生まれたのが、この「絶対、大丈夫」という言葉なのだそうです。

私が営業課長時代、つらいときや、大きなクレームを受けている時、メンバーが落ち込んでいるときなどによく言っていた言葉は、「大丈夫、命はとられないよ」というもので、とてもよく使っていました。
クレームで命は奪われないと思えば、はらがすわります。覚悟ができるという感じですね。「真剣になっても深刻になるな」という言葉もよく言っていました。
いろいろなことを真剣に取り組むことは大切。でも深刻になると、眉間にしわをよせて、暗く考えている姿が映ります。ここからはいいものは生まれません。

営業をしていると、結構追い込まれることがあります。これは本当にあったことですが、私たちがある企業に供給した原料の品質に問題があったため、担当者とともに謝りにいくと、そのオーナーから「あなたがたは、わが社をつぶす気か?!」とどなられました。
お互い真剣に仕事をしている中での出来事で、それをしっかり受け止めてリカバリーショットをうっていくところにも、営業のダイナミックさを感じます。
「期待にこたえるように、しっかり工場メンバーとともにやっていこう」とベクトルを強めたことを思い出します。
とはいえ、細心の注意をはらっていても、クレームは起きてしまうことがあります。そんな中、帰り道や解決に向かうとき、いつも言っていました。「大丈夫、命はとられないよ」と。ある面、最悪のことを考えているので、それ以上には悪くならない、いい意味での覚悟がつきます。
今、思えば、これも一種のペップトークになっていたと思います。

これからの未来や夢、希望に向かう時、つらい場面に正面から向き合う時にも、このペップトークは有効です。場面ごとに使う言葉は変わることと思いますが、いかに言葉に血液をおくり、生き生きとした言葉で語っていくかが大きなポイントになります。
言い続けるなかで、メンバーからその言葉がでるようになったときには、浸透した証拠です。クレームが起きて、その処理で大変な思いをしていた時に、ある中堅メンバーから「大丈夫、命はとられないよ」という言葉が出たときには、想いや言葉、考え方が継承されたと感じました。

イメージ:チームの成長
自分の発している言葉をメンバーが発するようになるまでは、相当の期間、相当の日数、言い続けることが必要です。なかなか伝わらないと思った方がいい。ベクトルをあわせていくためには、語り続けていくことが大切な行動になってきます。

ラグビーでは、試合前に感動的なメッセージが送られると聞きます。
慶應義塾大学ラグビー部の元監督であった上田昭夫さんのメッセージは、特に強烈だったそうです。大学選手権で優勝し、大学日本一として臨んだ日本選手権でのこと。トヨタ自動車との日本一決定戦を前に、控室を真っ暗にすると、ライターの火一つを全員でみつめて、「この火をみつめろ、俺たちは日本一になるんだ」と言ったそうです。そして大学選手権の優勝の賞状を、選手の目の前でびりっとやぶき、「おれたちにはこんなものはいらない。日本一になるんだ」と言って、グランドに選手を送り込んだそうです。
目の前で大学選手権の賞状をやぶられるのですから強烈です。全選手は泣きながらグランドに走ると、見事、社会人Nо.1のトヨタを破り、日本一になったのです。
ただ後日談では、その破られた大学選手権の賞状はコピーだったとか……。

最近、生前の父の言葉をよく思い出します。「一寸先はあかりだよ」と、しょっちゅう言っていました。一寸先は闇といいますが、我が家にはあてはまりません。一寸先はあかりと感じていれば、人生はこわくないですよね。あかりなんですから。

「待てしばし、而して(しこうして)希望せよ」
これは「少し待って、いろいろ考えろ。そして結果としては、人生に希望をもて」という意味ですが、物心つく前から聞いていましたので、細胞レベルに言葉が達しているように感じています。三つ子の魂百まで、にも通じるものがあります。
「素直が一番、ひがんだらおしまいだよ」、これも毎日のように言われていた言葉です。今考えても、正しい教えだと思います。松下幸之助さんの「素直な心」にも通じるものがあります。
これらはまさにペップトーク的な意味合いもあったと感じています。素晴らしい教えだったのだと思います。

またある時、教育とは? ということを話していました。
「教育とは、いろいろ学んでいくなか、ほとんどすべて忘れてしまう。その中でカスのようにわずかに残ったものがある。それが教育なんだと」
いいえて妙だと思います。
私たちが会社で後輩などに語っていくことも教育だとすれば、ほとんど忘れる中で、残っているカスが教育となっていくのでしょう。

一般財団法人 日本ペップトーク普及協会によると、ペップトークの定義は次のようなものとされています。

 

 ・ポジティブな言葉で
 ・相手の状況を受け止めて
 ・ゴールに向かった
 ・短くて、わかりやすい 
 ・人をその気にさせる言葉

(一財)日本ペップトーク普及協会 Websiteより:https://www.peptalk.jp/acceptance2/

「オノマトペ」という言葉を聞いたことがありますか? フランス語で擬音語や擬態語を意味する言葉です。これが日本語には結構多いのです。きらきら、どきどき、わくわく、もやもやといった言葉です。
この擬声語や擬態語は相手の感情を動かすといわれています。ペップトークに組み込むとイメージがしやすくなり、伝わりやすくなるので、参考にしていただくといいでしょう。感覚に語り掛けるので、心にストンとおちていくのだと思います。
きらきらっていい表現ですよね。キラキラ生きていく。ただ、濁点一つ付くだけでギラギラとなり、全く受ける印象が異なってきますので、気を付けていきましょう。言葉は生きていますね。

ぜひ、ご自身の好きな言葉で、好きな内容をペップトークにして、自分を勇気づける、鼓舞できる友として位置付けていきませんか?
そのときは、ぜひ声をだしていっていただくことがいいと思います。口で話し、耳で聴くという結果になるので、成果につながります。

さあ、できる、できる、素敵なペップトークで自分の人生を勇気づけていきましょう。


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。
資格としては、GCDF-Japanキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

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