人事担当者必見! 2023年度版

【人事労務関連で確認しておきたい法改正事項 Vol.5】障害者雇用促進法の改正

社会保険労務士後藤 朱(ごとう・あけみ)

2023.09.01

こんにちは。社労士の後藤です。

2023年度も、人事・労務担当者にとって重要な法改正が行われています。このコラムでは、人事・労務担当者が押さえておくべき改正点と、企業側で必要な対応のポイントを7回に渡ってご紹介します。ぜひ日々の業務にお役立てください。


障害者雇用促進法の改正
【対 象】全企業 【施行日】2023年4月1日施行

従業員の数が一定数以上である会社には、その人数に応じて、一定数以上の障害者を雇用する義務があります。これを怠ると、行政指導の対象となります。

現在(2023年8月末日時点)、法定の障害者雇用率は、民間企業の場合2.3とされています。従業員数が43.5人以上の事業所で1人以上の障害者を雇用しなければならないということになります。

法定雇用率の計算式

※対象障害者とは、身体障害者、知的障害者、精神障害者です。

民間企業で従業員数43.5人以上の対象事業主は、毎年6月1日時点で障害者雇用状況をハローワークに報告する義務があります。

今回はこの障害者雇用に関して、2023年4月1日から実施されている改正点を紹介していきます。


1.精神障害者の算定特例の延長(2023年4月1日以降)

通常、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者については、障害者雇用率における人数をカウントする際、1人を0.5人としてカウントします。

短時間労働者のうち、重度の身体障害者、重度の知的障害者は、1としてカウントすることになっています。

短時間労働者である精神障害者については、2023年3月までの時限措置として対象障害者である労働者数の算定のさい、0.5人ではなく1としてカウントする特例措置が設けられていました。

今回改正によりこの特例措置が延長され、2023年4月以降も当分の間、精神障害者である短時間労働者については、対象障害者である労働者数の算定のさい、1人とカウントすることになりました。

また、従来は雇入れから3年以上経過している人は対象に入れることができない等の制約がありましたが、2023年4月1日以降は、雇入れからの期間等に関係なく、当分の間、短時間労働者である精神障害者を1人としてカウントできるようになりました。

(※)2024年4月1日以降、週所定労働時間が10時間以上20時間未満である重度の身体・知的障害者及び精神障害者については、1人をもって0.5人とカウントします。


2.障害者雇用調整金の基準額の改正

従業員数が常時100人超の企業で、法定雇用率を達成している事業主には、毎年超える人数1人につき、一定の障害者雇用調整金が支給されます。

2023年4月1日以降の雇用期間については、従来の月額27,000円から29,000に引き上げられることになりました。

なお、障害者雇用調整金については、2024年4月1日以降にも改正が予定されています。この点は、次回の記事で紹介していきます。


3.会社が行うべきことは?

障害者雇用を取り巻く制度については、今後も予定されている改正点があります。企業側は、事前に採用の準備を行うなどの対応が必要です。

従業員数が常時100人を超える企業で法定雇用率を達成できていないところには、法定雇用障害者数に不足する人数に応じて、1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金が徴収されてしまいます。月額ですから、1人不足していると、年間で600,000円も徴収されてしまうことになります。

障害者雇用については、採用について事業所管轄のハローワークで相談することができますし、採用にあたっての企業設備等を整えたり、採用後の定着支援に活用できる助成金制度も用意されています。これらのサポート制度を上手に活用していきましょう。

Profile
後藤 朱(ごとう・あけみ)
早稲田大学社会科学部卒業。 2015年に社労士試験合格、2017年3月に社会保険労務士事務所を開業。 新卒で入社した会社では約12年間にわたり、資格参考書の編集職に従事。社会保険労務士をはじめとして、衛生管理者、日商簿記、ITパスポートなど、数多くの人気資格書の編集を担当してきた。自ら企画した新刊は20冊を超える。現在はフリーランスとなり、社労士業(企業各社の人事業務支援、雇用関連助成金のコンサルティング、各種年金の申請等)を行うほか、社労士関連の原稿執筆を行っている。

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