人事担当者必見! 2023年度版

【人事労務関連で確認しておきたい法改正事項 Vol.4】出産育児一時金の額の改正

社会保険労務士後藤 朱(ごとう・あけみ)

2023.08.01

こんにちは。社労士の後藤です。

2023年度も、人事・労務担当者にとって重要な法改正が行われています。このコラムでは、人事・労務担当者が押さえておくべき改正点と、企業側で必要な対応のポイントを7回に渡ってご紹介します。ぜひ日々の業務にお役立てください。


出産育児一時金の額の改正
【対 象】全企業 【施行日】2023年4月1日施行

第4回目となる今回のテーマは、出産育児一時金の額の改正です。出産育児一時金とは、妊娠4カ月以上の方が出産したときに健康保険から出産費用として支給される給付金です。

2023年4月1日から、子育て支援の拡充のため、出産育児一時金の最大支給額が50万円に引き上げられました(産科医療補償制度の対象とならない出産の場合は48.8万円)。

出産費用は、年間平均1%程度上昇しているといわれ、従来の出産育児一時金だけでは出産費用がカバーできないケースが多くあったため、今回の見直しになりました。出産育児一時金の額は、出産日によって、次のように支給額が異なります。

※産科医療補償制度とは、医療機関等が加入する制度で、加入医療機関で制度対象となる出産をされ、万一、分娩時の何らかの理由により重度の脳性まひとなった場合、子どもとご家族の経済的負担を補償するものです。


出産育児一時金の申請方法は?

出産育児一時金の申請方法は、出産する医療機関での費用の支払方法によって異なります。

①医療機関にて直接支払制度を利用する場合

 

医療機関が被保険者に代わって出産育児一時金を健康保険の保険者から受け取る「直接支払制度」というものがあります。この制度を利用することにより、医療機関の窓口では出産育児一時金の額を超える部分の自己負担部分のみを支払うこととなり、出産費用の負担額を軽減することができます。

直接支払制度を利用する場合、原則、被保険者が健康保険側に申請書を出す必要はありません。医療機関が後日健康保険側に出産育児一時金を申請します。

ただし、出産費用が法定給付額(50万円または48.8万円)を超えなかった場合は、出産費用と法定給付額の差額が支給されるので、後日その差額を被保険者が健康保険側に申請します。

 

 

②医療機関にて直接支払制度を利用しない場合

 

医療機関において被保険者が出産費用を全額自己負担します。その後、出産育児一時金支給申請書と添付書類を健康保険側に提出します。

 

 


会社が行うべきことは?

直接支払制度を利用する場合は、出産育児一時金の申請にあたり、被保険者自身も、会社も、とくに行う手続きはありませんが、

 

・直接支払制度を利用しても差額を請求する場合
・直接支払制度を利用しない場合

 

この2つに該当する場合には、被保険者が出産育児一時金の申請を健康保険側に行う必要があります。

出産予定の社員には、出産費用の支払がどのようになるかを病院に確認してもらうとともに、出産育児一時金の申請が必要となる場合は、会社から申請に必要な書類や添付書類を案内しましょう。

Profile
後藤 朱(ごとう・あけみ)
早稲田大学社会科学部卒業。 2015年に社労士試験合格、2017年3月に社会保険労務士事務所を開業。 新卒で入社した会社では約12年間にわたり、資格参考書の編集職に従事。社会保険労務士をはじめとして、衛生管理者、日商簿記、ITパスポートなど、数多くの人気資格書の編集を担当してきた。自ら企画した新刊は20冊を超える。現在はフリーランスとなり、社労士業(企業各社の人事業務支援、雇用関連助成金のコンサルティング、各種年金の申請等)を行うほか、社労士関連の原稿執筆を行っている。

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