人事担当者必見! 2023年度版
社会保険労務士
2023.06.23
こんにちは。社労士の後藤です。
2023年度も、人事・労務担当者にとって重要な法改正が行われています。このコラムでは、人事・労務担当者が押さえておくべき改正点と、企業側で必要な対応のポイントを7回に渡ってご紹介します。ぜひ日々の業務にお役立てください。
育児休業取得率公表の義務化
【対 象】労働者数1,000人超の企業 【施行日】2023年4月1日施行
第3回目となる今回のテーマは、育児休業取得状況等の公表の義務化です。 2023年4月1日から、常時雇用する労働者の数が1,000人を超える企業は、男性の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務化されました。
これは、男性の育児休業取得を促進し、男性の育児参加を社会全体で支援するために実施されるものです。 今回は、公表することが義務化された内容や公表方法について確認していきましょう。
1.何を公表すればよいの?
常時雇用する労働者数が1,000人を超える企業は、 公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度における①育児休業等の取得割合または②育児休業等と育児目的休暇の取得割合のいずれかを公表しなければならないとされています。①、②の取得割合については、次のように算出します。
①育児休業等の取得割合
②育児休業等と育児目的休暇の取得割合なお、「育児休業等」とは、
・育児休業 |
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のことをいいます。
また、「育児目的休暇制度」とは、 休暇の目的の中に「育児を目的とするもの」であることが就業規則等で明らかになっている休暇制度のことをいいます。
会社ごとに任意で設けられている育児のための休暇制度の利用した人数を集計します。この育児目的休暇制度の利用者数を算出するにあたっては、育児休業や子の看護休暇制度などの法定の制度を利用した人数は除いて集計します。また、労働基準法上の年次有給休暇を取得している期間も除いて集計します。
①、②の計算における注意点は次のとおりです。
・育児休業等の取得者の人数の集計にあたっては、2022年10月からスタートした出生時育児休業(産後パパ育休)も育児休業等を取得した人数にまとめて集計します。産後パパ育休とそれ以外の育児休業等の取得人数を分けて集計する必要はありません。 ・育児休業を2回に分割して取得した場合、同じ子の育児休業は、2回に分けて取得しても1人として計算します。また、事業年度をまたがって育児休業を取得した場合は、育児休業開始日を含む事業年度に取得したものとして計算します。 ・公表する割合は、算出された割合の少数第1位以下を切り捨て、配偶者が出産したものの数(分母)が0人の場合は、割合が算出できないため「-」と表記します。 |
2.どうやって公表すればよい?
インターネットの利用その他適切な方法で、一般の方が閲覧できるよう次のような方法で公表しましょう。
・自社のホームページの企業情報に掲載する |
また、公表時期は前事業年度終了後、おおむね3か月以内を目安に公表するようにとされています。
例:3月末に事業年度が終了する会社 → 6月末までに取得率を公表 |
育児休業制度については、ここ最近大きな制度改正がありました。
2022年10月からは、産後パパ育休制度が創設されました。これは、子供が生まれてから8週間以内に育児休業とは別に最大28日間取得できるものです。
また、同じく2022年10月からは、子供が原則1歳になるまで取得できる育児休業も2回に分割して取得することができるようになり、育児休業を取得しやすくするための制度改正が進んでいます。統計調査によると、男性の育児休業取得者の割合は、13.97%です(※1)。 平成28年度の統計調査では3.16%でしたから、わずか5年で飛躍的に伸びていることがわかります。
家庭と仕事の両立支援をどのように行っていくか、企業にとっては重要な課題です。 育児休業の取得率については、働く労働者にとっても、今後就職や転職を考える際の重要な指標になっていくことでしょう。
ぜひ、この制度改正を機に育児休業取得率を公表し、企業のアピール機会にしていきましょう。
(※1)令和3年度雇用均等基本調査より