【人事担当者を元気にするコラム Vol.72】「お父さん、娘さんの結婚相手を選ぶのはあなたです」

ナトラ合同会社 代表
経営コンサルタント・人財開発コンサルタント
元大手食品メーカー・グループ企業 代表取締役社長山本実之

2025.10.31

みなさんの中で、娘さんがいらっしゃる方はおられますか?
特に、お父様からみた娘さんというのは、特別な人といわれます。お母様からみた息子さんというのも特別なようですが……お互いにとって異性であり、格別な想いがあるとよく聞きます。永遠の恋人説もあるほどですね。

さて、「お父さん、娘さんの結婚相手を選ぶのはあなたです」といわれると、なにやらドキッとしますね。これはある本(★)に書かれていた言葉です。そしてこれは、お父さんが直接的に娘さんの結婚相手を選ぶという意味ではありません。くれぐれもお間違えの無いように。
この言葉はお父様の生き方、考え方、想いなどを通じ、その背中をみて、娘さんは将来の相手を選んでいくということをたとえたものです。娘さんは本当に、よーーくみているそうですよ。
そのうえで、お父様の姿を通して、将来のパートナーを決めていくということなのです。父親にとっては、これはある面、自分の相手を選ぶ以上にハードルの高いことかもしれません。自分の生き方をみせていく必要があるということです。

イメージ:ウェディング
もちろん、神様ではないので、欠点だらけでもいいのだと思いますが、もし、娘さんが自分自身の姿を通じて、将来のパートナーを選ぶのだとしたら、これは責任重大ですね。結構怖いことでもありますね。

人は自分のために行動できなくても、他人のためには行動していけるといわれています。娘さんに見られている、指標とされているのだとしたら、どんな生き方ができるでしょうか?
もちろん、聖人君子のようになる必要はまったくないと感じています。ただ、「人生って楽しいよ」「結婚生活もいいよ」「いろいろ人生にはあるけど、人生っていいもんだよ」というメッセージを届け、それを実行していくことが大切なのではないでしょうか? 人生の楽しさを伝える役割があるように思います。
お父様が大人として、いつも疲れているようだと、子供も大人に魅力を感じないでしょうね。
そして、特に大切なのは、父親自身が家族の幸せを第一に考えることではないでしょうか? 父親として仕事を一生懸命するのは、ある面で当たり前、そのうえで、家族の幸せのために父親がどれだけ集中しているかがカギだと思います。
あるいは、思いをかけているということでしょうか? 忙しいという究極のシェルターに逃げ込んでいませんか? このシェルターは一度隠れると癖になります。逃げられたと思っても、あとで大きな重みとしてかえってくるので、「今ここ」の心で、できることをやっていくことが大事だと思います。

幸せのスタイルは、家族の数だけあるので、独自の幸せの型があっていいと思います。いわゆる世間体なんて一切関係ないし、まねる必要もありません。
大切なのは、家族が幸せと思えることに力を注ぐ、時間を注ぐ、エネルギーを注ぐということです。お父様たち、どれだけ家庭にエネルギーを注いでいますか? その対価として、その結果として、幸せがやってくるという感じです。

そしてその幸せは、クリエイトし続けることが必要なようです。
今から38年前、私は結婚にあたって仲人をお願いするため、大学時代のゼミの指導教授で、弁護士でもある先生の自宅を訪ねました。広い応接室で、妻と2人でご挨拶をしたときのこと、先生から言われた言葉を今でもはっきり覚えています。

「山本君、君は今幸せの絶頂だろう。将来のすてきなパートナーとめぐりあえて、結婚前に幸せいっぱいだろう。でも人間は悲しいもので、その幸せを記憶にとどめておくことができないんだ。忘却とともに風化してしまう。保つことができないんだ。だから、常にお互いが愛し合い、その愛をクリエイトしていかなければならない。クリエイトし続けなければならいんだ」と。

とても衝撃を受けました。幸せって記憶できないんだ。忘れてしまうんだ。愛し合っていれば、愛はとどまっているのだと思ったら、そうではないんだ。愛は常に育み、創造しなければならないのかと、とても驚いたことを昨日のように思い出します。

常に、家族の幸せを考えて行動していくこと、そして家族の幸せをクリエイトしていくことが必要なのだと思います。そのクリエイトして、幸せを紡いでいく姿を娘たちはよくみている。そして、将来のパートナーを選ぶ指標となっていくのでしょう。
娘たちの幸せを考え、願うならば、お父さん自身の心がけが重要です。行動にかかっているということもいえるのでしょう。
私は子供が小さいころ、ブランコでよく一緒に遊びました。尊敬する教授からは、子供が「もういいよ。パパ帰ろう」というまで、めいいっぱい遊びなさい。めいいっぱい遊んだ子供は、その後のびやかに育つと聞きました。
土日が子供たちと遊ぶ日になっていた私にとって、ブランコにのるときは勝負です。「今日はパパ帰ろう。もういいよ」っていうまで遊ぶぞと。
ところが、いざブランコにのると、子供は「きゃっきゃっ」とわらいながら、ずっとのっている。1時間が経過しても、全く問題なく笑っている。さすがに根負けして、自分から「さあ帰ろうか」といってしまうのです。そして帰路で、「ああ、まけてしまった」と反省することがよくありました。
でもある日のこと、徹底的にブランコをして、「パパ、もう帰ろう」っとポンとブランコからおりたとき、そのときの満足げな子供の、最高の笑顔は今でもはっきり覚えています。勝ち星では、おそらく8勝7敗くらいかなと思います。勝ち越しはしていますが、決して、優勝戦線にのこるレベルではなかったかなと感じています。こんな遊び方ひとつも、子供たちの心に刻まれているのではないかといつも感じています。

イメージ:ブランコ

子育てには映画の撮影のように、TAKE2,TAKE3はなく、待ったなしなのが現実。厳しいですよね。いつもライブ感覚でいる必要がある世界です。
人は年代によって、忙しさが異なります。会社のポジションによっても、多忙でとても家族とともに行動はできないということもあるでしょう。出張につぐ出張で、時間のとれない時もあるでしょう。子供が小さいときといえば、本当に仕事が忙しい時期でもあり、体が二つあればと思うような状況もきっとあることでしょう。しかし、そんな時こそ、過ごし方が大切になってくるのです。そんな時には想いを送る、気を送るだけでもいいようです。

「娘たちは、今どうしているかな?」「元気かな?」「笑顔で過ごしているかな?」と、想いのメッセージを心でとなえるだけで、海外からも気は届くようです。
私は、海外出張の時、訪問した国々で、必ず絵葉書を書いていました。タイトな出張の中でも、機内やホテルでのすきま時間で心を届けることができると感じています。
離れていても、テレパシーとなって想いは届き、家族は守られていくということも聞いたことがあります。ぜひ、お忙しい場合には、想いのメッセージを届けてください。愛する娘のためとなれば、自分の行動も変えていくことも可能になるのではないでしょうか?

時折、世界平和を叫びながら、自分の家庭が崩壊している方がいます。それでは本末転倒ですね。まず自分の家庭を幸せにすることに、最大の努力をかたむけましょう。そのうえで、世界ですよね。
よく、私の父が言っていた中国の言葉、それは「修身斉家治国平天下」ということです。
まず「修身」、これは自分自身をしっかりしていく、自立していくということ。そして「斉家」、家を繁栄、幸せにしていく。そのうえで「治国」、国を治め、「平天下」天下を平和にしていく、という考え方です。そう、順番はまず自分からということですね。

ゲーテも言っていましたよね。「一人ひとりが家の前を掃除できれいにしていきましょう。そうすれば世界中がきれいになっていく」と。私はとても共感できます。
会社であれば、まず自分自身をしっかりおさめて、ハッピーな状態にいること、そして自分のグループ、次に部、さらには会社、という順番になるでしょう。一つひとつの小さな課ではたらく人たちが幸せなら、全体をみても幸せになっていくはずです。
会社の方針以前に、自分が所属する最小単位のものを幸せにしていく努力だと感じています。

そんな生き方を、子供たちはみているということになりますね。おおいに自分らしく生きていけばいいと思うのです。だれにきがねもいらない、自分自身の人生ですからね。仕事も大事、そして家族ももちろん大事。幸せに向けて一つひとつ取り組んでいきましょう。

父親の役割として、仕事以外にもできることがあると思っています。いろいろある中で、社会での出来事、いろいろな事象などをTVではなくリアルな形で、ありありと伝える必要があると感じます。社会の空気を家庭にふかせていくということです。それはスポーツだったり音楽だったり、セミナーで聴いたことだったり、いろいろな出会いであったり。社会の空気を思い切り、家庭に持ち込んで、それをわかちあっていくことだと思います。社会の目が開いていくことになるでしょう。
そしてその行動が、父親のやるべきことだと、娘たちも認識をしていくことになると思います。「ネットやTVなんかより面白いぞ」という気合でのぞみましょう。

そのようなことがあれば、家庭と社会が大きな橋でつながり、それが幸せな道へとつながっていくことになると感じます。そんな姿を子供たちは、しっかりみているということでしょう。
お父様、特に娘さんのおられるお父様、自分の考え方や行動には、気をつけていきましょう。できる限りでいいと思いますが、がんばれ! 世のお父様、家族の未来のため、そして自分の未来のために~
子供に背中をみせていきましょう!

個人的なことですが、娘二人が素晴らしい伴侶にめぐりあい、今、幸せに暮らしていることに心より感謝している日々です。ともに力をあわせ、のびやかに人生を生きてほしいと心より願っています。

★:『娘の恋愛能力は父親が決める:愛に悩む女性のために』ヴィクトリア セカンダ (著)、岡本 きよみ (訳)、PHP研究所


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当、のちに営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。その後、グループの関連会社の代表取締役社長を経て、現在はビジネスパーソン向けの人財開発事業に情熱を注いでいる。
資格としては、GCDF-Japanキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。
人財開発コンサルタントとして活動し、2024年12月よりPHPゼミナール講師も務めている。

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