【人事担当者を元気にするコラム Vol.5】60対40とは? ~幸せの魔法の数字~

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2020.03.27

「パレートの法則」をご存知の方は多いと思います。「80:20」の法則ともいわれますね。イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見したもので、端的にいえば全体の20%のアクションが、その結果の80%を占める、という法則です。

たとえば
・企業の売上の80%は、顧客全体のうちの20%が生み出している。
・商品の売上の80%は、全商品のうちの20%の銘柄が生み出している。
・仕事の成果の80%は、費やした時間全体の20%の時間で生み出している。

といったものです。これはビジネスでも、優先順位をつける際にとても有効な考え方の一つといえます。

今回ご紹介するのは、それとは異なる法則、幸せの「60対40」という数字です。これは特に、家庭生活に有効なマジックナンバーといえるものだと私は感じています。

家庭生活における夫婦の例で一緒に考えてみましょう。

夫婦といっても、いろいろな夫婦がいますよね。
うまくいっている夫婦、仲が今一つの夫婦、100の夫婦がいれば、100の形があるのが夫婦です。

たとえばある夫婦が、お互いに仕事と家事とを分担していたとします。
料理や洗濯、掃除、ゴミ出し等々、どちらが担当するかといったことは、各ご家庭で異なることかと思います。なかなか、数字には表しにくいものではありますが、ときに奥様側から「私はこれだけやっているのに」とか、「私はここまでやっているのに」、「少しもわかってくれない。この程度しか答えてくれない。なんなのこの人は」などと言われてしまうことがあると思います。
ある面、奥様の不満爆発ですね。

一方で、ご主人側からも「俺はこれだけ稼いでいるんだ。夫婦共稼ぎといっても、俺の金額の方が大きいのに」とか、「俺はこれだけつらい中でやっているのに」、「俺の嫁はわかっていない。同じ以上に家事を要求している」といった声があがるかもしれません。ある面、ご主人の怒りMAXですね。

このように、なかなか一筋縄ではいかないものですが、私はいつも、夫婦間はリズムが呼応しているように感じています。
「ありがとう」や「おかげ様」ということができれば、素直に「いつも感謝しているよ」とか「ありがとう」といいあえる関係になっていくように思うのです。

その導きとなる基本ナンバーが、60対40といえます。
たとえば日常生活で、妻が「私は50の作業をしているのに、私の夫のやることは、50にも満たない。」「なによ! まったく!」と感じている時があるとします。でも実際には、その夫から50以上の見返りを求めているということはないでしょうか?

一方夫の方も、「俺は50の仕事をいつもしているのに、妻のやっていることは50に満たない。もっと気持ちよくやれないものかな」、などと感じている。
これはお互いが、50対50、つまり、家庭内のGIVE & TAKEを100%で求めた時に起こる現象ともいえるかもしれません。

この時に、こう考えてみませんか?
仮に自分が60の仕事や作業、家事などをしたとして、パートナーが40のことをしてくれたら、よしとするのです。40戻してくれれば最高! ハッピー! 大満足! ととらえるのです。
これをお互いに心掛けたら、どんなことがおこるでしょうか。
この数値の中には単なる作業だけでなく、精神面、心のサポートなども含みますので、なかなか数値化することは難しいかもしれませんが、イメージすることはできるはずです。
40のことをしてくれたら、感謝の気持ちをもつのです。それができれば、毎日、ありがとうの気持ちになり、毎日ハッピーですよ、お互いに。満足度100%、毎日上機嫌で過ごすことができると思いませんか?

この考え方をもつことにより、お互い対応してくれたことに感謝することはあれ、文句をいうといったスタンスは少なくなり、結果として、夫婦円満に近づくのではないでしょうか?

簡単なことのように思えるかもしれませんが、60対40は魔法の数字です。
自分は60をしっかりやって、相手からは50求めるのではなく、40だけで幸せを感じるマインドにシフトする。上機嫌の日々のはじまりです。

明治大学文学部教授の齋藤 孝さんは「不機嫌は罪」といっていました。
一人の不機嫌は伝染していくので、罪が重いそうです。たしかに不機嫌な人が職場やサークルにいると、周りにまで影響しますよね。

また60対40のスタンスで行動するのと合わせて、「当たり前」という言葉をなくしていくことも大切です。常に感謝するという姿勢に切り替えていく。同じ作業や行動をしあったときに、「当たり前」と感じるのと、「ありがとう」と感じるのでは、天と地ほどの違いがあります。しかもそれは、相手にも伝わってしまうものです。40してもらえたら「ありがとう」のスタンスであれば、相手だっていつも感謝、そしていつも笑顔になります。

夫婦の間には、こういったやりとりが毎日起きています。ある夫婦の間には、「ありがとう」という感謝の言葉が毎日とびかう。またある夫婦の間は、お互いが「当たり前」と思っているだけ。どちらが幸せに近づくかといえば、答えはあきらかですよね。
だからこそ、「ありがとうよ、こんにちは! 当たり前よ、さようなら」です。

私はいつも、ありがとう波動が、幸せを導くと思っています。
いい波動は幸せスパイラルがかかり、さらによくなっていきます。
逆もしかり、うまくいかないと負のスパイラルがかかってします。
これには中間がないので、両者には大きな違いがあります。

今はLINEなどがありますから、口下手な方でもスマホでいいあえるのではないでしょうか? ウサギやクマの絵に力をかりて、メッセージを届けることだってできますよね。言葉にだすのが最高ですが、それが苦手な方は、LINEメッセージもおおいに活用していけばいいと思います。
ただやはり、声にださないとわからないこともありますので、ぜひお互い、日々いいあいましょう。

私の場合、子供の友人たちから「外国人のファミリーみたい」と言われています。それは感謝の言葉や愛情を示す言葉が、日常にとびかっているからだそうです。
私にとってはごく普通のことだと思っていますが、言葉にして発信するタイプなので、一般の日本の方々からみると、思いっきりラテン系人物に位置するようなのです。

そういえば、ビジネスにおいても、ラテン系であるスペイン人とはものすごく気が合ったという記憶があります。
バレンシアにある食品メーカーのロペス社長は、フランス語がベースで英語ができない。私はフランス語ができないので、ビジネスでは英語。全く共通する言語はないのに、顔を合わすと「アミーゴ!」と叫びながらお互いにハグをする。まさにラテン系ですかね。そんな中で、シンガポールからの製品を新規で輸出していったのですから……。
私が異動となり、海外事業から離れてからもう20年くらいたっているというのに、先日、会社の海外事業部のメンバーがそのスペインの会社に行ったところ、名刺交換をした途端にロペス社長が「Mr. 山本は元気にしているか?」と言ってくれたようです。これだけ相手の記憶に残るということはまさに、ラテンの血が流れているのかもしれませんね。

60対40は家庭だけでなく、ビジネスの現場でも役に立つ考え方だと思います。たとえば上司がメンバーに対して様々なサポートや指導をしたとする。それが60だったとして、メンバーから40のフォローがあったら満足する。そして感謝する。
リーダーがリーダーでいられるのは、フォロワーがいるからこそだと、感謝の気持ちで日々を接する。

教育現場でもそうでしょう。学生達が、先生や講師は教えるのが当たり前だと受けるのと、人生の極意を教えてくれてありがたいと思って受講するのとでは意識が大きく変わりますし、吸収の仕方だって質・量ともに変わります。
また先生や講師側からも、生徒や受講者が聞いているのは当たり前と感じるのか、自分の生き方、声に耳を傾けてくれていることに感謝していくのか、ということでは大きな違いがあるでしょう。お互いが感謝しあって、学びあっていく関係性では空気感も変わり、最大の効果が得られるはずです。
心の満足感が変わるとともに、ありがとうの数が間違いなく増えます。

思想家である小林正観さんは、言っています。
ありがとうは望みを叶える魔法の言葉。「心をこめなくてもいい」から「ありがとう」を2万5千回いうと、なぜか涙がでてくる。気持ちをこめて「ありがとう」をあと2万5千回いうと、突然、自分にとって嬉しく、楽しく、幸せな奇跡が起こると言っておられます。
ありがとうの言葉にはものすごい力があるようです。
その言葉につながるのも、60対40の考え方がベースになると思います。

たとえばある組織で、一人ひとりが60対40を意識している部署やグループがあったらどうなるでしょうか? つまりみんなが求めず、与える感覚をもっているわけです。与えることが勝ち越していく姿ですね。もちろん一人でやっても効果がありますが、これをグループで実施したら、さらに大きな効果があると思いませんか?

みんながハッピー、みんなが上機嫌。上機嫌が伝染したらある意味、「幸せ満開!ハッピー全開!」ですよね。ぜひこのウェーブを起こしましょう。
だれからやります? まず、自分からですね。まず「隗より始めよ」です。
「60対40」という魔法の数字をぜひ活用して、幸せ波動をひろげていきましょう。


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。
資格としては、GCDF-Japanキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

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