【人事担当者を元気にするコラム Vol.31】最近、ジャンプしてますか? ジャンプするとき、あなたはどうします?

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2022.05.27

みなさんにお聞きしたいと思います。最近、ジャンプしたことはありますか?
そう、ポーンと上へとはねるやつです。

私たちがジャンプをするとき、どういう動作をします? まず、しゃがんで、それからジャンプしますよね。膝を伸ばして立ったままの状態からジャンプしても、あまり高く飛ぶことはできません。ジャンプの時は、一度、しゃがむという行為をします。
そんなこと、当たり前じゃん、と多くの人が思っていることでしょう。

では、人生の中ではどうでしょうか? 人生でもジャンプをするようなタイミングがありますよね。ただ人生の中のジャンプは、そのタイミングや時をみるのが難しいものです。そのため、しゃがまず、沈まず、そのままの状態からジャンプしようとしていることはありませんか? まるで直立の姿勢からジャンプするような状態です。

多くの人は、できればいつも順調でいたいと思っているはずです。だから、沈むようなことや、いやなことなどがないまま、できれば平常のままいきたいと考えてしまいます。
その気持ちはわかりますが、より高く飛ぶためには、一度しっかり膝を曲げて、そこからジャンプする必要があるようです。ある面では、膝を曲げることは、次なる場面に向けて、準備している状態ともいえると感じます。

これを会社生活にあてはめてみましょう。異動などでつらい想いをしている時、あるいはなかなか成果や結果がでにくい状況になっている時、しょうもない上司の下についてしまったときなどです。そんなときに、こう考えてみませんか?
「今は、次にジャンプするための準備なんだ。次のジャンプに備えるんだ。そのジャンプのために今は、膝をしっかり曲げているんだ」と。
この膝を曲げている角度、深さは、次に大きくジャンプするときのための貴重な工程なのだと信じていくのです。
次に向かうプロセスへ、未来へと想いをよせることができたとしたら、その瞬間、一見マイナスにも思える状況が、大きな意味をもってくるのだと思います。

イメージ画像:ジャンプ!

特に今は、まだコロナという未曽有の出来事が世界を覆っています。
同じように、会社の中で、自分の力ではどうすることもできない圧力がかけられる瞬間もあるでしょう。そんな時は、今を「人生の冬の時代」と位置付けて、徹底的に準備する期間にする、学ぶ期間にすると決めていくことも大事だと感じています。
季節に春夏秋冬があるように、人生にも四季があると考えることです。今、この時期は準備なんだと位置づけ、未来に思いをよせていくだけで、気持ちは少し軽くなるのではないでしょうか? 準備としっかり位置づけさえすれば、結果がでなくても焦ることもないでしょう。

よく会社生活や人生は、INPUTとOUTPUTの繰り返しだといわれます。
もちろん、会社や上司は「今の君はINPUT中心の時期だ」とか、「OUTPUT中心の時期だね」なんていうことは、いってはくれないでしょう。
ただ自分の中で、どちらにウエイトをかけていくべきなのかを考えて、INPUTとOUTPUTの心のシェアを決めていくことはできると思います。自分の心の中で、今の自分が春夏秋冬のいつなのか、ということを考えて行動する感覚です。
これには、会社の中での風の方向をいかに読むかということも大切で、センスと観察力が求められるものと感じます。
同じ営業であっても、担当客先や状況で、まさにOUTPUTで売上爆発させていくのか、それとも数字に追及されながらも、意識の中ではINPUTに軸足をのせていくのか、その行動パターンは変化していくことと思います。そのためにも、自分の状況をしっかりと把握していくことも大切になってきます。
ある面では、自ら積極的にジャンプ前のように、膝を曲げる作業にウエイトを置いていくことが必要なときもあります。語学や資格取得などの学びも、この膝を曲げる作業に相当することでしょう。

自ら曲げるときも、自分の状況に気づく必要があります。やはり準備が大切だと感じています。
フランスの生化学者で、ワクチンの予防接種という方法を開発したルイ・パスツールは言っています。「チャンスは準備のないものには、微笑まない」と。
もちろん、学生ではありませんので、成果も出さず、ひたすら学び続けるような、INPUT100%という状態にはならないでしょうが、INPUTとOUTPUTのシェアは、自分自身で決めていくことが大切になると感じます。

逆にOUTPUT100%に近い状態になることはあると思います。
私が40歳で新規事業の営業リーダーをまかされたときは、まさにOUTPUTオンリーだったように感じます。学ぶことより、成果をだすということにフォーカスされていたと思います。
ただ、成果を出すだけに集中している状態は、あまり健全ではないと思います。学びの時間が少なくなるため、リーダー論やマネジメント論なども新しい入力がなくなり、過去の蓄積だけで勝負するような状態になります。その結果、すこしずつ言葉や論理が風化して、枯れていく感覚にとらわれていくように感じました。
ミーティングでのメッセージも毎回同じになってきたり、新鮮さがきえてきたりして、エッジが効かなくなってしまいます。鮮度が落ちていくと、言葉からのメッセージ性が弱くなっていくように感じます。
INPUTとOUTUPUTの考え方には諸説あると思いますが、やはりバランスが大切で、どちらかに完全に一辺倒になるのは、よろしくないと思います。仮にOUTPUTが最大に求められる状況となっても、最低20%くらいは、INPUTのパワーを残す感覚が大切になるでしょう。

一方で、準備そのものが、ジャンプの時の膝を曲げた状態だともいえるでしょう。そして挫折経験も、この膝曲げにつながることがあるでしょう。
先日、元トップアスリートの朝原宣治さんのセミナーに参加する機会に恵まれました。のびやかでとてもさわやかな方でした。
朝原さんは、オリンピックに4回出場し、2008年の北京大会では、4×100mのリレー(400メートルリレー走)で見事、銀メダルを獲得しました。

そんな朝原さんのことを、順風満帆な陸上競技生活をおくっていたように思っていたのですが、実はオリンピックで、大きなミスを経験されています。
1996年に初めて出場したアトランタ大会、リレーではなんと朝原さんのバトンミスにより予選敗退となってしまったのです。当時、世間もマスコミも大騒ぎをしました。
こんな時、どう考えるかがポイントです。ずーっと引きずってしまう人もいることでしょう。しかし朝原さんの場合、もともと楽天的に考えることができるようになっていたこともありますが、このような場面はメンタルで決まってくる、と言っていたことが印象的でした。
そして、メンタルには強い、弱いはないと。メンタルにおいては、物事をどうとらえるかというスキルと、そのトレーニングによってきまってくるものなのだと言っています。

4年に1回のオリンピックでバトンを落として失格というのは、努力してきた期間や周囲のことを考えると、本当に悪夢のような出来事です。ただ、その出来事をできるだけ前向きにとらえることで、乗り越えていったといいます。
たとえば、このマイナスをプラスに変えていく考え方をもち、前に進む考え方に変えていくこと。リレーでは失格になったものの、個人100mでは日本人で初めて、準決勝に進出した自分を誇りに思うようにすることなど。ポジティブに考えていく工夫と、そのためのトレーニングが大切だと力説していました。

ある面では、この出来事をジャンプのために膝を曲げていく作業に置き換えていけば、いいのだと思います。この屈辱的なことをバネとして、次なるオリンピックで輝ければいい。輝いたとき、あのバトンミスがあったからこそ、今があるというイメージをもてばいい、ということにつながります。
実際に、朝原さんはその12年後にメダリストになっていったわけです。

また、ラグビーの元ジャパン代表、廣瀬俊朗さんのお話を伺う機会にも恵まれました。廣瀬さんと言えば、北野高校、慶應義塾大学、東芝、ジャパン代表を通じてキャプテンとして活躍されました。テレビドラマ「ノーサイド・ゲーム」に浜畑役で出演していたことで、街中でいきなり「浜畑~」と呼ばれることもあったそうで、テレビの影響力のすごさに驚いたそうです。

ラグビーといえば、2019年ワールドカップでは、ジャパンは初めてベスト8に入り、日本中を熱狂の渦にまきこんでいったことが、記憶に新しいと思います。廣瀬さんの話は、その前の大会、2015年南アフリカでの開催のことでした。ジャパンに選ばれた廣瀬さんでしたが、現地に行っていたものの、1試合も試合に出場していないのです。その少し前には、なんとキャプテンはく奪ということも経験していました。
「なんどもやめよう」と思ったそうですが、自分でなにができるか、自分のやれることをやろうと裏方の仕事に徹していったそうです。

ラグビーは利他精神にあふれた素晴らしいスポーツです。リザーブの選手がいかに支えていくか、それがレギュラー選手にも息吹を、力を与えていくことになっていきます。まさにスターの廣瀬さんが裏方に徹したことが、あのプロスポーツ史上最大のジャイアントキリング(世紀の番狂わせ)、あの南アフリカから勝利を奪うことにつながったのだと感じます。

ある面では、廣瀬選手のサポートも大きなジャンプのための膝曲げになっていたのではないでしょうか?
現在、廣瀬さんはいろいろな世界で活躍されていますが、このワールドカップでのご経験は多くの方に勇気を与えていくことになっていると思いますし、廣瀬さん自身の魅力にもつながっていると思います。

イメージ:ラグビーの試合会場
未来をみすえてのジャンプのためにしゃがむ時、どの方向にどうジャンプするか、その目標は非常に大切です。
なにも目標がないとどうなるのか? 以前、こんな話を聞いたことがあります。
砂漠のど真ん中に立ち、目標になるものなどをなにも見ず、ただ、ずっと長い距離を歩いていくとします。すると人は右足と左足の長さが異なるため、やがて短い方の足が支点となって、大きな円を描くことになってしまい、結果として、元の位置にもどってしまうというのです。
そうならないためには、なにが必要でしょうか? そう、やはり目標です。
たとえば、北極星などを目標として歩いていけば、歩く方向などを修正していくことが可能となり、行きたいところへたどり着くことができます。
日々、目標を定めて、すすんでいきたいものですね。

みなさんはどの目標を北極星のように目指し、どのように達成していきますか?
その目標をしっかりみすえ、準備し、膝を曲げて、ジャンプしていきましょう。


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。
資格としては、GCDFキャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

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