【人事担当者を元気にするコラム Vol.27】ダイヤモンドって、なぜ輝いているの?

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2022.01.28

今、会社での人間関係はうまくいっていますか?
上司との関係は、いかがですか?

会社生活の中では、うまくいっている時と、うまくいかない時とが、まるで海岸へ打ち寄せる波のように、交互にやってきているのではないでしょうか?
私も仕事において、そして人間関係において、過ごしやすい時とハードな時とがありました。人との関係性は、なかなか選ぶことはできないように思います。

私が新人の頃のこと、信頼する上司とお酒を飲んでいたとき、不意にその上司からこんなことをいわれました。
「山本君、会社生活は所詮、上司次第なんだよ」と。
まだ若く、とんがっていた頃の私は、なんて夢のないことを言う人なんだと思いました。上司次第のわけがないじゃないか。自分さえしっかりしていれば、なんとでもなるじゃないかと。何事も自分の力で、なんとでもなるはずだと思い、強く反発したことを覚えています。
「上司は『上使』という言葉だと思って、上手に使っていくものなんだ」などと周囲に言ったりもしていました。とんがっていましたよねえ。
でもこれは、20代の頃の私が間違いなく感じていたことでした。

ただ、今になって思い返すと、その上司の言葉は、ある面では真理であり、的を射た発言にも思えます。もちろん上司に対して、必要以上におもねることもないのでしょうが、異動や昇格といった権限を握っているのは、上司であるということは事実なのですから。つまり、本来的には戦うべき相手ではないはずなのに、上司にぶつかっていった自分がいたということです。若かったなあ。
会社生活においては、仮に気の合わない上司であったとしても、人間関係をうまくできるように努力していくことは、大切な要素になると思います。

それでもやはり、合わない上司があらわれることはありますね。
「なんで、こんなこといわれるねん!」
「冗談じゃない。なんなん?!」
って感じのこともありますよね。(なぜか関西弁)

みなさんはいかがでしょうか? ちゃぶ台をひっくり返したくなるようなこと、ありませんか? 私は何度もありました。

「人の口に戸はたてられぬ」の言葉どおり、上司の口に戸はたてられません。
ただ、上司の言葉をコントロールすることはできませんが、その言葉に対して、どういった反応をするかという選択は、自分自身に委ねられています。

イメージ:上司に謝るビジネスマン
上司に対して「こいつ、なんでこんなことをいうのだろう?」と、いくら思っても無駄です。なぜかって? 上司は上司であって、あなたではないからです。
育った環境や価値観などが全く異なる人が、上司として登場することもあります。残念ながら、直接的に、上司の言葉や姿勢をかえることはできません。できるのは、その上司の態度や言葉に、どのように自分が対応するか、その反応の仕方やとらえ方を自分で選ぶことだけです。
ただ、そうはいってもその反応の結果として、上司の次の反応に影響を与えることはできるかもしれません。

慶應義塾大学の名誉教授であり、名物教授だった村田昭治先生は、よく言っていました。「上司からの指導や叱責など、いろいろあるだろう。それらはすべて磨き砂と思うこと。その磨き砂に磨かれて、人間性も輝いていくと考えると、厳しい指導がすべて感謝に変わっていく。ダイヤモンドがなぜ輝いているか、それは磨かれて、磨かれて輝いていくんだ。もしダイヤモンドが磨かれなければ、単なる原石のままなんだ。叱られたり、指導されたりすることは、すべて磨き砂だと思ってごらん。この磨き砂によって、自分は輝いていく。そのプロセスだと考えることがとても大事なんだ」と。

たしかに叱られた時、すべては自分の成長を促していくことなんだと考えることができれば、叱られたこと、いわれたことは宝物のように思えてくることでしょう。
叱られたとむくれるよりも、それは磨き砂だとメタファーしてとらえていけば、人生そのものが変わっていくと思いませんか?

イメージ:ダイヤモンドの輝き
私もよく先輩から「怒られているうちが花」と聞かされてきましたが、たしかに注意をするのは、その相手に期待しているからこそです。もし期待もしていなければ、「こいつしょうがねえな」と上司間で悪い意味で名前が上がるようになり、叱ることどころか、指導さえなくなってしまうでしょう。その結果、成長できないということになってしまいます。

私の大好きな斎藤一人さん(銀座まるかん創業者)は、口うるさい上司が会社にいるときは、出社前にこう唱えるといいとアドバイスしています。
「さあ、今日も○○部長滝にうたれにいくぞ」と。つまり怒られることを滝(にうたれること)としてメタファーしているんですね。
滝にうたれる感覚をイメージしていれば、それと比べれば、上司の言葉などは大したことはないですね。しかも、秘境に行かなくとも滝行ができるのですから、これは感謝すべきだともいえます。
そして、怒られた後は大きな声で「ありがとうございました! これからもご指導よろしくお願いします!」と、オフィスに響き渡るようにいうのも一つのコツです。私も新人のとき、かなり怒られたことがありましたが、その時も、大きな声でお礼を言った記憶があります。
「ご指導、ありがとうございます!」
まず、周囲がびっくり。なにがあったのか? という空気感になります。そして怒った相手もびっくりします。あまりのことに、私も少し言い過ぎたかなと感じた記憶があります。

「磨き砂」という発想を手に入れると、会社の中で起きている指導や注意といったもの、すべてが将来の恵みにみえていくから不思議です。いやな上司こそ、「磨き砂」と思いましょう。

ただ、なんでも我慢しなさいということではありません。そんな私でも何度か「完全にぶちぎれたこと」があります。
たしか入社3年目のことだったと思いますが、ある上司からあまりにひどい叱られ方、いや怒られ方をしたのです。きっといまなら完全にパワハラで、おそらく一発退場になるような上司がいたのです。
そこで、私は勇気をもって、その上司に想いを伝えることにしました。
まず事前に文章を書き、何度も繰り返し練習(上司にぶつかる練習)をしました。その時は、私の父も応援してくれていました。父は、「その男は、必ず外の喫茶店に出ようというはずだ。だが決して出るな。職場ではっきり言え」とアドバイスしてくれました。

そしてその日、ぶつかる前の最後のタイミングで、もう一度トイレで練習してから本番へ。
「お話したいことがあります」と大きな声で上司にいうと、上司は立ち上がりながら、「おう、外にいこうか?」と。私の方は、キタキタって感じです。
「いえ、この場で話します」と宣言したあとは、練習どおり、強く伝えました。
「私は、あなたの態度にたえられません。あんないい方をする必要もないし、ゆるすことができない。あなたには決してついていけない……」
そういった内容でしたが、手紙にして3枚分ほどあったので、結構の長さだったと思います。
私が上司とぶつかっているのは、周囲もわかります。まわりの女子社員は、大変なことになったと、遠くからこわごわみている。そんな空気感で話はすすんでいきました。

すべてを言い切って、私はすっきり。一方でその上司は、とてもばつが悪そうにして、そそくさと外へ出ていきました。
そしてそれからは、理不尽なことはいわれなくなりました。

やはり、あまりにひどい時は、ハッキリという必要があるのかもしれません。
自分にとって、これは許せないと思うことをされたり、自己の尊厳にあたるようなことを踏みにじられたり、価値観のなかで、これは許せないといったようなことがあったときには、いうこともやむを得ないかもしれません。もちろん会社生活で、そこまでなることは、そんな回数のあることではないと思います。

メンタリストのDaiGoさんは、昔いじめられていたことがあり、それがもう限界だと思った時、技術室にあった斧を相手になげつけたといいます。それからは「こいつはヤバイやつだ」と思われるようになり、いじめられなくなったそうです。
ケースは異なりますが、あまりに理不尽なときには、戦うスタンスも必要なのかもしれません。もちろん、できるだけそういったことがない方がいいですけれどね。

ダイヤモンドはいつもキラキラしています。人がいつでもダイヤモンドのように輝いているためには、いつも心がハッピーである必要があります。
そのためのコツの一つが、「Three Good Things」です。
夜、一日終えるとき、日記をつけている方はいらっしゃいますか?
その日記に、今日会った一日の出来事の中で、良かったこと、嬉しかったことを3つ書いていくことを「Three Good Things」といいます。

良かったことを書くと決めると、その日にいろいろなことがあった中でも、良かったと思える出来事を探しはじめます。だいたい身近で、いいことがあったことに気づくものです。野球にたとえると、ホームランのようなものは少なくても、小さないいプレイがたくさんあることに気づきます。
朝、会社にいって、無事に帰ってきたこと。事故にあわずに帰ってきた、これはすばらしいことです。朝、家族で食事をした。これはだれかが病気だったらできないことです。家族でTVをみながら、大笑いした。家のお風呂が気持ちよかった、これは健康があってこそのものですね。
こういった、たくさんの「小さな良かった」ことに出会えることでしょう。
そう考えると、起きた出来事も解釈次第で変わっていきます。
上司に叱られた時、腐るのではなく、「俺は期待されているんだ」と思うこともできるようになるはずです。

こうして書いていくと、今日一日がよかった日として記録され、記憶されていきます。そしてその一日ずつの積み重ねで、素敵な1ヵ月になり、さらに積み重ねて幸せな1年となり、結果として、幸せな人生につながっていくのです。
この小さな一日をハッピーに輝かせることが、その延長にある人生そのものを輝かせていくことにつながっていくというわけです。

また「ピーク・エンドの法則」というものがあります。これは、人は出来事のピークとエンド(最後)しか覚えていないという法則です。人生でもピークをいいものとすれば、人生そのものがよくなっていきます。
また「終わりよければすべてよし」とはよくいったもので、人はエンドを記憶しますから、終わりがよければすべてハッピーになっていくものです。
その点からも、ディズニー映画は素晴らしい。すべてはハッピーエンドですから。

そのディズニーの世界では、「Dreams come true」と「Happy End」という2つのことを伝えようとしていくなかで、その言葉の背景として必要なものが抜けていたといいます。
「Dreams come true」ってよく聞きますよね。「夢がかなうよ」と。でも、この言葉の背景には、とても大切なメッセージがあったのです。それは「だからあきらめないでね」ということです。
もうひとつ、「Happy End」という言葉。この背景にも大切なメッセージがあります。それは、「今はつらくても」ということです。
この2つのメッセージをふまえると、ディズニーの世界をさらに深く理解できるような気がします。

すべての出来事を磨き砂ととらえ、ダイヤモンドの輝きを得ていきましょう。
そしてこのメッセージを心にとめておきましょう。
「あきらめないでね。そして今はつらくとも……」


▶ back numberはこちら
 山本実之氏による「人事担当者を元気にするコラム」の
 バックナンバーはこちらからお読みいただけます(一覧にジャンプします)

Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。
資格としては、GCDF-Japanキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

一覧に戻る