【人事担当者を元気にするコラム Vol.14】パパ、サンタクロースって本当にいるの?

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2020.12.18

クリスマス、私たちには、いろいろな思い出があると思います。その中で、小さなころ、だれもが疑問に思うことの一つ。それは、「サンタクロースって本当にいるの?」という問いだと思います。

これは、米国であった本当の話。
ニューヨークに住む8歳の女の子がパパに聞きました。
「パパ、私のお友達はサンタクロースなんていないっていうの。私はサンタクロースはいると思っているの。サンタクロースは本当にいるの? ねえ、教えて!」
そう聞かれたパパは、「そうだな、パパはよくわからないけど、新聞社の人ならいろいろなことを知っているから、新聞社の人にきいてみたらどうだい?」そう答えました。

すると女の子は、ニューヨークに古くからある有力紙「ザ・サン」を発行する新聞社に手紙を書きました。
「私は8歳の女の子です。私の友人は、サンタクロースなんていないっていいます。私はサンタクロースはいると思っているのです。 サンタクロースっているのでしょうか? どうか本当のことを教えてください」

すると、この手紙を受け取った編集者は、ザ・サンの社説にこう書きました。

「サンタクロースはいます。そのお友達がまちがっています。
サンタクロースの姿はだれにもみえません。でも、だからといって、サンタクロースがいないということにはならないのです。目にみえるもの、手に触れられるものだけがこの世のすべてではないのです。
たとえ目にみえなくても、愛情、友情、思いやり、やさしさは感じることができるでしょう。サンタクロースをだれもみたことがないからといって、なんでこの世にいないなんていえるでしょうか?
愛情、友情、思いやりはみえないけれど、この世に存在するように、サンタクロースはいるのです。そして、この世で大切なことは、大人にも子供にもみえないのです」

なんて、素敵な社説でしょう。

この話を初めて知ったのは、今から30年前。この話がとてもいいなと感じて、当時入院していた私の父に、枕元でこの話をしたことを思い出します。だいぶ具合がわるくなっていた時でしたが、この話をしたときになにかを感じていたようで、うなずいたように私にはみえました。

少女が書いた手紙と社説<少女が書いた手紙と(左)と掲載された社説の一部(右)>

クリスマスの時期になると、私はこの社説のことを思い出します。
目に見えないものこそ、価値がある。最近、強く感じることの一つです。

ヘレン・ケラーはこう言っています。
「世界で最もすばらしく、最も美しいものは、目でみたり、手でふれたりすることはできません。それは心で感じなければならないのです」と。

時々、目に見えない物は信じないという方もいらっしゃいます。
そういう方には、このように話すことがあります。
「物理的な面から、赤外線や紫外線って肉眼ではみえません。でも特別なセンサーがあれば赤外線、紫外線はしっかりみえますよね。人間の肉眼でみえないだけで、そこには存在します。肉眼でみえないから、存在しないってことは言えませんよね」
私は、将来的には、信念とか思いといったものまでも、サイエンスで見えるようになる日がくるようにも感じています。

私は出張でパリに行ったときに、必ず訪ねていた場所があります。
それはパリ市内、リュドュバック通りにある教会。奇跡のメダイユ教会(Chapelle Notre-Dame-de-la-Médaille-Miraculeuse)とよばれている教会です。
この教会はカトリックの中でも、マリア様が正式に降臨されたとされる3つの場所の一つにあげられています。とても美しい教会で、輝いている空気感のある場所です。

昔、子供がカトリック系の幼稚園に通っていたのですが、その幼稚園のシスターから聖書のことを学んでいるときのこと。カトリックのことを全く知らない私は、かなりトンチンカンな質問をシスターにしていました。

たとえば、
「教会って、ただの白い箱ですよね。なんで、そこに集まるのですか?」
「ミサの時、なんで、みんなたったり、すわったりするのですか?」
「なんで、歌をみんなでうたったりするのですか?」
などなど。
家内はそのとき「なんてことを聞いているのかしら?」と、顔が真っ赤になるほど恥ずかしかったといっていました。

確かに今から思うと、管区長まで務められたシスターによく質問できたものだと思います。
でも、そのシスターは、とてもおおらかに人をつつみこむような方で、
「山本さん、みんな楽しい時は、歌を歌ったり、踊ったりしますよね」
(たしかに、納得)
「神様の前で、みんな嬉しくて、おどったり、歌ったりしているんですよ。喜びの姿なんですよ。そしてみんなで集まると楽しいでしょ」
などと話してくれました(これもまた納得)。
きっと普通のシスターなら、なにを言っているの! という感じになるのでしょうが、そのシスターは一つひとつ丁寧に、聖書の言葉などを教え、わかちあってくれていました。とても感謝しています。
そんなシスターから聞いたのが、リュドュバックの教会です。

「もし、パリにいく機会があれば、どうぞ立ち寄ってくださいね」と教会の名前だけを伝えられました。
「まあ、機会があればいきますか」というような感覚でいたのですが、エールフランスの機内でCAの方に尋ねると、「とっても素敵なところです。ぜひ行ってみてください」。とのことで、現地での行き方や住所まで教えてくれました。

実際に教会に行ってみて、その美しさにびっくり。特にマリア様のほほえみは、とても美しく、まさに究極の女性の美しさをそこにみました。
世界中の多くの方がマリア様に恋をしているというのも、わかるような気がします。このリュドュバックの教会は、キリスト教に縁のない方にも、おすすめです。一度訪ねてみる価値のある場所だと思います。柔らかななかに力強いエネルギーを感じることでしょう。

リュドュバックの教会
<Chapelle Notre-Dame-de-la-Médaille-Miraculeuseの内部>

教会では、多くの男性が、階段に片ひざをついて、額に手をあて、祈っていました。その姿のきれいなこと、とても印象に残っています。

しばらく教会にいると、なにやら風がふいたような感覚がありました。
暖かな風につつまれたような感じです。まるで幼いころに縁側で遊んでいるとき、あの午後3時ごろの、なにかひだまりに包まれているような、そんな感覚でした。ある人にきくと、それが聖霊といわれるもののようです。

その教会には、二人のシスターのご遺体が安置されています。外部からみえるような状態になっているのですが、そのお姿はまだ生きているかのようで、ほほえんでいるようにみえます。
200年以上も経過しているのですが、本当にそのままの状態で、これも奇跡の一つといわれているようです。

アサヒビール元社長の樋口廣太郎さん。アサヒスーパードライで、ビールの世界を変えた人物です。当時、昇るアサヒ(朝日)ビールではなく、沈みゆく「夕陽ビール」と揶揄されていた業界4位の会社を、まさに日本一のアサヒビールへと変えた功労者です。
「前例がない、だからやる」などとよく言っておられ、とても明るく、私の大好きな経営者のお一人です。2度ほど、お目にかかったことがあります。
その樋口さんがカトリック信者であることは有名ですが、ある勉強会で、宗教のことについて質問を受けたとき、樋口さんはこう言っていました。
「宗教はあまり難しく考えずに、ないよりあった方がいいんじゃない? 私は、クリスチャンだけど神社へ初詣にいくし、節分には招かれて、豆まきもしている。マリア様に怒られるかもしれないけれど、幸せならいいんじゃないかな?」と。
実は私も、同じように感じることがあります。

遺伝子工学の第一人者で、筑波大学名誉教授の村上和雄先生も言っていました。
「宗教も幸せか否かで、考えればいい。サイエンスの入る世界でない」と。

以前、スペインのバレンシアに出張した時、スペインのメーカーの社長と、他社の日本人と一緒に食事をする機会がありました。
その時に、この日本人は嫌われるだろうな、という場面に出くわしたことを覚えています。

スペイン人は典型的なラテン系。特に、仕事が終わったら、もう仕事の話はしたくない。人生、スポーツ、音楽、美術などなどを他の人とわかちあいたいと思っています。ところがなんと、その日本人は、そんな場で延々と仕事の話をするのです。
相手の反応がイマイチだなんてお構いなし。確かにまじめでいいんだけれど、明らかに「場が違うよね」って感じがしていました。
しかも突然、彼は「私は無宗教なんです。宗教なんて信じていないんです」という話をしだしました。これには私もびっくり。なぜなら、スペイン人の80%はカトリック信者といわれているのですから。この環境で、無宗教を主張するってどういうこと? って驚きました。

多くの日本人は、無宗教といわれますので、そのこと自体はいいのですが、相手の環境、相手がなにを大切にしているかを知っていれば、それはとても言えない言葉です。
ましては、スペインという国でのことです。彼らは笑っていましたが、ひょっとしたら「人間じゃない」と思ったのではないでしょうか? なにかを信じているということは大切なことだと思いますし、その信じているものをお互いに尊重しあうことは、それ以上に大事なことでしょう。

たとえば色であれば、赤、青、黄色、それぞれ好きな色があっていいと思います。色に優劣もなにもありませんから。
宗教もキリスト教や仏教などなど、自分の好きなものがあっていいと思うのです。あなたはこれを信じているのね。私はこれを信じているよと。そうやってお互い認め合い、よかったね。お互い幸せでよかったねということだと思うのです。
相手の大切なことを大切にする、そのことが本当の思いやりであり、そして教養だと感じます。
ともにわかちあう、わかりあうということが大切なのだと思います。

そうそう、ある時、神父さんが言っていました。
クリスマスの日に、教会の前に若いカップルがいたそうです。そしてこんなことを話していたそうです。彼らはクリスマスで飾られた教会をみながら、
「ねえ、みてみて、教会もクリスマスをするんだね?」
と言っていたそうです。
おーっと、のすごいコメントですね。そもそもクリスマスとは何の日なんでしょう? クリスマスにもう一度、考えていくいい機会なのかもしれません。

さて、あなたは「サンタクロースって本当にいるの?」と子どもたちに問われたら、なんて答えていきますか?

どうぞ、素敵なクリスマスをお迎えください。


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。
資格としては、GCDF-Japanキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

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