コロナ禍での新卒採用、成否を分けるポイントとは?

キャリアコンサルタント
株式会社キャリアコンサルティング プレスタ事業部小原 明美

2022.07.19

「どうして、学生さんたちはオンライン面談が始まった時、カメラオフのままなのだろう?」

私は毎月20~30回ほど、初対面の大学生と面談する機会があります。コロナ禍になる前は、オフィスに来てもらい、学生さんと直接会って面談をしておりました。そこからオンライン面談へと変えていったのですが、最近気になっていたのが冒頭で挙げたことでした。
コロナ禍で、コミュニケーションをとる機会が少なくなっているので、初めての面談の時は、わざとカメラをオフにしてこちらの様子を伺っているのだろうか? と思っていました。しかし、ある時「大学側からカメラオフにするように言われているんです」ということを聞かされました。詳しく尋ねてみると、どうやら大学の授業を受講する学生さんが全員カメラをオンにしてしまうと、大学側の通信容量の許容範囲を越えてしまい、授業を行えなくなってしまうので、大学側から「カメラオフにして授業を受けるように」と言われていたそうです。

イメージ:カメラオフのビデオ会議

また、複数でオンライン面談する際に、レスポンスがないことがあります。それは、複数いる中で「自分だけが何かを話す」ことに抵抗があるからだそうです。
そのため、こちらからは「聞こえていますか?」とただ尋ねるだけではなく、「聞こえている方はチャットに“〇”と書いてください」とか「手を挙げてください」など、学生側がレスポンスしやすい工夫も大切です。

23年卒以降の学生は、大学入学当初からコロナ禍にありました。それ以前に大学を卒業した私たちが経験したような、いわゆる「普通の大学生活」を送れてはいません。入学式を経験していなかったり、部活やサークルの活動が制限されていたり、授業を約2年間オンラインで受けている学生です。
本人たちも、「普通」の経験が出来ていないことに対して、非常に危機感を感じていて、それを何とかしようと、例年以上に早く就活に取り組む学生が増えているように感じます。

ここでウォンテッドリー株式会社が行った、就職活動に関する調査(「Wantedly」ユーザーの就活生、22年卒143名、23年卒176名、24年卒79名の計398名を対象として、2021年11月16日〜11月23日に実施)の結果をみてみましょう。
22年卒〜24年卒の就職活動開始時期に関してのデータを見ると、22年卒の100%、23年卒の89%、24年卒の46%の学生が、調査をおこなった11月の時点で、既に就活を開始しているという結果が出ています。大学1年生から就活を開始した学生の比率に注目すると、22年卒の4%に対して、23年卒では10%、24年卒では27%と年々増加傾向にあります。

[Q.いつごろから就職活動を始めましたか?]
図表:いつごろから就職活動を始めましたか?

出典:WANTEDLY WORKSTYRE TREND「22卒~24卒の就職活動に関する調査結果を発表」(https://www.wantedly.com/companies/wantedly/post_articles/373096)より

また、直接人と会う機会が減った分、情報を手にしようと色々調べていることがわかります。

[Q.参考にしている情報源と実際役に立った情報源を教えて下さい。]
図表:参考にしている情報源と実際役に立った情報源を教えて下さい

出典:WANTEDLY WORKSTYRE TREND「22卒~24卒の就職活動に関する調査結果を発表」(https://www.wantedly.com/companies/wantedly/post_articles/373096)より

学生が、参考にしていると回答した情報源のトップは「各企業のHP(94%)」、次が「就活イベントの情報(73%)」、「各企業の採用動画(72%)」と続きました。しかし、実際に役に立った情報源について聞いてみると、トップは「各企業のHP(67%)」で変わりませんでしたが、二番目以降に「就活サービス内の記事(33%)」、「各企業の採用動画(31%)」、「就活Youtuber(27%)」となっていました。

これら情報源のもととなっているインターネットは、効率良く情報を手に入れられるものですが、効果を出せるかは使い方次第だと思います。
例えば、オンライン授業と聞くと、修了率や参加率が低いイメージを持たれる方も多いことでしょう。生徒が受け身になりやすく、教師にとっても生徒がどこまで集中しているのか、理解しているのかを把握するのが通常よりも難しくなります。2000年代後半から始まったオンライン教育ブームの中で、「Massive Open Online Course(大規模公開型オンラインコース)」略してMOOC(ムーク)は、その火付け役になりました。新しい教育の形として注目を集め、アメリカではハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などの有名大学もこぞってMOOCのオンラインコースを作るなど、一気に世界に広がったのですが、その後、問題としてすぐに指摘されたのが、修了率の低さでした。大学生や社会人でも修了率が5~15%程度だったそうです。

ただ、これはオンライン教育自体の失敗ではなく、オンライン教育というツールの使い方の問題だといえます。実際に、スタンフォード大学・オンラインハイスクールは、オンラインにも関わらず全米トップ校として選出されているのです。校長の星友啓さんは様々な取り組みに挑戦していきます。その中の一つがオンラインの「反転授業」です。授業は12名前後で、予習を前提にディスカッションや演習問題に取り組むというものです。全ての生徒が積極的に参加することが要求されるため、オンラインの環境でも受け身になることを防ぐことができるのです。
(星友啓『スタンフォードが中高生に教えていること』SBクリエイティブ株式会社、2020年)

このことからも、どのような効果を出していきたいのかを考え、動いていくのかがキーになってくるといえるでしょう。

こうした状況を見てみると、コロナ前の「普通」を経験した学生と、コロナ禍の「特別」な時間を過ごした学生とでは、採用側も見方を変える部分があるとお気づきかと思います。
そこでここからは、コロナ渦の学生に対して採用がうまくいった企業の成功事例をお伝えしていきます。

【成功事例①現場に足を運んでもらう】
私が担当した学生の中で、工場見学をしたのは1人だけだったそうですが、開催して頂いたことで志望度が上がった方がいます。「自分のためにわざわざ時間を作って頂いた」と、感動していました。
企業のオフィス見学や、店舗見学、工場見学の開催はコロナ禍の学生には新鮮に映ります。
ネット上にある情報だけで企業選びをしなくてはならない状況下において、「分からない」を減らすポイントは非常に大切です。特に、文章では伝わりにくい会社の空気感や社員の雰囲気などを知ることで、志望度が上がることがよくあります。

【成功事例②トップが理念を語る】
今までオンラインの授業が多く、対面に慣れていない分、リアルのエネルギーを感じたときに魅力を感じて、志望度が高くなった学生さんが多かったと、23年卒の学生を振り返って感じています。
以下は弊社の就活支援サービス「就活キャンパス プレスタ」で24年卒の学生139名に「企業選びの軸」についてのアンケートをとった結果です。

 

 1位 : 理念、考え方が合う(66 .2%)
 2位 : 働く人(57.6%)
 3位 : 将来性がある(43.2%)

 

このような点を24年卒の学生も重視するようです。会社説明会を開催するときに、役員の方や社長に出ていただいて想いを語って成功した事例がございます。なぜこの会社を創ったのか? 会社の目指しているところは? 等を直接、学生に伝えることで、アンケート1位の「理念、考え方が合う」という学生の企業選びの軸にマッチするのだと思います。会社の規模によりますが、社長や役員など上の方に出ていただくことで、採用に対しての真剣さも伝わります。

毎年さまざまな言葉で形容される学生たち。学生生活の過ごし方で特徴はそれぞれあると思います。しかし、オンラインでも直接会ったとしても、目の前の学生を大勢の就活生の中の一人ではなく、20数年生きてきた一人の人間として興味をもち対応していくことで、学生も応えてくれると思います。このことは、採用における不変の真理だと思います。

私たちプレスタでは、学生に向けて「採用する側も人生の一瞬を使って真剣に見ているからね」と伝えております。プレスタでは一人ひとりと向き合い、面談やイベントを行ってきた結果、口コミで年間約5,000名の学生に登録をいただけるようになりました。現在では、自分の将来を早くから考え行動したいと考えている26年卒の学生が90名、25年卒の学生が880名ほど登録してくれています。先日、24年卒向けの採用イベントを開催しましたが、参加企業からは「ナビでは採用が難しい質の高い学生が多い」「学生にもかかわらず、挨拶などの基礎スキルがしっかりしている」などの感想をいただきました。社会での活躍に向けて、早くから自己研鑽に時間を使っている学生がプレスタに数多く通ってくださっています。そのおかげで企業からいただけた声だと感じています。

企業にとっても、学生にとっても内定はゴールではなく、仕事が始まってからがようやくスタートラインです。お互いの想いが一致した、採用・就職活動ができるといいですね。

Profile
小原 明美
キャリアコンサルタント
株式会社キャリアコンサルティング プレスタ事業部

大学卒業後、株式会社キャリアコンサルティングに入社。
大学生、社会人に向けて、社会で活躍するためのリーダーシップの基礎を教育する仕事に従事。
その後、大学生の就活支援をする「プレスタ」にて1,600名の大学生の就活相談に乗ってきた。大学からの依頼で、マナー・面接に関しての講座も開催。
また大学生への就活の枠を超えた、社会人に必要な知識、考え方、在り方などを研修で教える講師も担当。

 

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