【人事担当者を元気にするコラム Vol.8】世界でたった一つの存在、それはお父さん、あなたです!

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2020.06.19

新規事業部のリーダーをまかされた40歳、まさに働き盛りの課長 山本実之(なにやら漫画『課長 島耕作』みたいな表現ですね)。新規開拓を含め、まさにバリバリ仕事をしていた頃のこと。
仕事と家庭のどちらも面白く、自分の夢を縮小均衡ではなく、拡大均衡でバランスをとろうとしていました。

家族のためにがんばっているんだという自負のもと、仕事での成果を追い求めていました。周囲からは「サラリーマンなのに、自営業みたいにがんばっているね」と言われたこともありました。自分自身でもビジネスパーソンでありながら、どこか個人で株式会社を経営しているような意識もありましたから、そうみえても不思議はありませんでしたね。

新規事業部というと、数年以内に結果をださなければ、その事業部がなくなってしまうということがよくあります。当時はなかなか新規事業が定着しないといった環境だったこともあり、「その事業は難しいんじゃないか」とやや冷ややかな目をする方もいましたが、私は残業、残業の中、思い切りエンジョイしていたことを思い出します。

当然、毎日朝が早く、夜も遅い。そんな家内との会話も少なくなっていたころのこと、朝早くに一人、朝食を取っていたところ、テーブルに一冊の本がおいてありました。
家内がおいた本から「これを読めということだな」と察し、その本をもって会社へ。当時は営業で、外出する機会がとても多くありました。そして、あるお客様のもとに訪問する際に、移動中の電車の車内で、おもむろにその本を開きました。

最初のページで、がーーんと頭を殴られたような衝撃。
本にはこう書かれていました。

世界の中で、重責を担う方といえば、大統領、総理大臣、社長、役員など様々な方がいるでしょう。
総理大臣、社長という重要な仕事をしている方といえども、もし倒れれば、その方の代わりはいくらでもいるのです。すぐ別の方がその重責を担うのです。あなたが、もし「俺がいなければ会社は成り立たない」と感じたとしても、もし交通事故などがあれば、会社の役割は誰かがすぐに担います。

でもお父さん、あなたの子供にとってのお父さんは、世界でただ一人。
あなただけです。つまり、あなたにしかできない役割、それがお父さんなんです。
そのことをしっかりみつめましょう、と。

あまりに衝撃的で、しばらく、衝撃を受けたままになっていたことを今でも思い出します。
たしかに会社でどんなに重要なポジションの人であったとしても、代わりはいる。それが組織だといえば、まさに組織そのものです。

よくある光景ですよね?「俺が会社を支えているんだ!!」「俺がいなかったら大変だぞ」だなんて、肩で風を切っている場面。私も営業しながら、そう思ったことがありました。でも、会社は自分がいなくても、実はなんとか動いていくものなのです。

しかし子供にとっては、お父さんはあなた、ただ一人しかいないのです。
そのことを改めて認識した瞬間でもあったと思います。

女性はおなかのなかに子供を宿す十月十日の期間もあり、その期間を通じて、自然に母親になることができるといわれています。
一方で男性は、本当に意識しないとなかなか父親にはなれないと聞いたことがあります。子供をもつプロセスが、女性と男性はかなり違うからだと思います。

女性 ⇒ 妻 ⇒ 母の変化と、男性 ⇒ 夫 ⇒ 父の変化には、大きな差があるような感じがします。女性の場合は「さなぎから蝶」になるくらいの大きな変化がありますよね。まさにトランスフォーメーション。一方で男性の場合は、どこかいつまでも少年っぽいところがあるようで、少年のまま父親になるような感覚すらあります。

だからこそ男性の場合は、よほど意識をしないと、「なんとなくお父さん」の位置になってしまうことがある、父親になりきれない症候群のようなものがあるような気もします。

そして子供がまだ小さい頃といえば、会社では忙しいということが多いものです。
またその仕事も充実して、とても面白い。どうしても会社に目が向きがちで、ましてや当時の私のように新規事業などをまかされると、「ここは人生の出番」とばかりに、いい意味で錯覚し、そして事業でも思いっきり活動することになります。

私は、その新規事業部に在籍していたころ、その事業の内容を最も把握している立場にあって、課長ながらもビジョンを描き、自身の意見はほとんどが通るといった状況にありました。
当時の上司である執行役員とも相性がとてもよく、「がんがんいけ!」「ハイリスク、ハイリターン、望むところだ」というような、イケイケ系な上司だったのです。とても気があった記憶があります。ただしその上司は、なにもしないとか消極的な人にはめっぽう厳しい。チャレンジしたことでうまくいかなくても、全く気にしない上司。まさに「いけいけどんどん」という言葉がぴったりの環境にありました。
私の大好きな会社であるサントリーさんが創業精神として掲げる、「やってみなはれ」を地でいく日々でしたね。

そんなタイミングに、家内からの本でのメッセージ。大切なことに気づかせてくれて感謝しています。
その当時の私は、ある面でブレーキの壊れた、いやブレーキの無いダンプカーを運転しているような状態だったと思います。家内が私の性格をよく知っているからこそ、本からのメッセージで気づきを与えてくれたのでしょう。ひょっとしたら、家内から直接言われたとしても聞かないモードにあったのかもしれません。まさに達人の技ですね。
さすが、脱帽です。

今、子育ての真っ最中にあって、同時にビジネスでとても忙しい状況にあるという方も多いことでしょう。ただ、子供はあっという間に成長してしまいます。
まさに「今、ここ」。もちろん私自身がどこまで、父親としてできたのかはわかりませんが、家内からのメッセージで、いい形で気づきを与えてもらい、子供と向き合っていたことはあるように感じます。

幼い子供はあまり言葉を発することはありませんが、すべてを知っているかのようなのです。ラポールをいかにつくるかは、子育てを終えたあとに結果が来るように思います。(ラポールとはフランスを語源とする、心と心にかかる橋の意味)
このことは、家内がモンテッソーリ教育を学んでいたからこそ、私も気づくことができたのだと感謝していますが、これを多くのお父さんにも気づいてほしいと感じます。
とはいえ、なかなか気づけないお父さんは多いですね。まさに「三つ子の魂百まで」なのです。幼いころの子供は、メッセージを含めて、魂レベルで伝わるように思います。

気づいたときがはじまり。
子供は絵本などがとても好きですね。ぜひたくさん読んであげてくださいね。
子供は読んでもらうことも好きですが、お父さんの膝の上で安心感を得ることも大事なようです。
私は絵本が大好きで、読むのもかなり得意です。絵本で大人が気づくこともかなりありますから、子供のために読んでいながら、思わず涙してしまったということも1回や2回ではありません。
『にじいろのさかな』『たいせつなきみ』などは名作であり、おすすめです。

にじいろのさかな たいせつなきみ
『にじいろのさかな』
マーカス・フィスター 著,谷川 俊太郎 訳/講談社
『たいせつなきみ』
マックス・ルケード 著 ,セルジオ・マルティネス 絵,ホーバード・豊子 訳/いのちのことば社

かつて子供が小さいころ、私が休みの日に、
「今日は、思いっきり絵本を読んであげるよ。好きなだけもっておいで!」
というと、絵本を山のようにもってきました。それもニコニコ顔で。
でも、そういうときにかぎって3冊くらい読むと、「もう、いいよ」などと膝から飛び出していきます。
おそらく、父親が思いっきり時間をくれたことで、満足をしているからかもしれません。子供は恐ろしいくらい親の心を読む達人ですね。

「好きなだけ絵本をもっておいで!」というのも結構、勇気がいることですが、たった一人のお父さんの言葉がよぎると、やれるものです。好きな絵本を好きなだけもっていけること、この満足感が子供にとって、幸せなひとときなのでしょう。

若きお父さんにアドバイスをするとしたら、日ごろ、忙しいと思いますが、子供と遊ぶ時の心がまえとして、自分のやりたいことはとりあえず忘れて、土日であれば、「その時間を子供たちにあげる」という意識をもつとすごく楽になり、ともにすごすことを心からエンジョイできるようになります。

すべてあげるという意識になれないと、どこか時間を奪われているかのような、時間を犠牲にしているかのような妙な感覚になったりします。
子供はその父親の心をしっかりみぬきますので、ぜひ時間をあげる、同時にほかのことはできないんだと自分に語る。そうするといい覚悟ができて、子供との時間はまさに至福の時に変わります。

もちろん授業参観や運動会などにはぜひ、ぜひ行ってくださいね。子供の笑顔がはじける運動会などは、五輪やワールドカップよりも躍動感があって、幸せを共有できるものだと感じます。

世の中のお父さんへ、子供との時間は、今のためだけのものではありません。
将来の子供の接し方が決まるのも今、ここなのです。
つまり、Future is Now !!「未来は今」ということです。

子供のための時間をとりましょう……


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。 40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。 資格としては、GCDFキャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

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