【人事担当者を元気にするコラム Vol.28】ジョン・レノンが公務員だったら「イマジン」は生まれない!?

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2022.02.25

皆さんはキャリアについて考える機会はありますか? また、キャリアに対してどんな向き合い方をしていますか?

キャリアという言葉から受け取るイメージは人それぞれだと感じますが、キャリアを考えるにあたって、今は「強み」にフォーカスする時代だと感じています。
いろいろなアプローチがあると思いますが、人間も動物ということで、今回は、動物の進化からキャリアを考えてみましょう。

イメージ:野生の動物たち

たとえばダチョウ。(ダチョウ倶楽部ではありませんよ)
とても大きく、オスの成鳥ともなれば体高は230cm、体重も135kgを超え、鳥類では最大級のサイズとなります。
ダチョウは進化の過程で、大きな戦略を選択しました。つまり、鳥でありながら、飛ぶことを断念し、走ることに特化したのです。特化したからこそ、走るスピードで生き残ることが可能となったといわれています。そのスピードはなんと時速70キロ、発達した脚から繰り出されるキックの力は、なんと100平方cmあたり4.8トンの圧力にもなります。
もし、飛ぶことに固執し、その行為を手放さなかったとしたら、きっと高くも長くも飛ぶことができない、中途半端な大きな鳥となり、生き残ることはできなかったかもしれません。
走ることに、すべてをかけた結果、鳥類最大の称号を得て、現代に君臨しているのです。
動物界では、キャリアの戦略ミスは、絶滅危惧種へつながるだけに、まさに命がけの戦略ともいえます。

一方で、キリンはどうでしょうか?
首が長いですね。高いところの餌をとることを戦略として決めて、首が伸びていったといわれています。ただ、あの首を支えるためには、一つ重要なことがあります。それは心臓です。あの首の高さで、頭まで血液を送るためには、心臓の強化が求められるのです。心臓の強さがなければ、たとえ首が伸びて高いところにある餌がとれるようになったとしても、血液を頭に送ることができず、生き残ることはできないのです。
逆にいえば、心臓の強化に成功したからこそ、長い首を活用して生き残ることに成功したということです。生き残り戦略のためには、心臓の強化は必須のものだったのです。
戦略と強みの強化が生存に直結していく、厳しい世界だと感じます。

人財戦略からしても、「あれもこれもできる」ということよりも、「あれとこれは得意」と決めていくほうがいいといわれています。ある面、自分の得意技を決めて、その掛け算をしていくような形です。
それだけに、まずは自分らしさに気づくことが大切です。
自分には得意技がないと不安に思う必要はありませんよ。大丈夫! 神様は、タレントという才能を一人ひとりに授けてくれています。
遺伝子レベルでみれば、今のあなたが生まれる確率は、70兆分の1の可能性なのです。これを宝くじでたとえると、1億円の宝くじが100万回連続であたるレベルだといわれています。まさに奇跡の出来事で、私たちはこの世に存在しているのです。
優しさや思いやりがあるなど、まずは自分の特性に気づくことからはじめていきましょう。

自分の得意な分野に勝負をかけていくことが、生き残りへとつながっていきます。その生き残りのためには、欧州で有名なIKIGAIベン図が参考になります。
生きがいの正体は、「好きなこと」「得意なこと」「世の中の役に立つこと」「収入が得られること」の4つを充たしている状態といわれています。
この4つの輪の重なる点がその人のフラッシュポイントとなり、生きがいとなり、生き残り戦略につながっていくといわれています。

  ■IKIGAIベン図
IKIGAIベン図

「What is your Ikigai?」By Marc Winn May 14, 2014
https://theviewinside.me/what-is-your-ikigai/

私が入社した当時の人事部長がいってくれたことがあります。
「山本君、これからは「ワンポスト・一仕事」の意識が大切だよ。つまり、一つの部署の経験を通じて、自分の得意技を一つ、身につけていきなさい」と。
流されて仕事をするのではなく、任された仕事を通じて、社内プロフェッショナルになれるものを積み上げなさい、という意味です。この業務ならあの人、と言われるような存在になることを目指すということでもあります。

言葉をかえると、社内で一目を置かれた存在になること、つまりある分野で社内No.1を目指すということです。会社には異動という幸せな制度がありますから、飽きないうちに部署が変わる。その結果として、専門分野がある面で強制的に変換されることになります。
自分自身で心がけ、気をつけていけば、会社の異動を味方にしながら、プロフェッショナル分野を複数もつことが可能なのです。
仕事にもよると思いますが、3~5年間、ある仕事をしていると、その分野ではかなり詳しくなると思います。おそらくその業務の90%くらいは把握することができるでしょう。
ここからさらに3年以上かけて、残り10%を埋めていく作業をするのか、そうではなく新しい分野で、新たに90%できる業務を身につけるかどうかは、将来のキャリア形成において、大きく影響していくことでしょう。
勇気をもって異動を申請し、プロフェッショナル分野を増やしていくのもひとつのキャリア戦略になると思います。
ただし、人事異動にはいろいろな係数がからみ、必ずしも、自分の思い通りになるものではありません。ただそれでも、希望を持ち続けることは、自分のキャリア形成に大きく寄与していくことになると考えています。

教育心理学者で、スタンフォード大学大学院の名誉教授であるジョン・D・クランボルツ氏は、成功者のキャリア形成のきっかけは、80%が「偶然」であったということを明らかにしています。
もちろん、成功者の80%がキャリアプランをもっていなかったということではありませんが、キャリアプラン通りにいかない様々な偶然が重なり、結果的に「成功者」といわれる位置についたということで、これは「計画的偶発性理論」としてまとめられています(アル・S・レビン氏、K・E・ミッシェル氏との共同研究による)。

過去のキャリアを考えるにあたり、詩人・河井寛次郎の含蓄のある言葉をご紹介したいと思います。それは「鳥が選んだ枝、枝が待っていた鳥」という言葉です。
この言葉に私は、衝撃を受けました。

「鳥が選んだ枝」って、なんとなくわかりますよね。
ある鳥が飛んできて、「ああ、この枝いいな。そろそろ休もうかな」と思って、その枝につっととまる。これはよくある風景ですし、その内面を文章にしても、なんら特別なことではないことでしょう。
ただ、その出来事を、枝の方から見ていくとどうなるか?
「その枝が、鳥を待っていた」という描写になるのです。「鳥がきて、ある枝にとまる」というよくある風景が、実は当たり前でない出来事になってきます。なんと、その枝自身がその鳥を待っていたということなのです。
つまり偶然ではなく、すべてが必然だともいえるでしょう。

イメージ:鳥が選んだ枝、枝が待っていた鳥

たとえば、大学入試。第一志望の大学に入れず、第二志望、いや第三志望の大学に入学することになったとします。しかし、悲観する必要はありません。
そしてそれは間違った選択ではなく、ある面必然の選択、それこそ「枝が待っていた鳥」のように、「あなたを待っていた大学」ともいえるのです。

また、希望の会社に入社をした。胸躍り、入社式を終え、研修、ところが初めての赴任先は、まったく自分の希望していない部署だった。そんなこともあることでしょう。しかしそれは、あなたが配属された部署でもあり、配属先があなたを待っていたということだともいえるのです。
私自身も入社して、初めて配属された部署は、決して希望した部署でも、イメージしていた部署でもありませんでした。しばらくはショックでしたが、気持ちを入れ替えて、しっかり取り組んでいくと、仕事は面白くなるし、いい出会いもありました。海外での出会いもあり、海外出張を通じて、自分の世界を大きくひろげることができ、やはり素敵な部署なのだと、思いを変えることができました。

気持ちのもち方一つで、こころの天気は大きく変わるということを、20代前半で気づけたことも私の宝物の一つになっています。もし腐っていたとしたら、未来を腐らせてしまう結果になり、今の私はなかったと断言できます。
その時の考えに出会ったことで、今の行動につながっていると感じます。
それこそまさに、「部署が私を待っていてくれた」といえるのだと思います。

どんな部署であっても自分を輝かせていく努力は必要です。その第一歩は、自分から好きになることかなと思います。そうすると、その部署が「あなたを待っていたよ」と言ってくれるような気がします。
もう、「この部署、大好き」というような心構えになることです。
自分の大好き波動が、相手にも伝わるように、組織にもこだまするような気がします。ヤッホーといえば、ヤッホーとこだまするような世界です。
(そういえば最近、ヤッホーといった記憶や聞いた記憶があまりないですね。私だけ?)

そしてもう一つ、伝えたいことがあります。
たとえば、ある中学校に、英語の成績が5で、数学の成績が1の学生がいたとします。日本の教育では、英語の5をさらに伸ばすことよりも、数学の1を上げようとするでしょうね。
これも価値観と考え方ですが、その人ががんばって、がんばって数学を3にしたとします。よくがんばりました、たしかにすばらしい。でも、平均の3です。その数学の力をもって、世の中を大きく動かすような推進力になることは、まず、難しいことでしょう。

現代に求められるのは、この英語の5を、もうこれよりも上がないくらいに、さらに伸ばしていくことを目指すべきと思えるのですが、いかがでしょうか? 得意に帆をはっていくことこそが、その人らしい、その人ならではの生き方につながるように思います。
やはり、一人ひとりが、この世の中にタレントをもって生まれてきているのです。
このタレントに気づき、そのタレントを伸ばすようにエネルギーをかけていくことこそ、幸せな道につながるように思えるのです。

好きになる努力とともに、何かを得意技にしていくという心構えをもち、自分の得意分野で勝負していくという考え方も、人生には大切だと感じます。
「得手に帆をはれ」とは、私の大好きな本田技研工業の創業者、本田宗一郎さんがよく言っていた言葉です。
そうなのです。ジョン・レノンが公務員だったら、「イマジン」は生まれていません!

さあ、自分の得意なものを見つけ、伸ばし、人生ワクワクして生きていきましょう。そして、必ず自分には自分にしかないタレントがあると信じて!!
ボンボヤージュ!! 素晴らしい人生の船出としていきましょう。


▶ back numberはこちら
 山本実之氏による「人事担当者を元気にするコラム」の
 バックナンバーはこちらからお読みいただけます(一覧にジャンプします)

Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。 40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。 資格としては、GCDFキャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

一覧に戻る