【人事担当者を元気にするコラム Vol.17】素敵な「時もち」になりましょう!!

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2021.03.26

時間ほど、すべての人に平等に与えられているものはありませんね。
社長だろうが、総理大臣であろうが、教授であろうが、どんな人に対しても、平等に与えられているもの、それが時間ですね。

人生の幸せには、いろいろな要素があるといわれます。
お金はとても大切な要素ですが、必ずしもお金だけでは幸せになることはできないといわれています。しかし、不便さはかなり解消できるというのも、お金の力でしょう。
そして、ある面でお金以上に大切なのが、「時」だといわれています。
よく「時は金なり」といわれますが、本当にそうであれば、お金で時を買い取れるわけですよね。60歳の人が、お金で「時」を買って、30歳になることができることになります。しかし現実には、本当の「時」を買い、若くなることはできません。世界の富をすべて使っても「二十歳の一日」を取り戻すことはできないのです。

その意味では、「時は金なり」ではなく、失って取り返せないのだから「時は命なり」というように、よびかえた方が相応しいといえるでしょう。
砂時計の中の減っていく砂のようなものであり、決して砂時計のように裏返すことができない「時」を、私たちは生きているのです。

砂時計

その大切な時をいかに過ごしていますか? どのように限りある自分の時間を使っていますか?
自分が人生の主人公であることを、今一度みつめ、自分の「時」を刻む努力をしていくことがより大切になってくると思います。

自分で自分の道を歩んでいかないと、自分の大切な時は奪われてしまいます。
伝説の経営者といわれた、あのジャック・ウェルチも言っています。
「自分の人生を自分でコントロールせよ。さもないと第三者があなたの人生を動かしてしまいますよ」と。

よく優先順位という言葉を聞くと思います。
なにを第一にして行動していくのかを検討していくことは、とても大切なことだと感じます。
しかし、もっと大切なのは「劣後順位」だといわれています。つまり「なにをしないか」をしっかりと自分の価値観で決めていくことが大切だということです。何かを得るために、何かを切り捨てていく、それを自分自身で決めていく必要があるということです。

私の場合は仕事、家族、夢とすべてを拡大均衡で追っていましたので、なにかをやめない限り時間が足りないと、いつも感じていました。
いろいろ考えた結果、時間が多く取られ、さける必要があると思ったもの、それがゴルフでした(もちろん決してゴルフそのものを否定するつもりはありません。誤解のなきように)。

その想いを強くしたのは、私のメンターである新 将命さんが全く同じことを言っていたからかもしれません。ゴルフは時間がかかる上、しかも少人数のみでの会話になってしまう。時間の使い方はほかにあるのではないかと、よく言っておられたことも影響していると思います。

私の場合は、やりたいことがたくさんあり、仕事、家族、夢とフル回転していたために、ゴルフのように1日かけて行うものに時間をかけられなかったというのが実情だったと感じます。

実は営業時代、上司や当時の社長から「ゴルフをやれよ」「ゴルフはやっておいた方がいいぞ」などと言われていたものの、「はいはい」と答えながら、ずーっと右耳から左耳へ聞き流していました。

課長時代にある部長から、毎日ずっと言われ続けたもので、ついに「わかりました。今期、営業で結果がでなければゴルフをやります。そのかわり、実績がでていれば一切いわないでください。今までゴルフしないことで、ご迷惑をおかけしたことは一度もないはずです」と宣言してしまいました。
内面では「なんでここまで言わせるんだよ」って感じでしたね。

結果として、ゴルフをしなかったことで、業績に影響を与えることは一切なかったため、ゴルフはしないでいい環境となり、その後は、言われることもなくなりました。
もちろんゴルフは、やれば楽しいのでしょう。でもやれば、上手になりたくなる自分がいることもよくわかっています。練習に行く、プライベートで行く、仕事で行く。そうなったら、子供と遊ぶ時間、家族との時間、自分のやるべき時間が一切なくなってしまいます。
もしかしたら、家庭が崩壊するんではないかという危惧感もありました。

ちなみに声をかけていた当時の部長ですが、実は家庭が完全に崩壊していました。
私の異動の際に「山本さんと私の違いは、家庭があるかないかだ」と言われ、とても驚いたことを覚えています。なんで、そんな人に付き合わされないといけないのでしょう。
みなさんにも、そのような経験はありませんか?
人にあわせてしまって、自分の大切な時が他の人に刻まれてしまうようなことが……。

自分の「時」は自分で守る意識がやはり大切だと感じます。
私のように喧嘩モードになる必要はありませんが、自分の人生だということをビジネスパーソンもしっかりみすえた方がいいと思います。
当時はまだまだ、とんがってましたね! 若い、若い。今ならもう少し上手に対応できるような気がします。

人生は、ある面、振り子のようなものといわれています。
振り子がゆれるように、なにかを得るためには、なにかの犠牲が必要なのだといわれています。

メジャーリーグでも伝説的なヒーローになっているイチローは、名電工(愛知工業大学名電高校)時代、休みは1日もなく、毎日バッティングセンターにいって、バットを振り続けていたといいます。高校時代、だれもが遊びたい、彼女とデートしたい、普通の高校生ならごく自然にいだくそんな想いを、ある面、完全に犠牲にして、野球に打ち込んで、あのイチローが形作られたのだと思います。

劣後順位。なにをやらないかを決める。これが大事だと感じます。私の場合は、積極的にゴルフをやらないという選択をしていたのだと思いますが、時間づくりのためには、この「選ぶ」「決断する」という感覚もとても大切だと感じています。
目玉焼きは卵をわらなければ永遠につくれません。卵を割るという行為があって、はじめて、目玉焼きという料理を作れるのです。

また、素敵な時もちになるための極意の一つは、なにかをしているときにいつも意識的に心をこめて、行動をすることだと思います。
そして、なにもしないでリラックスをしているときには、「なにもしていないんだ、リラックスを選択しているんだ」という意識をもつことが大切です。

ここで、タイムマネジメントを考える中で、有名な理論をご紹介します。それは日ごろの出来事、行動を重要、緊急の4領域にわけて、分析していくコツです。

4領域の図

私がセミナーなどで「どの領域に一番時間を使っていますか?」という問いかけをすると[第一領域]の重要・緊急のことに時間をとられることが多い、という答えが多いです。ビジネスで考えると、これが最も多くなるのはよくわかりますが、この領域に時間をとられていると、いつも忙しく、時間に追われている状態が続きます。
そして本当の意味で人生を豊かにするのが、[第二領域]だといわれています。「重要だが緊急ではない」、この領域にいかに時間を使うかということが重要とされています。新しい人間関係を構築する、あるいは今の人間関係をより深めていくことなどは、将来を見渡した時にとても有益になる行為といえます。ただ、意識しないと緊急ではないので、後回しになってしまう傾向があります。
ご自身の行動をこの4領域にてらしあわせて、どんなシェアになっているかを分析することも、素敵な時間づくりに役立つ行動かと思います。

また、素敵な「時」というものを考えると、私は若い人とお話しするのが好きなのです。なんたって、すべてが可能性、すべてが未来。なんてすばらしいのでしょう。若さほど素晴らしいものはないですね。
そして私自身もそうでしたが、若者はその若さの価値に気づきにくいようですね。失ってその素晴らしさに気づくのは、若さの若さたるゆえんかもしれません。

私のメンターの新 将命さんも、若者が大好きだと言っていました。
「年寄りはいやだね。腰がいてえとか、血圧がどうとか、ほかにテーマはないのかね? いやだね」なんてことを言っていたことを思い出します。
私も近い感じがします。一生青春でいきたいですね。

そんなとき、サミュエル・ウルマン(アメリカの実業家・詩人)の有名な、「青春」という詩を思い出します

経営者でもこの詩を好み、名刺にその一部を印刷されている方もいらっしゃいます。
ご存知の方も多いかもしれませんが、改めて、素晴らしさをともにわかちあえたらと思い、以下、全文をご紹介したいと思います。

 

 “YOUTH”(青春の詩)
 原作 サミュエル・ウルマン,翻訳 岡田義夫

 青春とは人生のある期間をいうのではなく、心の様相をいうのだ。
 すぐれた創造力、たくましき意志、炎ゆる情熱怯懦をしりぞける勇猛心、
 容易をふりすてる冒険心
 こういう様相を青春というのだ。
 年を重ねただけでは人は老いない。

 理想を失うときにはじめて老いがくる。
 歳月は皮膚のしわを増すが、情熱をう失う時に精神はしぼむ。

 苦悶や、狐疑や、不安、恐怖、失望、
 こういうものこそ、あたかも長年月のごとく人を老いさせ、
 精気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。

 年は七十であろうと十六であろうと、その胸中に抱き得るものはなにか。
 いわく驚異への愛慕心、空にきらめく星辰、その輝きにも似たる
 事物や思想に対する欽仰、事に処する剛毅な挑戦、
 小児のごとく求めてやまぬ探求心、人生への歓喜と興味。

 人は信念とともに若く、疑惑とともに老ゆる。
 人は自信とともに若く、恐怖とともに老ゆる。
 希望ある限り若く、失望とともに老い朽ちる。

 大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、
 そして偉力の霊感を受ける限り、人は若さを失わない。
 これらの霊感が絶え、悲歎の白雪が人の心の奥までもおおいつくし、
 皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至れば、
 この時にこそ人はまったくに老いて、神の憐れみを乞うるほかはなくなる。

 

いつまでも心を若く、のびやかに、素敵な「時もち」になってみませんか?


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。
資格としては、GCDF-Japanキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

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