コラム
ナトラ合同会社 代表
経営コンサルタント・人財開発コンサルタント
元大手食品メーカー・グループ企業 代表取締役社長
2025.12.26
先日、あるTV番組のインタビューで林修さんが、「なぜ、そんなに体を鍛え、自分に厳しくできるんですか? そしてやり続けられるんですか? その原動力はどこにあるんですか?」とユーミンこと、シンガーソングライターの松任谷由実さんに尋ねました。
その時のユーミンの答えは、少しはにかんだように、こう言ったのです。
「だって、ユーミンだもん!」
私は震えるほど、感動しました。この言葉には多くのことが含まれていて、ブランディングを中心に考えていくとよく理解することができます。1つずつ考えてみましょう。
〇みんなが期待しているユーミンは、いつまでもユーミンである必要がある。だから、いろいろな努力することは、当たり前の事。プロフェッショナルなら当たり前のことだととらえている。
〇自分自身で鼓舞している。どんな時もユーミンとしての姿が明確にあり、そのレベルを維持すること、そしてさらに進化させていく意思にあふれている。
〇自分をブランディングしている。自分がどうみられているか、どの立ち位置にあって、ファンからなにを期待されて、なににこたえていくべきなのかを明確にとらえている。そして、その言葉によって自分自身の価値を高めていき、ブランド管理も明確に実施し、高め続けている。
〇自分が何者であるかを知っている。
〇自分の使命感からくるメッセージでもあり、その使命感をもって、ステージに立ち続けている。
〇自分が自分らしくあるために、自分がどのようにみられているかをしっかり把握している。
これらのメッセージを、たった一言「だって、ユーミンだもん!」で伝えているユーミン、すごいとしかいいようがないと感じました。

能楽に「離見の見」という言葉があります。
舞台で自分が演じているものを、常にもう一人の自分が上から自分をみている。そして舞台で演じることが大切であるという能の教え。
まさにユーミンは日々、自然にそのことを実施しているということを感じました。自分自身を常に客観視する強さも同時にもっていると思います。
柔らかな一言で、これほど強いメッセージを発する人物はなかなかいないと感じます。
「ジョハリの窓」という言葉があります。これは自分が知っている自分、他人が知っている自分、自分が知らない自分、他人が知らない自分を4象限にわけて、とらえる古典的な考え方です。
ユーミンの場合は、自分が知っている、他人も知っている窓が最大限に大きい人だと感じました。そしてその窓をさらに広げ続けている、そんな感覚を受けました。この領域が大きい人は一般的にストレスが少ないと言われています。
私たちも日頃、オープンマインドでこの領域(自分も知っている、他人も知っている領域)を最大化していくと、よりハッピーになっていくと言われていますので、ぜひオープンでいきましょう。
ブランド、ブランディングという考え方は、私自身、会社に勤務しているときはあまり強く感じませんでした。多くのビジネスパーソンは、会社のブランドの傘の中で生きているので、普段はあまり感じないことかもしれませんが、私が今、独立して感じることは、このブランディングがとても大事になっているということです。
あなたは誰なのか? なにが違うのか? なにができて、なにで貢献していくのか? このあたりを言語化できないと、すぐその他大勢と一緒になっていきます。つまりコモディティ化していくことになります。
そして差別化できないとなにが起こるか、それは価格競争にまきこまれていくことを意味します。
独立した場合、この価格競争へまきこまれていくのは回避すべきことのひとつだと考えます。
ただ、会社にいてもこのブランディング化が、必要になってくるのではないでしょうか? 自分自身をどう位置付けていくかという事は、AI時代を迎えている今、とても大切な概念になっているように思います。
ここでブランドの語源、定義について再確認しておきましょう。
「ブランド」の語源は、牛や馬などの家畜に焼き印を押す意味の「Burned」からきています。自分の家畜と他人の家畜を間違えないように、焼き印を押して区別していたことから、商品やサービスの「銘柄」や「商標」を「ブランド」というようになったと言われています
ビジネスパーソンにとってのブランド化は、会社において、自分の得意技を通じて、一目を置かれていく存在になるということにもつながります。自分らしさ、自分の屋号をもつようなものですね。
会社のブランドという大きな傘の中にいながら、自分なりの自分らしい傘をもつイメージでしょうか?
会社、経営者からみて、なにかできる人は評価されていきます。評価されるために仕事をしているわけではないという声も聞こえてきそうですが、ある程度、評価的なこともみていくことは大切となると感じています。ジョブ型人事に移行している今、「なにができる」と明確に言語化できるスキルは必須のものとなっていることと思います。
その際に、わかりやすいのが自分自身のブランド化です。
では、どんなブランド化ができるでしょうか?
自分自身を意味あるものとして位置付けていくことが大事になってきます。ブランドの中でも、すぐに想起できるものはとても強いと思います。
たとえば、「ゴホンといったら」……それは龍角散ですよね。まず100%でるのではないでしょうか?
「チョコレートは♪」……明治。想起できますかね? まだ大丈夫だと感じますが、最近はあまり聞かないので、若い世代にはどうなのか心配になることがあります。
つまりブランドそのものも常に働きかけて、新鮮さを保たないといけないということでもあるのでしょう。
では、私たちはなんといったら想起されるでしょうね。
「人はロジックや数字は忘れるが、ストーリーは忘れない。ストーリーは事実そのものよりも22倍、記憶に残る」と、スタンフォード大学のジェニファー・アーカー教授(心理学・マーケティング)は言っており、多くの人から支持を得ています。
ブランドとは意味である。商品を使う事の意味を「魅力的なストーリー」としてつくりあげることが必要となる。自分自身がある面、「商品」だという視点をもつことも大切になってくる、そして感動を共有することになる。
ビジネスパーソンは会社の中にいるので、個人が社会的に想起されることは難しいかもしれませんが、社内では目指していっていい項目の一つではないでしょうか?
たとえば、「購買と言ったら、○○さん」とか、「包装材料と言ったら○○さん」といったことを目指していくと社内価値もあがり、ある面、社内ブランディングになることもあるでしょうし、それが将来、会社の傘を離れても、社会でブランディングされることにつながることと思います。
自分自身のブランドを価値あるものにしていくことが、これからの人生では大切になってくるということです。

慶應義塾大学の名誉教授であった、村田昭治先生のもとで学んでいた時に、村田先生から言われたことがあります。
「やまもっちゃんは、山本イズムをつくっていける人だよ。しっかりおやりよ」と。
当時はなんとなく、ピンときませんでしたが、今、人財育成を中心とした生活をしていく中で、日々、イズムの継承をしているのかもしれないと感じる時があります。
とても運のいい私は、メンターである新将命さんとめぐりあい、大切な場面でご指導していただき、また金平敬之助さんにもいつも励まされ、勇気づけられたこと、人との接し方、優しさを実践で目の前で学べたこと、一つひとつがとても幸せで、宝物のような出来事だったと思います。
そしてその教えが今の私の山本イズムを形成しているとしたら、自信をもって多くの方々に伝えていく必要があると感じています。
このイズムはとても価値のあるもので、私のミッションである、「世界中の人々に愛とゆめと勇気を与える」ことにそのままつながっていると感じています。
ユーミンの「だってユーミンだもん!」
この伸びやかで、おおらかな中に強い意志、そして未来へのコミットメントを強く感じています。
私たちも一人ひとり価値ある、唯一かけがいのない人。自分の人生をコモディティ化することなく、価値あるものとして、生きていきたいですね。
どんなブランディングをしていきますか?
人生の中で、ともに語り、ともに笑いあっていくブランディングができたらとても意味があると感じています。
これこそ、あなたがいつまでも自分らしく輝き続ける人生になっていくと思います。
そのためには、自分自身の「旗を揚げることが大事」
勇気をもって旗を揚げていくと、応援される人になっていきます。自分らしさをだしていくことが大事です。
パーソナル・ブランディングの専門家である守山菜穂子さんは、10の質問をあげています。
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① あなたが幸せを感じる時はどんな時 |
この質問にも楽しく答えていくと、リラックスしながら、自分という人間を深く理解するためのガイドとなっていくと伝えています。
自分の名前を大切にし、価値あるものにしていこうという想いからブランディングははじまっていきます。自分自身を大事にして、そして未来の自分をブランディングしていきましょう。
一人ひとりは意味があって、この世に生を受けています。会社も大切ですが、この会社で働くために生を受けたわけではないはず。会社での力を発揮しながら、自分自身の道を切り開いていただきたいと感じます。
そのためには、自己観察もとても大事ですね。
自己観察をしっかりしながら、一人ひとり輝く人生にむかっていくことを誓っていきましょう。
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