【人事担当者を元気にするコラム Vol.13】みほこさんになろう!!人をやる気にさせる究極のコツ

大手食品メーカーグループ会社 代表取締役社長山本実之

2020.11.20

私が、会社やいろいろな場面でよく使う言葉があります。それが、「みほこさん」です。全体会議の時や、懇親会の締めの時などで、メンバーによく伝えている言葉です。
「みほこさんになろう!」
とダイレクトに言うと、時々「えっ、女性になるの?」って勘違いする人がいますね。でもちがいます、ちがうんです。

みほこさんの「み」は認める、「ほ」はほめる、「こ」は肯定する。
この略語であり、つまりこれらを積極的にできる人のことなのです。

みんなが「みほこさん」になれば、人間関係もコミュニケーションもよくいくと思いませんか? だって、お互いに、まず認め合い、そしてほめて、肯定していけば、関係性はよくなりますね。
ちょっとわかりにくいですかね?
もし、理解しにくいという方がいらっしゃるならば、「みほこさん」の反対のことを考えていただくとわかりやすいと思います。
それは「認めない」「ほめない」「否定する」ということです。私はこれをビジネス三重苦とよんでいます。なんだか、最悪ですよね。もしもこんなリーダーがいたら、ついていきたいと思いますか? こんな人と友達になりたいと思いますか? 私は嫌ですね。できるだけ避けたいとすら感じてしまいます。

「みほこさん」とても短い言葉ですが、人との接し方の本質をとらえていると思います。

しかし簡単そうではあるものの、実は、意識しないと、なかなかなれないのが「みほこさん」でもあります。「ほめる」ということをひとつとっても、意外とできていないことに気がつきます。

皆さん、人をほめていますか?
特に会社での生活が長くなり、経験を経て、役職などがついてくると、若手に目を向けたときに、まず欠点が目につきませんか? 悪い所はすぐに気づきませんか?
そうなんです。無意識でみていると、やはり欠点の方が先に目にはいる傾向があるようです。よほど日頃から気をつけていないと、いい所には気づけない。
結果、ほめることができないということになります。

私はセミナーなどの場で、時々、聞くときがあります。
「ほめられたらうれしいと思う方、手をあげてください」
そう質問すると、ほぼ全員の手があがります。
続けて「この1週間で、誰かをほめたことがあるという方、手をあげてください」と質問すると、今度はほとんど手が上がらないのです。
なんでほめないのでしょうか? ここに現代社会の課題があるように感じます。
自分自身は、ほめられたら嬉しいと感じているのに、多くの方が他の人をほめたりしていない。

「自分のしてほしいことを人にしてあげるんだよ。自分がされていやなことは、決して人にするんじゃないよ」
私が幼少のころ、祖母からよく言われていたことで、最も大切にしていることの一つです。私の心に深く、沁みついています。
三つ子の魂百までといいますが、今でも祖母の声が聞こえてきそうな気がするくらいです。人間関係のゴールデンルールをしっかり伝えられていたのだと、後になって知りました。ほめることこそ、人間関係をよくしていく、そしてその人の自信をのばしていく原点のようなものだと思います。

自分がほめられて嬉しいのなら、素直に人のいいところを思いっきりほめていきましょう!!

以前、あまり人をほめることのない課長に「どうしてほめないの?」と尋ねたことがあります。すると、「ほめると調子にのるから」という、びっくりするようなコメントがかえってきたことを覚えています。
その課長に、自身が育った小さいころのことを聞くと、その人自身がほとんどほめられてこなかったことがわかりました。ほめられたことのない人は、ほめられない。これは愛されたことがない人が、人を愛せないことに近いのかもしれません。

私は先日、会社の全体会議でメンバーに話しました。「みんなでみほこさんになりましょう。いきなり、100%の行動を変えることは難しい。まずは一人一人が、20%増しでほめていこう。たとえば、朝一で『今日はひとりほめるぞ!』と決めていこう」と。
20%というのは、なかなか大きな数字です。たとえば商品企画でも、20%の規格変更を毎年続けていけば、5年たたずして、全く別の商品になるといわれています。会社の全社員が「20%ほめほめクラブ」になったら、数年で会社の空気は変わっていくと信じています。

だからこそ「今年20%変わっていこう」と伝えています。これから変化がでてくることを期待しているのです。
そして自分がメンバーにそう発信している以上、まず自分から実施する必要があります。なんとなくで出社すると、できないことが多くなると思いますから、実現するためには、朝がポイント。「今日は人をほめるぞ!」と心に固く誓うのです。「いいところ発見隊になるぞ!」という覚悟と心意気で会社にいくのです。決めている日は、最初からテンションが違います。
なんたって、ほめまくろうと決めているのですから。

ほめることをただ、個人にゆだねるのではなく、組織として取り組んでいるのが「あったらいいな、をカタチにする」のCMで有名な、大阪にある小林製薬株式会社さんです。
一度聞いたことがあるのですが、課長職は「ほめる」ということが業務目標の一つとなっているそうです。ほめることが努力目標ではなく、業務そのものの目標になっているわけです。その名も「ホメホメ5」。つまり一日に5回ほめることが義務になっているのです。
そのため定時近くの夕方になって、まだホメホメ3の時、その課長は必死になってほめる人を探して、伝えているようです。いい習慣ですよね。いい点をみるように当然なりますから、会社の空気感は、当然よくなっていきます。
いろんな面で効果がでているということもあり、社長がある時、「ほめほめ7にしようかな?」といったそうですが、その時はみんな、勘弁してくださいと言ったとか。

ほめることに関しては、コーチングをはじめ多くの業界でも効果が示されています。
まずは観察しないとほめることはできません。いい点に気づくことができませんからね。そして同時に、ほめ方にも練習が必要になります。

米国メジャーリーグの名門、ロサンゼルス・ドジャースの元監督、トミー・ラソーダさんは、ほめることの達人だったそうです。
彼は選手ごとにほめ方をかえていたそうで、それらをすべてメモにとって、どんなほめ方に効果があるのか、そのすべてを記録していたそうです。
「ジミー、君のプレイはエクセレントだ!」とか「ほれぼれするよ」とか、常にほめ方を変えて、その効果をみながら、いつもトライしていたそうです。

あの野茂英雄が活躍した時は、「おお! ノモ、我が息子よ」と言っていましたが、あのほめ言葉も、努力の積み重ねによるものなのですね。

ほめることにもコツがいりますが、ベースに愛情があれば大丈夫だと思います。一人一人が、いいことは、いいとほめあう社会を目指したいといつも感じています。ぜひ迷わず、自信をもってほめてください。

相手を認めるという、承認ということもとても大事ですね。
私も営業時代は、とてもほめやすかったという記憶があります。
メンバーが契約をとってきたら、「すごいね! やったね!」「素晴らしい営業力、さすが! がんばったね!」と称賛できる。
仮に成約できなかったとしても「このチャレンジは素晴らしい! なかなかできない挑戦だったよ」とか「あの難関にトライできる勇気があれば、これからなんでもできるぞ! 応援してるよ」といった言葉がけがとてもしやすい。拍手なんかも効果的に使うことができます。

拍手を受ける

一方で、事務部門はなかなか難しい面がありますね。
たとえば、給与計算などは、正確であって当たり前。しかも業務の特性上、営業部門のような一発逆転ホームランといったことも起きにくい。
しかも間違えたりすれば、社内でありながら徹底的に叱られる場面になってしまう。ある意味、できて当たり前の空気感が蔓延している状態ですよね。これらは大切な仕事であるのにも関わらず、です。
では、どうしたらいいのでしょうか?

こういったときは、存在承認をするといいですね。
「〇〇をしてくれたんだ」「いつも正確で感謝しているよ」「しっかりフォローしてくれて、みんなが助かってるよ」といったように、成果にフォーカスするのではなく、誠実に取り組んでいる、そのプロセスに光をあてて、「たすかっているよ」「いつも全体のことを考えてくれているね」などと発信していくわけです。
他の人がほめていたら、そのことをしっかり伝えていく。また、あえて第三者的にほめていくのも有効です。「君のこと、山本さんが素直でいいと言っていたよ」と伝えていくのです。
(逆に悪口も伝わりますから要注意ですね)

肯定するということも、とても大切です。
時々、否定から入る人っていますよね。「でも……」とか「だって……」とか。否定から入るような人には、誰も提案などしてきません。むしろ、もう二度とやるものか、などとなってしまいます。

やはり、一度は受けとめていく。そのためには、「ああ、そういう考えもあるんだ」とか「なーーるほどね」といった言葉はとても大事です。コミュニケーション上ではクッションといわれます。
そこに「そうなんだ」「もっと聞かせて」という空気感があれば、コミュニケーションそのものもよくなっていきます。
相手に対して、イエスもノーもいっていない。あなたの言っていることはききましたよ。というサインです。そしてうなずきとともに受け止めてもらえるだけで、メンバーは喜び、勇気づけられるのです。

社会全体が「みほこさん」だらけになったら、いい社会になると思いませんか?
まずは、家族からというのでもよいでしょう。家族みんなで「みほこさん」になる、いいと思いませんか?

私も会社で嫌なことがあったとき、玄関の扉の前で、服は着替えませんが、心を切り替えて、「みほこさん、みほこさん、みほこさん」と言って、笑顔をつくってから家に入ることもよくあります。
(ただ、家内はよくみているので、私が帰宅したときの声や歩き方で、なにがあったかすぐにわかっているようです。本当に鋭い。私もわかりやすい性格なのかもしれませんが)

みほこさんがいっぱいの会社だったら、どうですか?
「いいねえ、それ」「その考えいいね」なんて言葉がとびかっている。最近、よくいわれている「心理的安全性」もすぐに構築されていくと思います。
一見、当たり前のような身近なところに、社会を変えていくエネルギーが秘められているように感じます。

マザー・テレサも言っていました。
「愛とは大きな愛情をもって、小さなことをすることです」

さあ、今日から目指しましょう!!
あなたもきみも「みほこさん」!!


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当し、その後、営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。のちにグループの関連会社の代表取締役社長に就任し、現在に至る。
資格としては、GCDF-Japanキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。

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