Interview

お取引先様インタビュー

[人事・教育担当者にうかがう、人材育成への取り組み]

お取引先様インタビュー

「食」を通して地域の未来を描く。地元企業の躍進を信用金庫が伴走支援する!

株式会社鶴食
代表取締役社長 井上千尋

Interview

信用金庫にとって地元企業はメイン顧客であり、相互に支え合う深い関係性がある。設立以来、山形県鶴岡市で高齢者施設における給食事業を担ってきた株式会社鶴食と、鶴岡信用金庫も同様に「食」に係る企業とそれを支える金融機関として、地域の活性化に寄与してきた。今回、株式会社鶴食の井上千尋社長に会社の事業展開について伺うとともに、信金の鶴食担当者で、企業経営アドバイザー資格取得者の小川健太氏にどのような企業支援を行っているかについて伺った。

―まずは鶴食さんの事業内容について教えてください。
井上:弊社は高齢者施設向けに給食を提供する事業からスタートして、現在では冷凍食品販売事業や社員食堂受託事業、給食食材配送事業、キッチンカー事業まで幅広く「食」に係る事業を展開しています。メインとなる高齢者施設への給食事業については6つの事業所の厨房をお借りし、そこで調理を行っています。もともと高齢者施設の増加に従って給食事業のニーズが高まり、その流れの中で徐々に拠点が増えていったという感じですね。父から会社を継いだのは7年前で、私が3代目になります。自分の思う通りにやってきて失敗も多かったですが、その中でさまざまな経験を通じて、既にうまく回っていることには理由があり、そこには人の思いがあるということを知り、経営の奥深さを実感しました。

井上千尋氏

―高齢者への給食事業で心がけているのはどんなことですか?
井上:高齢者の方は食べやすさに個人差があるので、食材をミキサーにかけたり、餡かけにするなど工夫を凝らしています。日々の食事は家庭的な献立ですが、イベントの時などはできるだけご馳走を振舞うように心がけています。人気があるのは郷土料理ですね。例えば、どんがら汁という冬の鱈を使った味噌汁は魚を丸ごと骨まで入れた料理ですが、普段、柔らかい魚の身しか食べられない方でも普通に食べてしまいます。結局、昔から食べ慣れたものがご馳走なんですね。調理を担当するスタッフたちはそういう思いも忘れず、毎日腕を振るってくれています。

―鶴岡信用金庫さんとはどのような経緯で関係を築いたのかお聞かせください。
井上:最初のきっかけは信金さんが主催していた「若手経営者塾」への参加で、私はそのプログラムの一期生でした。事業承継前から信金さんとつながりを持てたのは大きかったですね。

小川::今年で10周年を迎える塾ですが、井上社長はまさに礎を築いた一期生で、そうした学びの場がきっかけで今も良いお付き合いをさせていただき、ありがたいと感じています。

井上:初めは先代の担当者の方に事業承継に係る株式評価について相談させていただきました。現在では主に新規事業に関してよく相談に乗っていただいています。小川さんは私より若いですが年齢も近いし、すごく話しやすくて、事業の形になる前から「こんなことやってみたいんだよね」という感じで話していたら、それがお客さまから依頼が来て本格化したりして。もちろん、税理士さんや経営コンサルタントにもいろいろ相談したりしていますが、新規事業については信金さんを頼りにしています。

―新規事業とは具体的にどのような内容で、小川さんはどのように支援されたのでしょうか?
井上:現在、社員食堂の運営や冷凍弁当の開発、キッチンカー事業などに挑戦しています。社員食堂では「無人販売スペースを運営してほしい」という要望をいただきました。新しい事業は経験がない分、不安もあります。そんな時に相談できるのが小川さんで、例えば無人販売の導入を検討した際、設備投資や運営の仕組みについて小川さんに相談したところ、事業構想の段階から一緒に考えてもらえて心強かったです。レスポンスも早くて、相談したらすぐ動いてくれる。そのスピード感がありがたいですね。

小川:企業経営アドバイザー資格の勉強で製造業や経営全般の知識を学んだので、鶴食さんの新規事業の話がより具体的に理解できました。単なる融資ではなく「この事業は利用者にとって導入しやすい」「既存事業との差別化ができている」といった視点でアドバイスできるようになったのは大きかったです。企業経営アドバイザーの資格は、金融機関に勤めるだけでは触れない分野まで幅広く学べます。学習は正直大変でしたが、それを通じて「お客様の立場で考える力」がついたと思います。資格取得後は、井上社長のお話も理解が深まり、より具体的に意見を伝えられるようになりました

井上:実際、相談していても以前より話が通じやすいと感じます。事業の本質を理解してもらえるので、やり取りもスムーズですね。

小川:私はお客さまと接する際に「否定から入らない」ことを心がけています。やりたいことがある経営者に対して、まず「応援したい」という気持ちを伝える。その上で成功するためのポイントを一緒に考えるようにしています。これは資格で学んだことともリンクしていて、知識があるからこそ前向きにアドバイスできるのだと思います。

鶴食様を支援されている 小川健太氏

―今後、事業拡大を図る上での課題についてお聞かせください。
井上:一番は人材ですね。熟練スタッフの技術をどう次世代に引き継ぐかが大きな課題です。マニュアル化やDX化も進めていますが、複雑な調理工程を標準化するのは簡単ではありません。採用も難しく、若い人材をどう確保するか頭を悩ませています。

小川:その点については、社長のお考えを尊重しつつ、スポット採用や地域イベントでの露出を後押ししています。「つるしょくHawaii号」のキッチンカー事業が若い人の注目を集めて採用にもつながっているのは良い例ですね。融資だけでなく、人材確保やPR活動の観点でも支援できるのは信用金庫の強みだと思います。

井上:信金さんは地域の情報や事例も豊富なので、小川さんの話を聞いているだけでも刺激になります。

―先ほどお聞きした冷凍弁当事業について、もう少し詳しくお聞かせください。
井上:もともとは「施設に入っていない高齢者や、ご家族の食事作りを手助けできないか」という発想から始めました。調理したお弁当を急速冷凍し、栄養価や味をそのまま閉じ込めて提供しています。レンジで温めるだけで食べられるので、利用者さんからは「買い置きできて便利」「介護する家族の負担が減る」と喜ばれています。地元農家さんから仕入れた野菜を使ったメニューも開発中で、生産者の方にも「地元産の野菜が高齢者の健康につながるのは嬉しい」と言っていただきました。このように単なる商品ではなく、地域全体を巻き込んだ取り組みになりつつあり、やりがいを感じています。

―そのような新規事業には資金も必要だと思いますが、信金さんの支援はいかがですか?
井上:確かに冷凍設備の導入や配送体制の構築には大きな投資が必要でした。その際も小川さんに相談したところ、メリット・デメリットを一緒に整理してくれるので、経営判断がぶれずに済みました。

小川:鶴食さんの事業は地域性が強く、社会的意義も大きいものです。だからこそ単なる数字だけでなく、「この投資が将来どう活きるか」を一緒に考えるようにしています。井上社長の想いを理解した上で資金面を整えるのが、私たちの役割だと思っています。

井上:信金さんが伴走してくれることで、「やってみよう」という勇気が出ますね。やはり経営者は孤独な部分があるので、近くに相談できる相手がいるのは心強いです。

―最後に、鶴食さんの今後の展望についてお聞かせください。
井上:冷凍弁当事業をもっと伸ばしていきたいと考えています。高齢者だけでなく、幅広い世代の方々に健康的な食事を届けたい。体は食べ物で作られるので、心身の健康づくりに貢献できればと思っています。

小川:井上社長とは「楽しく話せる関係」を続けていきたいと考えていて、その中で新しい挑戦があれば、金融面や情報提供でしっかり支えていくつもりです。地域の企業が元気でなければ、信用金庫も存続できませんから。これからもしっかり伴走しながら応援していきたいですね。

―本日は長時間ありがとうございました。

Profile

株式会社 鶴食
https://tsurushoku.com/
平成5年(1993)創立。山形県鶴岡市において設立以来、高齢者施設給食事業を中心に事業を展開。現在、3代目の井上千尋代表取締役社長が精力的に事業拡大を図り、冷凍食品販売事業、社員食堂受託事業、給食食材配送事業、キッチンカーによる移動販売事業などを幅広く手がけている。特に、キッチンカー「つるしょくHawaii号」はハワイアンかき氷やロコモコなどハワイアンフードの販売で地域イベントや各施設に出店し、地元でも注目を集めている。