【人事担当者を元気にするコラム Vol.70】「自分にしてほしいことを人にしてあげるんだよ! 自分がされたくないことは人に決してするんじゃないよ!」

ナトラ合同会社 代表
経営コンサルタント・人財開発コンサルタント
元大手食品メーカー・グループ企業 代表取締役社長山本実之

2025.08.29

私は、おばあちゃん子として育ったようです。祖母が大好きで、幼少期、日々をいつも一緒に過ごしていました。いつも祖母のそばにいて、いろいろな話を身近で聴いていたようです。

そんな祖母の言葉で、いまでも心に残っているのが、今回のタイトルにある言葉です。たしか、3歳くらいから言われていたことだと思いますが、私のバイブルのような言葉だと感じています。

「自分にしてほしいことを人にしてあげるんだよ! 自分がされたくないことは人に決してするんじゃないよ」

今でも祖母の声が聞こえてくるような感じがします。
とてもシンプルな言葉ではありますが、人間関係、コミュニケーションの原点を見事にいいあてているように思います。

イメージ:祖母の手
これは子供だけでなく、大人になっても通じるゴールデンルールだと感じています。自分以外の他の方に想いをよせていくことにもつながり、GIVEする人が幸せになるという現代の考え方にもつながっていきます。
組織において、リーダーがメンバーと接する時にも有効ですし、家族間、夫婦間でも機能していくメッセージだと思います。
人間関係の原理原則にしっかりあてはまる教えで、複雑なことをしなくても、これを徹底するだけで、人間関係がよくなり、多くの人から愛されるようになるのではないでしょうか?

このことは「情けは人のためならず」の原点にも通じるように感じています。
いつからか「情けは人のためにはならない」なんて、間違った解釈が飛び交っているようですが、改めていうと「情けは人のためならず」は、「情けは人のためになりません」ということではなく、「自分のためにするんですよ」というのが本来の意味です。
祖母の言葉はとてもシンプルですが、影響力の強いメッセージだと感じています。

このメッセージにつながるのが「利他の心」であると感じています。
利他の心こそが幸せの道と、改めていわれるようになっていて、京セラを創業した稲盛和夫さんも、著書『心。』(サンマーク出版)の中で、利他の心の大切さを伝えています。
「利他」という言葉の意味はシンプル。「他を利する」すなわち「自分のため」は後回しにして、「他人のため」を優先する。隣人のために何ができるかを考え、自分がなしうる限りの優しい行為をしてあげることです。

また、宇宙には、「利他の風」が吹いているといわれています。大きな帆を上げ、その風をふんだんに受ければ、よき運命の流れに乗ることができて、人生がよりよい方向へと導かれる。このとき、風を受ける帆となるものが、「利他の心」なのです。
優しい思いやりの心をもって物事に取り組むとき、人は「利他の風」を存分に受け、幸福と成功に向けて、力強く航行することができます。

私自身、とても大切にしている言葉を共感できる機会が多くあったこともあり、小さい頃の教えはとても大事だと感じています。
今、私は教育の世界に身をおいておりますが、過去に考えることがありました。年代としては、いつごろからの教育が最も効果があるのだろうか? と。
もちろん、会社における社会人教育には、いつも効果があると感じていますが、ある時、考えたことがあります。教育でより効果があるのは、実は学生時代なのではないのか? と。
ではそれは大学か? 高校か? いやいや中学校、小学校か? と考えを巡らせると、どんどん年齢が下がってしまう。それぞれタイミングにおける教育に意味はあると思いますが、社会で活躍していくためのポイントとしては、やはり幼児教育ではないかと考えが落ち着いたこともありました。

ある本で読んだのですが、たとえてみると、男性は「犬のロッキー」のようなものだという説がありました(あくまで私見ですので、ご了承ください)。
男性は「ロッキーすごいね」「ロッキーよくやったね」といわれたくて生きているのです。女性の方々、ぜひこのシンプルな思考に気づいていただき、「ロッキーすごいね。よくやったね」という発想で男性をほめてみてください。男性は家庭で「よくやったね。すごいね」という言葉を渇望しているのです。
「そんな簡単なことで? そんな単純なの?」と思われるかもしれませんが、そうなんです! 超単純なんです。その言葉が聞きたくて、今日もロッキーは走り続けます!!
男性の皆様、そう思いませんか?

特に一緒にいる伴侶のメッセージには劇的な効果があり、使い方によっては超劇薬にもなってしまいます。
どんな優秀な男性も伴侶からのたった一言で、それもわずか3日でダメになることがあるといわれています。もし、奥様がご主人に対して、「あなたってだめね」と繰り返すと、どんな優秀な男性であったとしても、たった3日で本当にダメになってしまうのです。とても恐ろしいことだと思いませんか? 悪気はなくても、女性の一言に男性は、とっても傷つきやすいのです。

だからこそ、ぜひ「すごいね!」「がんばってるね」とほめてあげてください。もちろん、万能ではありませんが、その意識をもって男性に接していただくことは、価値を認めていることになるので有効だと思います。
ロッキーはどこまでもがんばっていきますよ!!

そして男性だけでなく、女性にとっても、ほめられることは嬉しいことだと思います。
セミナーのときに「ほめられると嬉しい人?」ときくと、100%手が上がります。
そして続けて「この1週間でほめられたことがある人?」ときくと、答えはほとんどゼロ。ここに現代社会の問題があるといえます。
リーダーのあり方に問題があるのでしょう。ほめられるとみんな嬉しいと感じているのに、ほとんどの人がほめられていない。これは社会問題ですね。

「ほめられたい」と、自分が欲しているのだとしたら、人にもしてあげましょう。相手を思いっきりほめていきましょう。恥ずかしがる必要は全くありません。だって、相手の方も求めているのですから。とてもシンプル。それだけで人間関係が劇的に変化していきます。
仕事でのトラブルは、80%が人間関係とコミュニケーションといわれます。だからこそ、これは真剣に考えていく必要があると思います。

素敵な言葉を伝えるのも大切な行動です。脳には主語がないといわれています。人に言ったことが、そのまま自分に言ったのと同じことになります。
「〇〇さん、素敵ですね」という言葉はそのまま、「自分は素晴らしい」といったと同じ状態になるのです。
逆に「〇〇君、なにやってんだ。わかってるのか」などといった場合、脳にも同じ指令がいっているのです。この状態をどう思われますか?

以前の社長職の時代のこと、毎年4月中旬、期のはじめに経営方針を社員に直接伝える会議の場面をもっていました。私はこの場を、社員に感謝を伝える場として位置づけていました。仕事を作業とするのではなく、価値のある業務なんだ、誇りをもってする業務なんだということをしっかりと伝えていました。

そして同時に、メンバーへメッセージを送る場としていました。
たとえば、「○○さんは、行動がいつも愛にあふれ、やさしくみんなを包みこむように日々サポートしてくれた。(幸子さんというお名前だったので)名前の通り、全員に幸せをデリバリーしてくれていましたね」などと、メッセージを伝えながら、方針を語っていきました。きっと心に残るメモリアルなものになったと信じています。
「〇〇さんは、いつも静かなる中に、燃える情熱をもっている方です。事前の準備がしっかりしているので、いつも何事もないように処理されているけど、野球でいえば守備位置がいいので、平凡なプレイにみえるケース。他の人ならボールをとるために飛びついていることでしょう」といったように、メッセージを送る場として位置づけていました。
みんなの前で賞賛しているので、照れくさいかもしれませんが、きっと嬉しいだろうと感じながら伝えていました。

イメージ:みんなを賞賛する
これは自分がまだ20代のころのこと、当時の上司のちょっとした一言、「山本君の海外市況のデータ報告はとてもわかりやすい」と社員の前でいってくれたことがあったからです。
名前を呼んでもらってほめられると、こんなに誇りとやりがいがでるのかというのをよく覚えていたからかもしれません。あなたのこと、しっかりみていますよというメッセージになると思います。
そのため年1回ではありますが、心を込めて、感謝とメッセージを届ける場として全体会議を位置づけていました。

トップがメンバーへ感謝を伝えることはとても大切なことだと思います。リーダーとして会議をどのように活用していますか? リーダーが照れることなく、オープンにほめていく文化は、社内の雰囲気をとてもよくしていくことと感じています。

リーダーもほめられるとうれしいですよね。デール・カーネギーの『人を動かす』の中に、お世辞が通じない将軍の話がでてきます。
どんな場面でもお世辞が通じない将軍だったのですが、ある人が、「○○将軍には、どんなお世辞も通じない、強い精神をおもちです」と言ったら、思いっきり喜んだと。つまり将軍も、ほめられたかったということですね。

難しい心理学はいりません。自分の心に素直になって、自分ならどうしてほしいのか、どうされるとうれしいのか、この想いをシンプルに言葉に行動にしめしていきましょう。その先に多くの人を幸せにまきこみ、自分自身も幸せのワールドにはいっていくための秘訣があるように思います。

自分自身のためにも、これからどんな言葉、ふるまいをしていきますか?


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Profile
山本実之
大手食品メーカーに入社。20代は商社部門で食品原料の輸入販売を担当。30代は食料海外事業部に所属し、シンガポール・プロジェクトをはじめ米国・香港等へ製品輸出を担当し、出張した国は32ヵ国にのぼる。さらに英国との合弁会社にて営業企画管理部長を担当(上司がイギリス人、部下はアメリカ人)。
40代は新規事業立ち上げのリーダーを担当、のちに営業部長に。40代後半からは研修部長として、人財開発を担当。その後、グループの関連会社の代表取締役社長を経て、現在はビジネスパーソン向けの人財開発事業に情熱を注いでいる。
資格としては、GCDF-Japanキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタント(国家資格)、(財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFPⓇ。デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン公認トレーナー(デール・カーネギー・コース、プレゼンテーション、リーダーシップ)を取得。
人財開発コンサルタントとして活動し、2024年12月よりPHPゼミナール講師も務めている。

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