【人事担当者を元気にするコラム Vol.68】タンポポに学ぶ人間学~♪涙の数だけ強くなれるよ アスファルトに咲く花のように~

2025.06.27

岡本真夜さんの「TOMORROW」は1995年の発売直後から大ヒットして、カラオケなどで今も多くの方が歌い続けている名曲ですね。アスファルトに小さなタンポポなどが花を咲かせている。だれもが一度は目にとめたことがある光景ですね。そんな小さな花から力を受けた方も多くいらっしゃることと思います。

そのタンポポの起源をご存知でしょうか?
今から約3000万年前から、タンポポはこの世に存在しています。私たち人類は、わずか30万年前ですから、歴史的にはタンポポの方が大先輩ですね。

タンポポの花が咲いている日数をご存知ですか? なんとわずか7日。一年365日のうち、花を咲かせているときは、7日だけなのです。
では、花を咲かせている以外の日、なにをしているのか? それはひたすら、根に栄養を蓄え続けている。みえない土の中で、根にしっかり心やエネルギーを注いでいる。それがタンポポの強さです。
だから、タンポポはその花を摘まれたり、踏まれたりしても、全く動じることはない。
根をしっかり土の中にはっているので、決して生命を絶たれることなく、そのあとも生き続け、やがて花を咲かせ、種を結実させていく。とてもすごいことだと思いませんか?

一方、私たち人間は、目にみえるところにとらわれがちになっているように思います。
たとえば勤めている会社や収入、見た目その他、いわば花にたとえられる部分に支配されているようにも感じます。
会社であれば、花にあたるのは、売り上げや利益ということになるのでしょう。しかし、売上や利益ばかり考えていては、いざなにかあった時に根が張っていないので、すぐ参ってしまう。意識が上に上にとむかってしまう、そんな傾向があるのではないでしょうか?
目にみえない部分、即ち土の中の根っこにあたる部分となる心や精神に思いをよせ、学び、培っていく必要もあることと思います。

タンポポからのメッセージは、まさに見えないところを大切にしましょうということです。3000万年前から、花を咲かせ、種を実らせ、永続することを続けてきている。特に冬の時期が重要であり、その時期にしっかり根に栄養を与えていくことが大事なこととなります。花や果実はその結果であるにすぎません。

タンポポの花を上から見ると、放射状に広がる葉がバラの花のようにみえますね。こういった植物を「小さなバラ」を意味する、ロゼッタとよびます。
ロゼッタ型の植物は、冬の間は葉で光合成をしながら、根っこに栄養分を蓄えます。春になると、その栄養分を使って茎をのばし、他の植物にさきがけて花を咲かせます。
ロゼッタ型の植物は、寒さと闘いながら、春に花を咲かせる準備をしている、つまりロゼッタは守りながら、攻める形をとっているのです。

かわいらしいタンポポのロゼッタは、地面の下にごぼうのように太くて長い根っこを、1mほども伸ばします。この太い根っこがタンポポの強さの秘密です。まさにタンポポの強さは、みえないところにあるのです。
私たちにとっても、ビジネスなどで成果を出し続けていくために、日々、本を読んだり、学び続けていくことがとても大切であるということに通じるように思います。根っこに栄養を与えるように、日々の生活をおくっていくことですね。
結果ばかりを追い求めるのではなく、しっかりと目にみえない部分に注意をはらう、あるいは人にみられていない時になにをするか、どう活動するかがとても大事になってくることと思います。

現在放送中のテレビドラマ『続・続・最後から二番目の恋』で主演の中井貴一さんは、私の最も好きな俳優のひとりです。実は中井貴一さんと私は同級生。あの有名な『ふぞろいの林檎たち』が放送されていた時も、同じく大学一年生。お会いしたことはありませんが、ずっと親近感をいだいていました。
この『続・続・最後から二番目の恋』の舞台は鎌倉、私の住んでいる大好きな町です。毎回、放送されるたびに、妻と「ああ、あの場所だ」とか、「ここもでたね」などと楽しく話していました。大好きでもあり、とてもご縁を感じます。
今から40年以上前に、中井貴一さんと、いわゆる二世俳優の人たちが対談をしていたことを思い出します。「役者にとってなにが大切ですか?」という問いかけに対して、他の方の答えは全く覚えていませんが、中井貴一さんがいった言葉だけは今も鮮烈に覚えています。
「役者にとって大切なのは、演技している時ではない。演技をしていないとき、普段の生活の中で、何を学び、何を感じ、どのように生きていくか、そのことが大事。そのみえない部分、演技している以外の時間でどれだけのことをつかむか、学ぶか。それが結果として、演技の幅や深さ、広がりにつながっていくんだと思う」
まだ20歳前後の時分に、カメラをしっかり見つめ答えていた姿に感動したことを覚えています。

たしかに中井貴一さんの演技をみていると、困った時の目配りやつらい時の表情などは、演技とは思えないときがあります。心の底の想いがあらわれ、表情というよりも目の動き、目配りで心情をあらわしているように感じるときがあります。
鎌倉でのドラマ収録で、妻が中井さん本人に遭遇した時、その佇まいは、半端なかったと話していました。この表情や佇まいなどが、タンポポの花にあたるのでしょうが、日頃の考えや学びという根がしっかりはっていることが、あのような素晴らしい演技につながっているのでしょう。

私たちビジネスパーソンも同じだと思います。プレゼンテーションや商談の際も、それまでどれだけ学んだか、いろいろな事を培ってきたかが問われることと感じます。その場でがんばればいいという手合いとは、やはり異なるように思います。
目に見えないところで、どれだけ努力ができるかがポイントになるのでしょう。

考えてみると、すべてのことは、この根っこにあるのだと感じます。
ビジネスにおいても表面だけでなく、根の部分で大きな差になっていくことはあることと思います。
そういう意味では、日々の意識をどのようにもつかも大事になることと思います。よい意識を蓄積していくことですね。利他の心、他への思いやりの気持ちなどをもち生活していくことも、とても重要なことと感じます。

『七つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)の中では、「善の貯蓄をして、負債にならないようにしていく。良い習慣、良い行動をしていけば、その分が貯蓄されていて、つらいことなどがあっても負債になることはなく、いつも蓄積されている状態になっている」と伝えています。
心も安定していることにつながっていくことでしょう。

ビジネスの場でも、研修等のセミナーでも、私がよく伝えている言葉に「多・長・根」というメッセージがあります。「多面的、長期的、根本的」に物事をみていこうという意味の略語です。この見方をしていくと、ビジネスのみならず、普段の生活で悩んだり、方向性を考えたりする際のジャッジにとても役立ちます。

ある問題があって、「これをもっと多面的にみてみたらどうなるのだろう。違う角度から、また違う視座にたってみたら、どうなるだろう?」、そう意識して、みる位置などを変えるだけで、視界に変化がでて、新たな気づきのあることも多くあります。
また、「長期的にみたらどうなるんだろう。10年先からみたらどうなるんだろう?」という時間軸の視点をいれて考えていく。時のウエイトを組み込むだけで、将来の結論がかわってくることもあります。また、「そもそも根本的に考えたらどうなるのか?」と考えてみる。悩むとどうしても表面的なところにとらわれて、まさに本質を見失うこともある。
この多面的、長期的、根本的なとらえ方は人生をゆたかにし、適切な判断をする際におおいに役立つ考え方だと思います。

悩んだ時や行き詰った時によくあるのが、この反対。つまり、単一的、一眼的。よくある「これしかない」という発想です。人生で「これしかない」といえるのは死だけだと感じています。死はだれにも訪れるので避けることもできないし、「これしかない」にまさに該当します。それ以外は、まさに様々な選択肢があるので、多面的にとらえる必要がありますね。
また短期的もそうです。悩むと超短期になりがち。明日はどうなるか? 短期になると判断が曇ることも多くあると感じます。
枝葉にとらわれることもよくあります。まさに枝葉末節にとらわれる。会社での会議でもめるとき、根っこはどこかにいって、枝葉勝負になっていることはありませんか?
ぶつかっている当人でさえ、熱くなっていることは認識していても、なにを議論しているのか、本質はどこにあるのかがみえず、ただぶつかっている議論に何度も出会ったことがあります。みなさんはいかがでしょうか?
メンバーの一人ひとりがこの「多・長・根」を意識しながら考え、行動していくと、よりよい環境の会社に変質していくことと感じます。まさに一人ひとりの日頃の想いや考えが全体に影響を与えていくことになるということです。

踏まれる場所では、タンポポは立ち上がろうとはしません。それどころか、上に伸びようともしません。タンポポにとって、大切なのは、上に伸びたり、立ち上がることではなく、種子をつけることだといわれます。
タンポポは踏まれたまま、花を咲かせて、種をつける。タンポポは、本当に大切なことはなにかをしっているようです

「念ずれば花ひらく」を伝えていた詩人の坂村真民さんには、タンポポのことを伝えているメッセージが多くあります。坂村真民さんの、「坂村真民詩集百選」の中で紹介されているメッセージをご紹介します。

 


タンポポ魂

 踏みにじられても
 食いちぎられても
 死にもしない
 枯れもしない
 その根強さ
 そしてつねに
 太陽にむかって咲く
 その明るさ
 私はそれを
 私の魂とする

坂村真民「タンポポ魂」    

 

 

とても力強いメッセージですね。
最後に「Tomorrow」からのメッセージを。

♪自分をそのまま信じていてね
 明日は来るよ、どんな時も
 明日は来るよ、君のために♪ ※

明日もいい日だ!!

※ ♪ ♪は、『TOMORROW』(作詞:岡本真夜/真名杏樹 作曲:岡本真夜)より引用

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