中国地方の北部に位置し、古代より栄え、神話の舞台として、数多くの神社や遺跡を有している歴史深い地域である島根県。この島根の中小企業を総合的に支援する「中小企業支援センター」として、個別企業への助言・支援活動を行うとともに、企業に役立つサービスや情報提供を行うことによって、島根県の中小企業の発展を目指す公的な支援機関が、公益財団法人しまね産業振興財団(以下:しまね産業振興財団)です。
 TAC株式会社は法人研修を提供することで、しまね産業振興財団様の取り組みを側面からサポートしております。
 今回はしまね産業振興財団様の取り組みと、その支援先企業である有限会社 平和木工様に取材をさせていただきましたので、ご紹介いたします。

(写真)国宝 松江城

 

[参考]公益財団法人 しまね産業振興財団
中小企業を総合的に支援する「中小企業支援センター」として、個別企業への助言・支援活動を行うとともに、企業に役立つサービスや情報提供を行うことによって、島根県の中小企業の発展を目指す公的な支援機関。

Interview 1
しまね産業振興財団の取り組み

[しまね産業振興財団 × TAC株式会社]

 

 しまね産業振興財団は島根県の外郭団体として県内企業の支援を行うことで、県民の皆様が生活を築くための基盤となる働く場を維持、そして拡大させていくことを目的に、様々な支援活動をさせて頂いています。具体的な活動内容としては、第1に相談窓口としての機能です。これは駆け込み寺のようなもので、ここで色々とお聞きする中で、課題を明確にしていきます。そのうえで、創業の支援や人材育成に関する支援、また研究開発などの技術力向上支援、さらには設備投資に対する支援や、ITの導入、活用といったことの支援ほか、新規分野への参入時における取引拡大のための支援や、海外進出への支援にも力を入れています。

 基本的には相談をいただいて、それに合わせた対応をしていくことになりますが、成長が期待できる企業についてはこちらからアプローチをかけ、規模拡大や収益性向上のための提案をしていくこともございます。

 

(写真左)理事 事務局長 馬庭 伸行 氏
(写真右)企業振興部 販路支援課取引支援グループ 主任 安食 斉二 氏

しまね産業振興財団の人材育成について

 財団が求める人材像は「人材育成方針」の中で、求められる人材像として定めています。そこには『「企業支援の専門家」「産業支援施策の推進役」たり得る人材、すなわち「産業振興のゼネラリスト」』であると明記しています。

 私どもが活動していくうえでの事業費等は、そのほとんどを県から補助金という形で頂いておりますので、県の産業施策や行政の施策を推進していくことになります。外部環境の変化に応じて、企業の課題は変化しますから、それにマッチした施策の提案力が必要です。それゆえ「企業支援の専門家」と「産業支援施策の推進役」となる能力を持つ人材を「産業振興のゼネラリスト」と位置付け、目指していこうとしています。

 そこで、役職に応じて求められる知識やスキルを設定し、それに応じた研修を受けるようにしているのです。実際には外部の支援機関や研修機関を活用するほか、自助努力による自己研鑽も推奨しています。また同様の目的で設定された「目指すべき資格」の取得を目指します。そのなかの最重要の資格として、中小企業診断士資格( 以降:診断士)を位置付けています。

 支援対象のほとんどは中小企業です。中小企業では、経営者の方が経営課題やその要因、課題となる部分を正確に把握されていないケースもあるため、企業が抱える課題や今後の方向性を具体的に示し、社長の考えを明らかにすることができる診断士を、目指すべき位置付けとしています。

 

[参考]中小企業診断士
中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家で、中小企業支援法に基づき、経済産業大臣が登録する国家資格。経営戦略、組織・人事、マーケティング、財務・会計、生産管理、店舗運営、物流、IT、法務など幅広い知識やスキルを持つ。

TAC株式会社の法人研修について

 財団では1次試験に受かった者は、中小企業大学校が開催する半年間の診断士養成研修を受講し資格を取得してもらうのですが、この費用を県で予算措置していただくことができました。これが3年ほど続けられるという環境が整ったので、資格取得の機運を盛り上げようと考え、毎年1人ずつ合格者を出すという目標で、診断士の強化期間を設けました。また、それまでは自助努力に任せていた学習を業務の一環と位置付け、業務時間内で学習してもらうことにしました。

 このタイミングでTACの研修を採用しました。3 月に相談し、4月から始め、8月の試験を受けるというのが1年目だったのですが、受験経験者がいたとはいえ、その年に1名の合格者を、2年目には3名の合格者を出すことができ、目標以上の成果となりました。

 研修はカリキュラム面などで相当融通を効かせていただきました。1年目もそうですが、2年目は科目合格した者もいましたので、よりピンポイントに勉強させたいという思いから、研修科目を絞るといったカスタマイズをして頂きました。また初回講義はキックオフと考え、学習期間中どのようにモチベーションを維持していくかといった内容を、逆に試験直前は頻出問題に絞った講義や、苦手分野の講義に集中するなど、ピンポイントで相談に乗っていただきましたね。

 結果的に目標以上の実績を出していただいたので、本当に感謝しかないです。

 

[参考]中小企業診断士試験の制度
試験は1次試験(筆記)と2次試験(筆記および口述)の3段階で行われ、1次試験には例年約2万人が受験申込をしている。試験合格に加え、実務補習・実務従事により資格取得ができる。ただし1次試験に合格した年度及びその翌年度に、中小企業大学校又は登録養成機関が開講する養成課程の受講を開始し、修了した場合、2次試験と実務補習・実務従事なしで資格取得が可能。

Interview 2
県内企業の成長のための様々な支援に取り組む

[しまね産業振興財団 × TAC株式会社]

 

 私のいる財団の石見事務所では、企業ありきで支援する形なので、様々な企業を担当しています。水産加工食品やLED製品、自動車部品といった製造関連のほか、飲食業を営む企業もありますね。

 それぞれで様々なご相談に対応していますが、例えばその飲食業の企業は、バイキングスタイルのレストランを運営していて、月に1回程度お話しをしています。

 先日お話ししたのは、お客様にアンケートをお願いして、回答者に抽選で割引券を渡しているとのことだったのですが、生年月日や住所まで書いてもらっているものの、特に集計をしていないということだったんです。それならばお客様の年代や住所を分析しましょうと提案しました。そうすれば、仮に広告をポスティングするのであれば、重点エリアが見えますし、年齢から仮説をたてて、その世代にマッチした料理を提供するといったこともできます。また量り売りの持ち帰りサービスがあるというので、単身赴任の方が多い企業に福利厚生の一環で提供するという提案はどうか、といった話をさせて頂いています。

 他にでは、木製品の製造を行う平和木工さんを担当し、財務面や販路拡大のほか、新たな家具の開発のお手伝いもさせていただいています。島根県は森林面積が8割くらいあるので、有効活用しようという県の施策もあり、県のバックアップも受けつつ、販路拡大の取組として展示会へ積極的に出展しています。

 

(写真)総務部 石見事務所主任主事/中小企業診断士 福冨 佑 氏

中小企業診断士を取得して

 財団に入って8年目になりますが、もともと大学卒業後3年ほど、民間の人材関連企業で仕事をしていました。全国展開の企業でしたが、赴任地が地元島根だったので、県内の会社や工場などに伺っていました。

 財団の仕事は地域の産業振興ということで、転職当初は切り口が人材かどうかの違いで、現場に行って話を聞いて、行動するという意味では以前の仕事と変わらないって考えていましたね。職員になって、求められるものを知り、自分ができることをもっと増やしていきたいと考えたときに、中小企業支援の全体像をしっかりと体系的に学びたいって思って、診断士を取得しようと考えました。

 実は数年くらい前から独学で勉強していたのですが、合格には結びついていなかったんです。そんなときにTACの研修が導入されて、業務の一環として学習の場が提供されるようになったんです。年齢的にやはり自分が合格して、年下のメンバーの刺激にならないとなというところもあったので、本気で勉強時間を確保して取り組みました。

 実際に、診断士の資格を取得したわけですが、先日、事務所にいらっしゃった方に名刺をお渡ししたら、「診断士お持ちなんですね」って言われました。そう言う意味では、最初から期待値というハードルが上がったのだなと感じます。

 他の資格であれば、法律的にできることが決まっていたりしますが、診断士はそういうことではなくて、個人のスキルや経験に依存するところがあると思うのです。そう言った意味では、自分の中でもさらに研鑚していかないといけないなって感じています。

 たとえば、経営的に厳しい企業も少なくない中で、どう立て直していくか考えるときに、民間団体が認定する事業再生士や事業再生士補という資格をとっておくのも良いかなと。また、やはり事業承継は大きなテーマになりますので、そういった知識についても身につけていきたいと思っています。

Interview 3
こだわりのものづくりとそれを支えるパートナー

[しまね産業振興財団 × 平和木工]

 

 主な事業内容は木製品、具体的には家具や建具の製造になります。会社は昭和21年の登記ですが、その前からずっとあったようです。何代か前の社長が霊柩運送事業を含めた葬儀部門を立ち上げて、現在では津和野町で約8割のシェアがあります。また工場移転に伴って建てた賃貸マンションの運営など、様々なことを行っています。

 木製品は県産材にこだわって作っています。例えば「うもれぎ」という製品は、県の清流日本一になった高津川流域の桧材を使っています。薬剤を一切使用しない無公害木材で、窒素加圧加熱処理した上で建具にすることで、着色なしで独特の風合いを出すとともに、防腐防虫、耐水断熱効果に優れた製品に仕上げました。

 ほかにもオリジナルの行灯などの製品を作っていて、建具、家具とも多くの旅館や、古民家の宿泊施設等でご利用いただいています。

 

(写真)平和木工 代表取締役 洗川 武史 氏

 

■平和木工の製品の一部
(画像左:うもれぎ | Umoregi・画像右:心の灯 | Herz Licht

 

 財団さんとのお付き合いはずいぶんと経ちますね。木工関係はどこも財務面が厳しいと思いますが、うちは10何年か前が一番苦しい時期で。その頃から財務関係の確認や金融機関との調整、新商品開発の指導や特許などの専門家との段取りなどをお願いしています。うちにとって1番良いパートナーですね。

 担当の福冨さんも目一杯やってくれて頼もしい限りです。ですから、中小企業大学校に行かれて不在の期間は大変でした。福冨さんは、既に診断士のレベルにあったから資格がもらえたのだと思います。様々な情報を集め、課題を分析し、最適な改善策を提供するのが診断士の役目ですよね。それができていたから。

 だからこそ、その(診断士という)ラベルが付いたのだと思います。

常に新しいことにチャレンジする姿勢

 今、新製品の開発に取り組んでいます。窒素加圧加熱処理した木材をつかった家具です。既に建具については商品化していますが、家具は建具と比べて、力がかかる場所と大きさが違うので、全然違った設計が必要になります。試行錯誤を続けているところです。

 企業を活かすためには、成果を出す必要があります。そのためには、動き続けるしかありません。止まったら、もう死ぬ方向へむかっているんですから。昔は良かったって言っていると、それはもう後ろ向きになっている。昔は良かったって言っているのは、今、なにも努力してない状態ってことですからね。昔は良かった、というのなら、良かったときに何をしていたのかと。

 忙しい時こそ動いておかないと、仕事がなくなって暇になる。逆に暇になったり、時間があるからってできるもんではないですからね。むしろ忙しい時にやっておけば、暇になってしまいそうなときに、それがようやく開花するんです。だから忙しい時になるべく動くようにしています。暇なときは誰でも動けるんですよ。

 私は島根県の木でつくったものが、都会で評価されて価値が上がってくれるといいなぁと思って一所懸命頑張っています。

 島根県には、まだ手付かずの広葉樹がたくさんあります。広葉樹の原木は、各地でどんどん伐採されて、なくなってしまっていますから、これほど残っているのは私の知る限りでは島根くらいなんです。島根県の森林資源、木材を財産とするためにも、頑張っていきたいと思っています。

 

(写真左)平和木工 代表取締役 洗川 武史 氏
(写真右)しまね産業振興財団 福冨 佑 氏

TAC担当営業からのメッセージ
お客様のお客様を見据えたサポートを

[しまね産業振興財団 × 平和木工 × TAC株式会社]

 

TAC株式会社 法人営業1部 第4G責任者
中島 理士

 

 「三方よし」というのは近江商人の言葉で、売り手と買い手だけがよければ良いのではなく、「世間よし」といって、世の中に対しても貢献することで、企業は経済活動が許されるという考えです。

 TACにもプロフェッションの養成を通じて、社会に貢献していくという理念があります。私どもが、提供する今回の研修内容が、単に資格試験に合格するというだけでなく、資格試験を通じて得た知識がみなさまの仕事にいかされ、それがまた誰かの幸せにつながるなら、これ以上の喜びはありません。

 その為にも、限られた予算や時間の中で最大限の効果が出るように、講師や教材を工夫して最適なご提案をするのが我々の使命だと思います。

 

[参考]TAC法人研修のカスタマイズ力
TAC法人研修はお客様のニーズに合わせてプログラムを個々に設計し、最適な研修をご提案しています。型どおりの研修プログラムに落とし込むのではなく、柔軟に変更し、カスタマイズして作り上げるプログラムはまさにオーダーメイド。また必要に応じて、テキストや動画コンテンツなどもゼロから開発する企画力も自慢です。さらには、TACのスケールメリットによるプライシングも魅力の一つといえます。

今回の研修プログラムの概要と提案ポイント(しまね産業振興財団様向け2019年度カリキュラム)

カリキュラム図

 

TACでは、集合型の研修以外にも自己啓発のための通信教育のご提供も行っております。

それぞれ概要につきましては、下記リンクをご覧ください。

 

[参考]TAC法人研修の概要

 集合研修[リンク]:中小企業診断士 試験対策(1次・2次試験対策)のご案内 

 通信教育[リンク]:中小企業診断士コース(1次試験対策)のご案内

 

TACの法人研修にご興味をお持ちになられましたら、どうぞお気軽にお問合せください。

取材対象団体・企業Profile

公益財団法人 しまね産業振興財団

公式サイト:https://www.joho-shimane.or.jp/

[ 松江本部 ]〒690-0816 島根県松江市北陵町1番地 テクノアークしまね内
       TEL:0852-60-5110 FAX:0852-60-5105
[石見事務所]〒697-0034 島根県浜田市相生町1391番地8 シティパルク浜田2階
          TEL:0855-24-9301 FAX:0855-22-0577

有限会社 平和木工

公式サイト:http://www.heiwa-mokkou.jp/

[ 本 社 ] 〒699-5207 島根県鹿足郡津和野町枕瀬372-3
       TEL:0856-74-0135 FAX:856-74-0598
[益田工場] 〒698-2144 島根県益田市虫追町イ455-1
       TEL:856-23-2250 FAX:0856-23-2290