Interview

お取引先様インタビュー

[人事・教育担当者にうかがう、人材育成への取り組み]

お取引先様インタビュー

「鉄道を起点としたサービス提供」から「ヒトを起点とした価値・サービスの創造」へ。
変革を支える財務部門の取り組み

東日本旅客鉄道株式会社
小笠原 惇 氏
株式会社JR東日本マネジメントサービス
安永 さらら 氏

Interview

東日本旅客鉄道株式会社 小笠原 惇 氏 / 安永 さらら 氏

東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は発足以降、「鉄道の再生・復権」に取り組んできたが、大きな変革のときを迎えている。人口減少や自動運転技術の実用化など経営環境の急激な変化に対応するため、グループ経営ビジョン「変革2027」を策定した。新たな成長戦略への挑戦である。 「鉄道を起点としたサービスの提供」から「ヒトを起点とした価値・サービスの創造」への転換を目指して鉄道以外の事業領域を拡大する中、大きな役割を担っているのが財務部門だ。 会社を支える財務部門のメンバーをどのように育成しているのか、JR東日本の小笠原氏と、JR東日本グループの財務・経理業務に特化したシェアードサービス会社である株式会社JR東日本マネジメントサービス(以下、JEMS)の安永氏にお話を伺った。

変革を導く財務部門 に求められるもの

―御社が注力しているお取り組みをお聞かせください。
小笠原惇氏(以下敬称略):JR東日本は、グループ経営ビジョン変革2027において、「ヒト(すべての人)の生活における『豊かさ』を起点とした社会への新たな価値の提供」を目指しております。
それを実現するために、モビリティに関する事業と、生活ソリューションにつながる事業を2つの事業を軸として、相互に連携・融合を図っています。具体的に申しますと、モビリティに関する事業では当日申込可能な列車荷物輸送サービス「はこびゅん」や「JREポイント」が連携・融合を行なっております。
生活ソリューションにつながる事業では、社会的課題の解決するための地域の街づくりや多様なサービスの提供を行っています。

この2つの軸の比率を5:5にすべく、事業領域の拡大や経営資源の再分配、そのために必要な組織再編や人材育成による意識改革に取り組んでいる状況であります。

―そうした取り組みの中で財務部門は、どのような役割を担っているのでしょうか。
小笠原:急激な環境変化において変革を行なっている当社グループにおいて財務部門は大変重宝されています。財務の視点で変革の方向性を導いて、実行面ではモノ・カネで下支えしています。さらに、正確で効率的な決算事務によって、内部統制であったり、会社の信頼を守ったり、ということが求められています。

―財務部門を担う人材には、何が必要であるとお考えですか。
小笠原:3点あります。
1つめは、高度な財務知識とスキルが必要です。
2つめは、環境変化を捉える広い視野をもつことです。
3つめは、社内外の調整を支えるコミュニケーション力です。

JR東日本グループが行う教育の特徴

―教育を行う上で大切にしていることはなんですか。
小笠原:弊社では、最初から財務のメンバーとして採用することはありません。まずは現場の社員として鉄道事業に携わり、その後で財務部門に異動してくるという形が多いです。そうした社員を一人前の財務メンバーとして育てることを意識しています。
さらに、近年のシステム化、集中化によって日常業務では単純作業を行うことはなくなりました。そこで、先ほど申し上げたように他部門の社員の相談にのれるようなコミュニケーション力を伸ばす必要があります。
財務部門は会社を変革していくためにもチャンスとなる部署だと考えております。

安永さらら氏(以下敬称略):JEMSでは、環境変化に対応できる人材を育てたいと思っています。
また、弊社がJR東日本のグループ会社ということもあってグループ会社への価値の提供ということを意識して取り組んでいます。研修を充実させることによって人材を育成して、会社だけではなく社会にも貢献していきたいというところが、ポイントとして挙がります。
研修を企画する際に大切にしている部分としては、「次世代」を念頭に入れております。
次世代を担うための制度改正や最新情報をキャッチアップできる研修を目指しています。

人材が育つ研修の在り方とは

―財務系の研修をTACで行うことにした理由を教えてください。
小笠原:研修をカスタマイズさせてもらっていることが、一番大きいです。
弊社には、鉄道事業もありますので特殊なところがあります。また、先ほども申し上げたとおりコミュニケーションも大切にしています。そのため、普通の財務研修や簿記の研修とは違うものを求めています。TACでは、そういったところに対応してくださるのがありがたいです。

安永:弊社では、等級によって求めるものが変わってきます。それを事前打ち合わせや振り返りの時間で汲み取ってくださり、フォローを手厚くしていただいているので助かっています。

―コロナ禍をきっかけに、対面型研修からオンラインに切り替えました。コロナ禍が明けましたが、対面型に戻していくというご希望はありますか。
小笠原:オンラインの良いところもありますし、対面でコミュニケーションをとることが重要な研修もあると思います。すべてをオンライン、または対面型に統一する必要はなく、両方を上手く組み合わせたハイブリッドにしていきたいと考えております。

安永 :コロナ禍前の研修をご存知の方からは、対面型に戻してほしいという声もあります。一方で、遠方の方は自宅や会社で研修を受けられるというオンラインのメリットを感じていらっしゃいます。
オンラインでも講師がチャット機能を上手く使っていて、一体感が生まれるような雰囲気が作られています。受講生からは、対面と同じような緊張感があるという話も聞いています。私自身は対面型もオンラインも受講したことがあるのですが、オンラインでここまで研修効果が上がるのはすごいと感じました。

未来につなげる研修を考える

―今後、研修で行いたいことを教えてください。
小笠原:新たな事業領域に必要となる財務の知識を得るための研修は、引き続き実施する予定です。
また、事業ポートフォリオも見直しているので、そこで必要となるリスキリングのための研修も検討しています。

安永:DXなどIT系にも力を入れています。そういった専門性を高めるための研修の導入も考えています。

―JR東日本グループの社員は、学んだことを実践するスピードが早いことに驚いています。
小笠原:社員数が多く、鉄道のフィールドで長く事業を行っているので新規事業を考えるためのいろいろなピースはあると思っています。
最初に、モビリティに関する事業と生活ソリューションにつながる事業の比率を5:5にできるよう取り組んでいるとお話ししましたが、1つ1つのピースをつなぎ合わせて新規事業を立ち上げられるリーダーを育てられれば、5:5の割合も達成できるのではないかと感じています。

続きを見る
小笠原 惇(おがさわら まこと)

Profile

小笠原 惇(おがさわら まこと)氏
2004年に入社し、京浜東北線 蕨駅にて駅業務を担当後、埼京線・川越線にて車掌業務や武蔵野線の吉川駅にて分任業務を担当。その後、大宮支社の営業部にて部内の経理・契約業務を担当した後、同支社経理課に配属。現在は、本社の財務・投資計画部門にて財務系社員の人材教育を担当。

安永 さらら(やすなが さらら)

Profile

安永 さらら(やすなが さらら)氏
入社直後は、JR東日本リネンの経理部門に約2年半常駐。その後、ヒューマンリソース部に配属され、研修などを担当。